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主に映画の感想文を書いています

未知との遭遇《ファイナル・カット版》(1977)

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言わずと知れたスティーヴン・スピルバーグ監督の作品。いや、タイトルこそ有名ですがじつは意外と「観てない」って人も多いのでは。わたしが初めて観たのは2年前でした。

そんな本作、今シーズンで終了することが発表されている「午前十時の映画祭10 FINAL」のオープニング作品として選ばれ、2019年4月5日から18日までの2週間、スクリーンで観ることができます。 初日の夜、TOHOシネマズ海老名がイレギュラーに20時台の回を設定してくれていたので急遽行ってきました! しかもキャパ634名の一番大きいスクリーン。ありがとうTOHO海老名…!

当時どんな感想を書いたっけなと漁ってみたら、まだこのブログを映画感想用に使っていない頃でした。でも鮮明に覚えているのは、予想より遥かにおもしろかったこと、わくわくしたこと、あの「5音」を基にした音楽が印象的だったこと、まあとにかくすごく良かった!ということ。

初見の印象が美化されてしまうケースは多々あるのですが、今回2年ぶりに、かつ映画館の大スクリーンで鑑賞した「未知との遭遇」は、もしかして初見時よりも感動したんじゃないかと思います。

なによりも「音」がすごい

これは映画館じゃないと楽しみきれない映画だ!と確信したのは、なによりも「音」。この映画、こんなに音がすごかったんだと衝撃を受けました。

本作の原題は「Close Encounters of the Third Kind」。いわゆる“UFO”との「第三種接近遭遇」という意味があります。よって劇中では何度か「接近遭遇」するシーンが出てくるのですが、その時の音響がものすごいんです。なんとも形容しがたい周波数で、鼓膜のギリギリ不快じゃない範囲をずっと震わされてる感じ。4DXかと思うほど明らかに振動している映画館の建物。生で聴くパイプオルガンの響きに近いかも。

この周波数が登場するのはUFOがゼロ距離くらいまで接近するほんの数回のみ。それがかえって効果的で、鮮烈な印象を残します。初登場はもちろん、あの「踏切」のシーン。ただでさえゾクッとさせられる名場面にさながら4DXな音響効果が加わった臨場感たるや。徐々に離れていって無音に戻ったときの解放感たるや。これは映画館でないと味わえない、と断言します。

今回「午前十時の映画祭」の上映期間中に映画館で是が非でも多くの人に観てもらいたい理由第一位は間違いなくこれです。

シネスコ!でっかい!

もうひとつ単純に感動したのはこれ。ぐぐっとワイドなシネマスコープサイズなので、映画館で観るととにかく画面が大きい! 砂埃の中をふたつの光が近づいてくるオープニングのシーンからまず興奮(あらためて、あのシーンのミスリードな光は粋ですねえ)。ラストの母艦登場シーンなんてそりゃ言わずもがな。カメオ出演してるR2-D2もよく見えます(笑)

こちらもやはり家で体感するのは不可能でしょう。ということでぜひ、なるべく大きなスクリーンの劇場を選んでいただくのが吉です。

記憶よりホラーだった

スピルバーグあるある。「ジュラシック・パーク」シリーズなどもじつは思いっきりホラー、スリラーだったりしますけど、本作も正直かなりこわい。

全体に漂う超常現象的な「背筋ゾッ」は、なんか例えば漫画「20世紀少年」の感じとかが近いかなと。いきなりインドの合唱が出てくるとこの「ゾッ」、無意識のうちにとある形(それこそ「太陽の塔」的なこわさあり)を作ろうとしている「ゾッ」。本能的にわくわくさせられるあの感じ、近い気がします。あとあれだ、「攻殻機動隊SAC」ですっかり侵されちゃったトグサが笑い男マークの絵を描くシーンとかね。

未知との遭遇」を名作たらしめているのはやはりこのオカルトじみた「背筋ゾッ」なのだと思います。

メンタル如何でダメージ大

今回ちょっと困っちゃったのが、主人公ロイが身近な存在に見えてしまったこと。2年前に観たときはもうちょっと「なんだこいつ」だったはずなのに…。

これ、めちゃくちゃ現実逃避な映画なんですよね。だから、観る人の置かれた状況やメンタル如何でぴっかぴかの鏡になっちゃうこともあるわけですよ。今回はぴっかぴかに、ロイが自分でしたね。つらい。

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初めて観たら「えっそういう映画だったんだ」とまず驚くところであろう「5つの音」という要素。スピルバーグ監督がジョン・ウィリアムズに「5つの音から成るメロディを考案してほしい」と依頼し生み出されたというあの音ですが、「5つの音から成るメロディ」は約13万4千通りほどあるとか。鬼畜な依頼です。

努力と直感が生んだあの「5音」は本当に印象的ですし、その5音を見事なジョン・ウィリアムズ節に昇華させたメインテーマもまた絶品。初見時、DVDのタイトル画面で先にメインテーマを聴いて「これは名作!!」と確信したことを思い出します。

しいて言えば最後のセッションシーンはつい笑っちゃうのと(ノってきた地球側、あれ絶対テキトーなこと送ってるでしょ)、宇宙人の姿出しちゃうのも個人的には勿体ないなと思う派。が、まあそんなのは些細なことで、好きです。名作SF映画から好きなシーンを2つ選べと言われたら、「ブレードランナー」のオープニングシーンと、本作の母艦登場シーンを挙げます。ブレードランナーも音がいいんですよね。いいSFは音がいい。

というわけで「未知との遭遇」、映画館の大音響大画面で観ることができる今こそ、未見の方もそうでない方もぜひ、ものすごく、観てほしい作品です。2019年4月18日(木)まで! 関東圏の方は立川シネマシティで毎日夜の回もあったりしますよ!

(2019年43本目/劇場鑑賞)