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主に映画の感想文を書いています

「アス(2019)」ネタバレ雑感

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いきなり怖くてすんません

ゲット・アウト(2017)」のジョーダン・ピール監督最新作。「ゲット・アウト」がとても面白かったので、今回初めてホラー映画を映画館で観てきました。なお前日の時点で空席率100%、当日はどうにか9人という心細い環境でした。最後列に4人もいたよ。みんな心細かったのね。

以下、ネタバレあります。

あらすじ

子供の頃、神隠しのような体験をしたことがトラウマになっていた主人公アデレードルピタ・ニョンゴ。時は経ち母親になった彼女は、夏休みの家族旅行でトラウマの地を訪れる。事情を知らない夫や子供達をよそに、ひとり悪寒に震えるアデレード。もう限界、と思ったその夜、窓の外に「自分たちと同じ姿をした家族」が立っていると気付く。

ネタバレ雑感

監督の前作「ゲット・アウト」をホラーだと知らずに観て「ここから出してくれえええ」状態になったわたし。思えばあのへんからホラーに抵抗がなくなったような気もします。

ゲット・アウト」は本当に面白い映画で、こういうホラーもあるんだと感動しました。とにかく記憶力が悪く、何がどう面白かったのかはあんまり覚えてないんですが(笑) ただ、それでも「騙されたと思って観てみて! 面白いから!」と今でも人におすすめしたくなるような映画だったのは確かです。

それで今回はというと、「ゲット・アウト」を期待して観るとちょっと違うな、って感じ。観る層のことを考慮しない喩えをすると、ゲット・アウト」が「君の名は。で、「アス」が「天気の子」って感じ。なんとなくお分りいただけるでしょうか。

やっぱその、トータルで見たときに前作「ゲット・アウト」はすごくバランスがいい作品だったんだなと思える、比較対象としての本作「アス」ですね。気の進まない言い方をすると前作よりもだいぶ散漫かなという印象を受けました。

最初のほうは嫌〜な感じに(期待通りに)怖くて、主人公と観客の漠然とした恐怖心がピークに達する「窓の外に誰かいる」のあたりはホラー映画としてのエンタテインメント性に溢れた、ジェットコースターで腰が浮き始める瞬間みたいな最高のシーンだと思います。手を繋いで仁王立ちする「家族」のシルエットは、「シャイニング」の双子に匹敵する名シーンです。超怖い。

ただまあどうしても、そこが実際にピークとなってしまって、以降は観てる側としても消化試合感が否めないというか。いよいよ地下世界へ降りて行っても、もはやあまり興味が湧かずに眠くなっちゃったりして。最後のオチも目をこすりながら「あ…そうだったんですね…」ぐらいのリアクションに留まってしまう申し訳なさ。

途中からすっかりギャグタッチのゾンビ映画と化すのもそれはそれで楽しいんですけど(スマートスピーカーのくだりは傑作)、そこからまたウサギだの何だのにシフトチェンジされると頭のモード切り替えができなくなってたりして。「天気の子」の警察絡みエピソード的なことです、はい。

そんなわけで「ホーム・アローン作戦」あたりからバランスが崩れちゃってるんじゃないかな〜と個人的には感じた本作でございました。…いや、わかんないですよ? 1986年のチャリティー企画「ハンズ・アクロス・アメリカ」をこの映画が揶揄しているのであれば、「“こうなる”はずだったのに、およそ及ばない結果になってしまい、後味悪く終わった」という、映画全体を使っての風刺という深読みもできるかもしれませんけど。

そんな考察のしがいはかなりある作品となってまして、既に多く出ている考察記事を読み漁ると「あながち散漫じゃないのかも」と思い直せるくらい、おもしろいです。ただやはり、あまりにもテーマありきの映画になってしまっている気がすると、上っ面の映画体験を重視するわたしとしては前作に比べて若干の物足りなさを感じたのでした。

(2019年103本目/劇場鑑賞)