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映画「殺されたミンジュ(2014)」感想|2時間たっぷり耳野郎&マ・ドンソク

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キム・ギドク監督の『殺されたミンジュ』を観ました。本作のポイントはふたつ。まず、ドラマ『愛の不時着』ファンの人なら愛さずにはいられない「耳野郎」ことキム・ヨンミンさんが主演! それから「マブリー」ことマ・ドンソクさんも主演!

もとは「耳野郎」見たさにウォッチリスト入りさせてたんですけど、そろそろ観るかという段になって初めて「マブリーも出てんの?!」と驚いた次第です。お得がすぎる。

あらすじを読むと大抵は「女子高生殺し」の話っぽく書いてあるのですが(タイトルのミンジュとはその女子高生の名前。なお原題は異なり、「一対一」を意味する『일대일』)、実際に描かれるのはその後の「復讐劇」的な物語です。

主な登場人物は「女子高生殺し」の犯人側と、何らかの理由で犯人たちを罰しようとしている正体不明の武装集団。マ・ドンソクは後者のリーダーで、事件の関係者を拉致してきては強烈な拷問で洗いざらい吐かせようとします。

勧善懲悪な展開になるのかと思いきや、仲間から「いくらなんでもやりすぎ」とそのマッドな拷問っぷりを咎められてしまうマ・ドンソク。一方で犯人側のキム・ヨンミンは「一体あいつらは何者だ」「拷問されたあとに自殺した仲間もいる、許せない」と調査を始める(盗聴もするのが見どころ)。

つまり、犯人側がむしろ常識的に描かれ、逆に被害者側なのであろう復讐者たちが異端的に描かれていくという、なかなか変なつくりになっております。

ただ、事件そのものについての詳細だったり「復讐者」たちの関係性や動機についてはほとんど語られないため、人間ドラマとして深く味わえるかといえばやや疑問。どちらかというと復讐者グループのケレン味を楽しむ映画かなと。

端的に、コスプレ集団なんですよこの人たち。軍人、ヤクザ者、国家情報局員etc...様々な権力者になりきっては、各種施設を模した特設スタジオで過激な復讐を遂行する。終わったら楽屋(女優ライト完備)で私服に着替えて、「また明日」と帰っていく。なんやねん感が強い。

さらにこの映画の妙なところが、キム・ヨンミンの「1人8役」(上記リンクにまとめ画像あり)。それも、意味があるというよりはただ予算削減的に8役演じているような印象を受けてしまうのですが、「マ・ドンソク七変化」に対抗する「キム・ヨンミン八変化」と考えればこちらのなんやねん感も愛しくはある。

ではおすすめかと言われると微妙なところで、単純に耳野郎とマブリーを楽しむ映画としてはかなりプッシュできる内容であるものの、キム・ギドク作品の特徴として不快なほどに暴力的なシーンが多く(マ・ドンソクお得意の張り手にすらウッと思ってしまう)、加えて晩年発覚した性的暴行事件のことがどうしても頭をよぎるためお話と割り切って楽しむにはノイズが多い。作品に罪はないと言うけれど、な案件でございました。

主演ふたり以外もキャストとその描き方はなかなか魅力的なんですけどね。『パラサイト 半地下の家族(2019)』のお姉ちゃんとかも端役で出ていたり。っていうかキム・ヨンミンさんを堪能するぶんには、現在公開中の『チャンシルさんには福が多いね(2019)』がおすすめです!

(2021年29本目/U-NEXT)

殺されたミンジュ

殺されたミンジュ

  • 発売日: 2018/01/17
  • メディア: Prime Video
尊いツーショットのある記事をいくつか。