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主に映画の感想文を書いています

好きを増やして日々を楽しく 〜TBSラジオ「アフター6ジャンクション(アトロク)」のススメ〜

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このブログ内に度々登場する〈アトロクことTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で〜〉もしくは〈ライムスター宇多丸さんが〜〉という言い回し。散々お世話になっておきながらこの『アトロク』なるラジオ番組についてちゃんと紹介したことがなかったので、いっちょ書いてみることにしました。

コロナ禍で「楽しみ」が減ってしまった方も多いであろう昨今。『アトロク』リスナーになれば楽しみは減るどころか、増えて溜まって収集つかないくらいになるかもしれませんよというのが本稿を書く理由でございます。

目次

「アトロク」基本情報

アトロクとはなんぞや

TBSラジオの人気番組『アフター6ジャンクション(あふたーしっくすじゃんくしょん)』のこと。六時のアフター(後)ってことで『アトロク』という略称が公式に付いています。

放送は毎週月曜日から金曜日の18:00〜21:00。つまり平日はいつでも毎日3時間の生放送をやっています。TBS以外のネット局では途中からとなってしまいますが、Spotifyなどを使えば大半のコーナーは無料のポッドキャストとして聴くことが可能です。


誰が出ているの?

メインパーソナリティは、ヒップホップグループRHYMESTER(ライムスター)のラッパーでもある宇多丸さん。実質の前身番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル(通称タマフル)』からの続投というかたちで、基本的に全曜日の全時間帯出演です。

加えて、曜日パートナーとして各曜日固定のTBSアナウンサーがレギュラー出演しています(宇垣美里さんのみ、TBS退社後もフリーで継続)。

  • 月曜日:熊崎風斗
  • 火曜日:宇垣美里
  • 水曜日:日比麻音子
  • 木曜日:宇内梨沙
  • 金曜日:山本匠晃

曜日パートナー陣の「個性」も大きな魅力なのですが、そこはまた後ほど。

どんな内容なの?

番組公式サイトの紹介文にはこんなふうにあります(一部抜粋)。

ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラム、最高峰。
映画・音楽・本・ゲームなどの分析や、独自視点による文化研究など、日常の中にある「おもしろ」を掘り起こすカルチャー・キュレーションで現代社会に広がる様々な趣味嗜好の多様性を受け止める。

ざっくり言えば「3時間ずっと趣味の話」という贅沢な番組です。

なんで聴くようになったの?

宇多丸さんの映画評コーナーだけは以前から読んだり聴いたり(公式だったり非公式だったり)していましたが、2年ぐらい前のあるとき「この番組、毎日やってるんだ」「深夜じゃないんだ」「ちょうど生で聴けるじゃん」と気づいたのをきっかけに聴き始めました。

もともと中高の頃に熱烈なラジオっ子だったこともあり(その頃はTOKYO FMラジアンリミテッド」リスナー)、一瞬で熱をぶり返した次第です。

「アトロク」の楽しさ

「好き」が見つかりすぎる

上の紹介文で引用しなかった部分には「あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。」とあります。これは本当にその通り。特に後半、「好き」が見つかりすぎて大変なくらいです。

思えば昨年4月以降、大林宣彦監督の世界にのめり込んでしまったのはアトロクきっかけでした。韓国映画や韓国ドラマにはまってしまったのもアトロクからでした。

▲大林監督を意識したきっかけの特集。奇しくもこの週に監督は亡くなられたのですが、同時にわたしの「大林ファン歴」もこの週から始まりました。

習慣的に本を読むようになったのもアトロクが日々絶え間なく様々な本を紹介してくれているおかげ。アトロクがなかったら出会わなかったものばかりです。

興味のないジャンルでもおもしろい

各分野の有識者を招いてお話を伺う、というのがアトロクの基本スタイル。「聞けば世界の見え方がちょっと変わるといいな!」を標語に、おすすめ映画やおすすめ本といった王道ジャンルから「スイッチ・オンで“念仏”が聞ける!ブッダマシーン特集!」であるとか「1年の延期が決まった今だからこそ!いったん落ち着いて『古代オリンピック』についてちゃんと学ぼう!特集」といったニッチなジャンルまで多岐にわたり扱われます(なんとなく印象に強かった特集を挙げてみました)。

