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映画「EXIT(2019)」感想|今年観たエンタメ映画で一番好きかも。だから熱く語ります。

映画「EXIT」メインビジュアル

韓国映画『EXIT イグジット』を観ました。

評判も良く前々から観たいとは思っていた作品ですが、『エクストリーム・ジョブ(2019)』は全然ハマらなかったし『スウィング・キッズ(2018)』も好きじゃなかった、娯楽作寄りの韓国映画はピンとこないの多いからな……と期待値を下げて鑑賞。

が!! めちゃくちゃピン!でしたよこれ。完璧な映画!そう完璧な映画だ!! 久しぶりにこんな、全面的に信頼できる映画を観てしまい感動しています。そして感想を書くのが面倒くせえ(最高!な映画ほど感想は書きづらいのである)。

とりあえずあらすじ

あらすじを書くのも面倒なのでポリシーに反して公式サイトからコピペします。

韓国のある都心部、突如原因不明の有毒ガスが蔓延しはじめる。道行く人たちが次々に倒れ、パニックに陥る街——。

そんな緊急事態になっているとも知らず、70歳になる母親の古希のお祝いをする会場では、無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)が、大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていた。

しかし、上昇してくる有毒ガスの危険が彼らにも徐々に迫ってくる。ガスに触れてしまった姉と両親・親戚たちは、なんとか救助のヘリコプターで運ばれたが、取り残されたヨンナムとウィジュ。彼らの手元にあるのは、ロープとチョークと山岳部で鍛えた知恵と体力。地上数百メートルの高層ビル群を命綱なしで登り、跳び、走る。出口は町の一番高い高層ビルよりも上!絶体絶命の中、決死の緊急脱出がはじまる!映画『EXIT イグジット』 公式サイト

Wikipediaのあらすじにある「ビルに取り残された2人は、山岳サークル時代に研鑽した体力とスキルをフル活用して脱出に向けて動き出す。」っていう一文もすごい好き。

本作とにかくこの山岳部スキルの発動が痛快で、さしずめ「泣き笑いクライミングアクションコメディ」といったところでしょうか。以下それなりにネタバレをしないと書けないので先に締めておきます。超・おすすめです!

EXIT(字幕版)

EXIT(字幕版)

  • 発売日: 2020/04/18
  • メディア: Prime Video


そんな登りやすいビルあるかよ

まずは冒頭、チョ・ジョンソクさん演じる主人公ヨンナムが「いい歳こいたニート」なのであろうこと、しかし「元山岳部で並外れた運動能力の持ち主」であることが端的かつコミカルに説明されます。

母親の古希を祝うため親族一同と宴会場に集まったヨンナムは、会場スタッフの中に山岳部後輩のウィジュ(演じるのはアイドルグループ少女時代のユナさん。戸田恵梨香っぽくてよい)を発見。かつて彼女に好意を寄せていたヨンナムは舞い上がると同時に、副店長として立派に働くウィジュを見てちょっと気後れ。

そんなどぎまぎも束の間、街では有毒ガスによる大混乱が生じ、ヨンナムたちもとりあえず屋上へ避難……しようとしたら屋上へ通じるドアの鍵が閉まってる! 鍵も下層階で取りに行けない! 屋上に出ないと救助のヘリに見つけてもらえないのに! どうすんだどうすんだ!

ここでミッションインポッシブル発動。山岳部時代の血が騒いだヨンナムは、外壁伝いに屋上へ登り、外からドアを開けようと考えます。そうと決まればまずは命綱をつけて向かいのビルへジャンプ! 外壁じゃねえのかよ! それトム・クルーズが骨折したやつじゃん! しかしヨンナムは見事によじ登り、こいつ……できる……。

周りが慌てふためくなか、ウィジュも元山岳部の血が騒ぎます。チョークとカラビナの入った袋を向かいのヨンナムへ投げる! はっ、これは、滑り止めのチョーク! 冒頭の鉄棒シーンで滑り止めの用途は見せていますし宴会場冒頭でもチョークは登場している、カラビナがどっからきたのかは知らないけど、お見事です。

というわけで再び元のビルへ飛び移り、ボルダリング用に作られたとしか思えないような外壁をクライムしていきます。真上すぎて見えないのでビデオ通話ごしに状況を見守る親族一同が妙に現実的ですが、これも同様のパターンが以降繰り返し出てきておもしろい!

かくしてヨンナムは無事に「完登」し、屋上のドアを無事解錠。その間ウィジュも宴会場の住所を救助隊へ正確に伝えたり備品を用意したりと副店長として的確なサポートをしてきたのですが、屋上においてはさらに「SOS信号」をみんなに教えるという、おそらくは日頃の研修を真面目に受けていた成果でしょう、素晴らしいプロフェッショナルっぷりを見せて無事に救助ヘリを屋上へと誘導。一件落着!と思いきや、重量オーバーでウィジュは搭乗を辞退し、ヨンナムもきっとやや不純な動機込みの使命感により残留。

いっちゃった……。とりのこされちゃった……。静かになった屋上で我に返るウィジュとヨンナム。でも、とりあえず、もっと上に逃げなきゃ。ここからいよいよ元山岳部ふたりのリユニオンが始まります。もう既に100点!

