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主に映画の感想文を書いています

「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020)」雑感

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楽しみにしてたハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』観てきました。出演はマーゴット・ロビーユアン・マクレガーほか。こ、これは最高の映画じゃないか…。

概要

DCエクステンデッド・ユニバース『スーサイド・スクワッド(2016)』のスピンオフという位置付けで、ジョーカーの彼女ことハーレイ・クインマーゴット・ロビーにスポットを当てた作品。

ただし本作において彼女はジョーカーと破局しており、後ろ盾をなくしたことにより命を狙われまくっている。特に裏社会のボス、ブラックマスクことシオニスユアン・マクレガーから逃げ切れるかどうかが見どころである。

雑感

こういうのが観たかったんだよ!!と静かにガッツポーズしました。そう、『スーサイド・スクワッド』で見たかったのはこういうやつなのよ!!と。 本作からプロデューサーとしても参加しているマーゴット・ロビーの手腕で「華麗なる覚醒」が見事に実現。素晴らしいです。最高です。完璧です。

まずカートゥーンアニメ調の「おさらい」で、『スーサイド・スクワッド』からの設定を楽しくフォロー。そして最愛の元カレ=ジョーカーとの想い出を早速ドドーンと破壊。アバンタイトルだけで映画代金ペイできる、完璧なオープニング。これが健全な失恋映画ですよとアリ・アスター監督に言いたい。

「好きなとこから話すね」とハーレイのナビゲートで進んでいく本編はその言葉のとおり意外と複雑で、何度も一時停止と巻き戻しを繰り返しながら全貌を見せていく、コミカルだけど多分よくできた構成。登場人物の紹介もここでしっかり済ませていく。スタート地点までに40分くらいかけていた『スーサイド〜』とは雲泥の差!

覚醒のハーレイ
今回はとにかく全てが気持ちよく振り切っていて、なかでもアクション! わたしはそんなにアクションを重視するほうではないと思うんですが、ひたすら気持ちいい〜〜〜!!!となっていたのできっといいアクションだったのでしょう。『ジョン・ウィック』シリーズを彷彿とさせるキレとバリエーションが堪りません。

バリエーションのひとつ、予告編にも使われていた変わり弾ショットガンでのファビュラスな一方的銃撃戦。容赦ないのに血生臭くなくて爽快な、あれはナイスアイデア! かと思えばバットで脚を逆向きにへし折ってみたりといった肉弾戦寄りのアクションも楽しい! スカッとする〜〜!!

冒頭での設定をさりげなく活かした終盤のローラースケート戦も新鮮。シオニスの車に張り付きながらのアクションは、先日『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2(1989)』を観たばかりの目にはマーティのオマージュに見えました。

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バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』より

バイクから車へと身体を張って乗り移っていく一連のアクションを見ていて、これはすごい映画だなと。女性がメインの映画でここまで本格的なアクションを見せているものって、詳しくないので定かじゃないですけど、わたしの知る限りでは初めてだと思いました。

チームじゃない女たち
何気に意外だったのが、本作に出てくる女性キャラたちは決して「チーム」ではないということ。いっときやむなく利害関係を一致させることはあれど、基本的には全員敵同士。このへんも結構新しいんじゃないですかね。ラストシーンの晴れやかなハーレイ・バッカじゃないの・クインが最高でしたね。こちらも薄っぺらい“““絆”””が生まれやがってた『スーサイド〜』とは雲泥の…、すみませんね前作ヘイトが強くて!

ハーレイ以外の女性キャラで特に好きなのはブラックキャナリーことダイナ。ジャーニー・スモレット=ベルさんのタイトなゴールドパンツが超絶かっちょいい。超音波設定がちゃんと序盤に組み込まれてるのも気が利いています(とはいえ、終盤のアレには笑った)。

ハントレスと呼ばれたいクロスボウ・キラーさんも三枚目な二枚目で好き。ゴッドファーザー調の音楽が流れるシチリアの生い立ちシーンも好き。タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス(2007)』でイケイケなチアガールねーちゃんを演じてたメアリー・エリザベス・ウィンステッドさんだったのは全く気付かず! 女たちがクソ男をボッコボコにするお話というところでは『デス・プルーフ』、近いものがあります。

※上記記事を読み返すまですっかり忘れてましたが『デス・プルーフ』における彼女の役どころを奇しくも『ワンハリ』のシャロン・テート(演じるのはハーレイと同じくマーゴット・ロビー)と重ねていたもよう(笑)

そんなハーレイ、ブラックキャナリー、ハントレス、加えて女刑事〜バッヂを返してからが本番〜の4人が、文字通り“腹に一物”抱えたマクガフィン・ガールを護りながら一致団結して戦う終盤のバトルシーンにはグッときちゃいました。ヘアピンは本気のしるし。

かっこいい最期なんてやらねーよ
本作で唯一イケてる男性キャラが、ユアン・マクレガー演じるブラックマスクことシオニス。予告を見てサム・ロックウェルと勘違いしてたのでユアンだと知った時は少々がっかりしちゃったのですが(単にサム・ロックウェルが格別好きなだけで他意はございません)、いやあこのユアンめっちゃ良かったですね。イメージとしては『レオン(1994)』のゲイリー・オールドマンですよね。

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『レオン』より

マーゴット・ロビーも他の作品とは全く違う吹っ切れ演技を見せている本作ですが、ユアン・マクレガーもこういう役柄は初めて見たなあと。甘いマスクだからサイコパス役が似合う! そう、ブラックマスクなんていらねえよという(笑) 製作陣もきっとそう思って数分しか着けなかったんでしょうけど。

そんな絶品のヴィラン、シオニス。しかしこりゃ痛快だと思ったのがその最期。ありゃ笑った。確かにね、クソな男にかっこいい死に方なんて与えちゃダメなんですよね。てめェは吹き飛んでろと。てめェの死に際なんざに割く尺はねえよと。あのあっけなさ、最高です。南無。

ユアンといえば、マリリン風の「ダイヤモンド」シーンでユアンが出てくるのは『ムーラン・ルージュ(2001)』へのメタみがあってニヤリとしました。

いま最強の女優、マーゴット・ロビー
というわけで改めて、本作をプロデュースし、自身もあれだけの振り切りとアクションを魅せたマーゴット・ロビー、誇張なしにいま最強の女優と言わざるを得ません! 『ウルヴァリン: X-MEN ZERO(2009)』からデッドプールを覚醒させたライアン・レイノルズの執念を彷彿とさせるものがあります。

しかもマーゴット、そりゃそうなんですけど同時期に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『スキャンダル』も進めてたらしいんですよね。シャロンとケイラとハーレイを内に共生させ、当然マーゴットでもあった彼女。すごすぎでは。

ポランスキー邸に押し入ったマンソンファミリーがハーレイに撲殺されるシナリオ、見たい。

以上、とにもかくにもめちゃくちゃ痛快で面白いのでおすすめです。DCの過去作とか『スーサイド・スクワッド』とかを予習する必要はないです。ぜひ、いきなりどうぞ!(鑑賞後にベーコンチーズバーガーを食べれるよう段取りしておくと吉)

(2020年46本目/劇場鑑賞)