宇多丸さんは得意分野でない限り「その分野に明るくない人」として聞き手に回るので、ただ耳を傾けているだけで「知らない世界」がどんどん見えてきてとにかくおもしろい! 知的好奇心を日々刺激されたい人にとっては最高の番組です。

曜日パートナーの豊かな個性

「アナウンサー」ってなんとなく無個性なイメージを持たれがちだと思うんですけども、アトロクの曜日パートナー陣はみんな前面に個性を出しているのが特徴的です。それによって曜日ごとの「ジャンル」の棲み分け、みたいなものもできており、2021年初めの時点では印象としてこんな感じになっています。

  • 月曜日:熊崎風斗
    (スポーツ/韓国ドラマ・映画/グラビア)
  • 火曜日:宇垣美里
    (活字/漫画/アニメ/映画/観劇/美容)
  • 水曜日:日比麻音子
    (演劇/活字/映画/お酒/シャラメ)
  • 木曜日:宇内梨沙
    (ゲーム/引きこもり/ウーバーイーツ)
  • 金曜日:山本匠晃
    (映画/偏愛/エアリズム)

すごい偏ってますけど(笑) やはりアトロクに選抜されただけあってオタク気質の人ばかりでして、それが各々アトロクきっかけでさらに「開花」しまくっている、と。そういう感じです。省きましたが音楽はみんな好きなはずです(意外とあんまり印象がない)。

ついでに5人の勝手な紹介文も書いておきましょう。

  • 月曜日:熊崎風斗
    • スポーツ実況(本業)とグラビア評論(?)に定評あり。映画等にハマるタイプではなかったがコロナ禍でいきなり韓国ドラマにハマり、あれよあれよと宇多丸さんも追いつけないほどの韓国オタクになってしまった。韓国語検定4級に挑戦中。
  • 火曜日:宇垣美里
    • マッドマックスとコスメを愛するワンダーウーマン。宇垣総裁と呼ばれている。「女性の憧れる女性像」の頂点みたいな人であり、それでいてCLAMP先生を崇める超絶オタクでもある。フリー転向後は執筆仕事も多く、今最も「ネクス宇多丸」なパートナー。
  • 水曜日:日比麻音子
    • 国民の孫。現在は朝のニュース番組『あさチャン!』で夏目アナと並んで毎日出演中。宇多丸さんから「お忙しいでしょう」といつも心配されているが、本人は「相変わらずして〜〜」とほんわかへらへら。お酒とティモシー・シャラメの前髪をこよなく愛する。
  • 木曜日:宇内梨沙
    • 女子アナの概念を覆す引きこもりゲーマー。夜型の宇多丸さんが深夜にプレステを起動すると、たいてい宇内アナがオンラインだという。ゲームに関する知識と本気度は生半可ではない。番組内でのゲーマーアピールが功を奏し、昨年ついにTBS公認のゲーム実況YouTuberとしてデビュー。
  • 金曜日:山本匠晃
    • 常にエアリズム一枚で番組に臨む。「ムービーウォッチメン」曜日担当ゆえ課題映画の全作品(年間約50本)を律儀にしっかり鑑賞しているが、いつからか映画における「フード描写」へ異常なほどの偏愛と熱弁を見せ始め、その話術と熱量には宇多丸さんも舌を巻くほどになった。映画秘宝からのスカウトも秒読み。

大好きやな自分。ええ、つまり番組丸ごと好きになってしまうので、興味のない特集だって聴いちゃうし、結果的に興味関心の幅がどんどん広がっていってしまうという、そういう危険な番組であることが、本稿の右肩上がりな熱量からもお察しいただけるかと思います。