残りの好きなところを全部書くよ

さて、ここまで自然と利他的な行動をとってきてその結果取り残されてしまった元山岳部の男女ふたりですが、有毒ガスは徐々に上昇してきます。もっと上へ、なるべく高いところへ逃げなくては。

ビルの外壁登りなんていうクライマックス的な見せ場を比較的序盤に使ってしまったこの映画。しかしここからがすごいんです。ガスから逃げる、目的はただそれだけ。でも観客を一切飽きさせない、むしろずっと手に汗握り、ときに心温まり目頭が熱くなり、ときに笑える、極上のエンターテインメントを見せてくれます。

笑いという点では例えば、手作り防護服に身を包み、マスクでモゴモゴと会話もままならぬふたりのすれ違い。ヨンナムとはぐれたウィジュがついに覚悟を決めて屋上からもう一段上へとひとりクライムするのですが、登りきったと思ったら背後から現れるヨンナム。「反対側にハシゴあったよ〜〜」なんていうくだり。さりげない、クスリ。

心温まるシーンとしては、教室に取り残された予備校生たちに救助ヘリを譲る場面。またしても利他的な、しかし無理もないと思える心の動き。ヨンナムが就職に失敗している件とも関連しますが韓国は受験戦争が日本の比ではないと聞きますから、ふたりも(少なくともウィジュは)予備校で夜遅くまで勉強した経験があるのでしょう。

また、ヨンナムが命からがら助けたお姉さん。冒頭でヨンナムを引っぱたいてたお姉さん。山岳部の装備をガラクタ扱いしていたお姉さん。彼女が病床で「ヨンナムは……」と気にかけるシーンが何度も出てきます。が、その一言に留めて過剰なお涙演出をしない、この好感!

さあ、まだまだあります。特筆したいのは「サマーウォーズ感」。『サマーウォーズ(2009)』は言わずと知れた細田守監督のアニメ映画です。後半、親族の男性が仰々しいボンベを背負って「海兵隊は何でもできる」というシーン。これめちゃくちゃサマーウォーズっぽいと思ったんですよね(このくだりは「必勝!」からのテンポ感や、ご祝儀の使い方─これは以降何度も使われる─なんかも最高に笑えるポイントです)。

サマーウォーズ

サマーウォーズ

  • 発売日: 2018/04/25
  • メディア: Prime Video

で、ふと気付きました。おばあちゃんの古希祝いで親族一同が集まったら大変なことが起こり、友達以上恋人未満な男女ふたりがみんなに見守られながら奮闘する。この話、完全に『サマーウォーズ』形式じゃん! 要はめちゃくちゃ面白くてめちゃくちゃ「いい映画!!」な、つまり完璧な感じ。それも含めてじつにサマーウォーズ! いや〜〜、あたしこういうの好きなのね、つくづく。

そうそう、「みんなに見守られながら」の要素で忘れちゃいけないのがドローンです。『未知との遭遇(1977)』ばりのドローン軍団浮上シーンはめちゃめちゃアガりました。ここで大事なのが、観客の期待を裏切らないこと。最初のドローンが登場したときに、観客はふと思うはず。「ドローンに、手伝ってもらえばいいのでは……??」。でも初号機はバッテリー切れで墜落してしまう。だめか。そこに、希望の星たちが再登場。そして今度こそロープを託す。だよね!そうだよね!!

未知との遭遇 ファイナル・カット版 (字幕版)

未知との遭遇 ファイナル・カット版 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

わたし的にはですね、このロープ託しが実現したところでこの映画に全面的な信頼を寄せることができたといいますか。絶対この映画は裏切らない!と思えて、こういう感覚はそうそう得られるもんじゃないです。エンドロールのアニメ?で「ネット(網)」のくだりが一瞬映るじゃないですか。「だよね!!」っていう。ああいうところですよ。信頼というのは。

あと『未知との遭遇』といえばあの「5音」ですけども。先ほども少し書きましたが本作では劇中に何度も「SOS信号」が登場するんですね。「・・・ーーー・・・」っていうやつです。それが、よく聞くと劇伴にもモチーフとして入っていたりする。『シンエヴァ』主題歌の宇多田ヒカル「One Last Kiss」に「デーンデーンデーンデーンドンドン」が入ってる、的なね。

さらにはエンドクレジットの曲、スパイダーマン的でめっちゃアガる曲ですけども、あれにも「・・・ーーー・・・」のパートがあったりする。この映画は全編通して、SOS信号を学べるんですよ! 『EXIT』を観れば、誰もが助けを呼べるようになる! 出口を見出せる! すごくない?!(KO・U・HU・N)

とまあそんな感じでいい加減そろそろ締めていきたいと思います。最後の最後、どうにかヘリに見つけてもらえたふたりが、もう登らなくてもいいのに勢いでわーっとクレーンをがしがし登っていくシーン。もうアドレナリン掛け流し状態になってて、いくらでも登れちゃうんです。これは宴会場のビルをヨンナムが完登したときも同じことになってるんですけど、まさにクライマーズ・ハイといいますか、大興奮の無敵感、最高に楽しい。

からの、避難所でふたりが交わすやり取りですね。「今は重くて持てないから、今度返して」。これがいわゆる最&高ってやつですよね。思いっきりエンタメに振り切ったアクション大作でありながら、ドラマパートは語りすぎない。みなまで言わない。カラビナが本当に繋ぎ止めたものは何だったのか、って話ですよ!! ニクいねぇ〜〜〜!!!

で、雨降って地固まってサクッと終幕! 喝采! 今年観た映画のエンタメ部門ベストと言ってもいい! 完璧な映画でした! ありがとうございました! 以上『EXIT』大好きブログでした!

(2021年73本目/PrimeVideo)

EXIT(字幕版)

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  • 発売日: 2020/04/18
  • メディア: Prime Video
EXIT [Blu-ray]

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  • 発売日: 2021/04/23
  • メディア: Blu-ray
U-NEXTのマイリストに入れてたのに、いつの間にかラインナップから消えていてガビーンとなりました。最近あんまりU-NEXT使えてない……。固定費に無頓着な男だからどんどん貧乏になる……。