おすすめの聴き方

いくら好きでもさすがに平日毎日3時間ずっと聴くわけにはなかなかいかないので、つまみ聴きがおすすめです。ラジオの魅力は「見なくていい」ことですから、移動中、家事をしながら、お風呂の中で、布団の中で、などなど結構いろんなタイミングで聴くことができます。

まず先に、番組構成をざっと紹介しておきましょう。

  • 18:00〜18:30
    • オープニングトーク。タイトルコールとテーマソングを挟んで20分間ほど、宇多丸さんと曜日パートナーのフリートークが展開される。話の内容は主に各々の守備ジャンルに沿った近状報告(毎回一週間ぶりの再会となるため)と、その日のメニュー紹介(タイムテーブル)。
  • 18:30〜19:00
    • 特集コーナーその1。ゲストを招いて様々なカルチャー情報を紹介。金曜日に限り、前身番組から継続の看板コーナー「ムービーウォッチメン」がこの枠に入る。
  • 19:00〜19:30
    • ライブコーナー。毎日様々なミュージシャンがスタジオライブを披露。コロナ禍では別スタジオからの中継や事前収録音源のオンエア等で柔軟に対応している。ポッドキャストでは配信されない。
  • 19:30〜20:00
    • ラジオショッピングのコーナー、投稿コーナーなど。
  • 20:00〜21:00
    • 特集コーナーその2。約50分の長尺で、ゲストを招いた濃厚な特集が毎日企画されている。金曜日は宇多丸さんが他番組に出演する関係で、曜日パートナーとゲストによる「一週間の振り返り」がおこなわれる。

わたしの聴き方はこうです。

オープニング〜18時台はなるべく生で聴く

なにせ一番好きなのがオープニングトークなので、そこは欠かさず聴きます。ちょうど仕事から帰宅する時間となるため、Bluetoothスピーカーで流しながらシャワーを浴びたり夕飯の支度をしたり食べたりしています。

気になった特集をあとから聴く

メニュー紹介で「お!」と思った特集を優先して、時間のあるときにradikoのタイムフリーやSpotifyで個別に聴きます。リアルタイムに聴くことはほぼありません(20時台の特集をリアルタイムで聴いてしまうと自分の映画鑑賞などができなくなってしまうため)。

Spotifyの詳細

課金なしで聴けます。コーナーごとに分かれているので後追いにとても便利! ほとんどこれで聴いています。ただしライブコーナーや音楽系の企画などは配信されないor音楽がカットされるため要注意です。 宇多丸さんや番組スタッフが居残り収録した『別冊』も別途配信されています。こちらは純粋なポッドキャストコンテンツで、局外になるため宇垣さん以外のパートナーは規則として出演しません。

「ムービーウォッチメン」について

劇場公開中の新作映画を宇多丸さんが評するコーナー。前身番組時代の『ザ・シネマハスラー』から長年続く看板企画で、公式書き起こしや非公式アップロード等で大量にアーカイブされているため、これだけは知っているという方も多いでしょう。わたしも入り口はここでした。

「ムービーウォッチメン」の大きな特徴は、評する映画をガチャで決めることと、宇多丸さんが自腹で鑑賞すること。よって、ときには思いっきり辛口の評になることもあります。特に『シネマハスラー』時代はいわゆる酷評の多いイメージがありますね。しかし近年はよほどのことでない限り、徹底的に調べた上でのかなりフェアな批評をしているように思います。ここでは宇多丸さんの映画評の(もしかしたら知られざる)真摯っぷりを僭越ながら少しご紹介いたしましょう。

  • 毎週「ムービーウォッチメン」終了後にガチャを回して次週の課題映画を決める。この際、どうしても回避したければポケットマネーの課金(1万円)で回し直せる。課金したお金は貯めておいて、災害時などに寄付される。

  • 課題映画決定後、少なくとも2回は劇場で観ている。字幕と吹き替え、IMAX、2Dと3Dなど、バージョン違いがある場合はなるべく全部観る。

  • 必要に応じて輸入BD/DVDを取り寄せて細かく観たり、大好きなメイキングを観たりもしている。

  • パンフレットは必ず購入。そのほか関連書籍、特に原作がある場合は可能な限り読んでいる。例えば履修度0%の状態で『鬼滅の刃 無限列車編』が当たった際は、一週間で劇場鑑賞2回、アニメシリーズ完走、原作読破(最終巻以外)をしている。

  • 映画評冒頭ではリスナーメールの賛否率、賛否それぞれの代表的なメールを紹介。宇多丸さん自身の鑑賞回数、鑑賞劇場、鑑賞時の客入り・客層などもデータとして必ず言う。

  • 放送後、公式書き起こし(リスナー出身の書き起こし職人みやーんZZさんによる)の掲載に伴い、訂正箇所や補足等若干の手直しを行う。宇多丸さん的には、後追いの場合は放送音声ではなく書き起こしを読んでほしいとのこと。

それが仕事だとはいえ、よくここまで時間と労力を割けるなと。それも好きな作品ばかりではないですからね。酷評するような「ぶっちゃけ嫌い」な作品でもちゃんと関連資料をチェックして2回以上は観て、と真正面から向き合う姿勢。わたしはとても尊敬しています。

ちなみに今のところのわたしの自慢は、大本命『海辺の映画館─キネマの玉手箱』の回で少しメールを読んでもらえたことです。ラジオネームは読まれなかったのですが書き起こしを見たら付け足してあったのでそれはそれで嬉しいという。もうなんでも嬉しいファン心。

なお、毎年年末には番組を丸々使って全課題作品の中からトップ10を決める企画「ライムスター宇多丸のシネマランキング」が恒例。にも関わらず、この日はひたすら「映画に順位などつけるべきではない」という裏の標語がサブリミナルのごとく繰り返されます。

おわりに

だいぶ長くなってしまいましたが、本稿でお伝えしたいことは冒頭に書いた通りです。コロナ禍で「楽しみ」が減ってしまったなあという方も、『アトロク』を聴いてみたら日々が少し楽しくなるかもしれません。引きこもり推奨派ラジオ番組『アフター6ジャンクション』、ぜひこの機会にお試しください。毎週月曜〜金曜の18時から3時間生放送! FromTBS!

番組テーマソング、RHYMESTER『After 6』。MVに出ているのは宇多丸さん含むRHYMESTERの3人と、曜日パートナー5人です。聴き始めは顔と名前が一致しないかもしれませんが(公式Instagramにはスタジオの写真が毎日アップされています)、番組に馴染んだ目で見るともはやアベンジャーズ

うれしはずかし後日談

本稿を書いた一週間後くらいに、Spotifyの『別冊アフター6ジャンクション』を聴いていましたら、こ、これは? わたしの記事のことでは?? という言及が、おそらく橋Pこと橋本吉史プロデューサーから出てきまして。自分のために該当部分を書き起こししておきます。

最近ね、そういう投稿をしてる方がいらっしゃって、ブログとかで。『アフター6ジャンクション』のここが好きです、っていう。Twitterリツイートしたんですけど、趣味を徹底的に紹介してくれるのはこのステイホームの時代にすごくいいんですよ、ってことで薦めてもらってるブログがある。そういうことはよく言われますよね。

じつは記事をあげた際、アトロク公式Twitterリツイートされておりまして、それだけでもうれしはずかしだったのですけども、おおう、企画会議にも微力ながら参加?できたぞ……というところでファン心理としては大変ふわふわしてしまいました。ありがとうございました。

この回の58分あたりから聴けます(やはり自分用メモ)。わたしの件はさておきとして、公開企画会議ポッドキャストめちゃくちゃ面白かったので必聴です。