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英国産ご長寿SFドラマ「ドクター・フー」にハマった(いきなりシーズン5から)|紹介と感想

「ドクター・フー」シーズン5ビジュアル

イギリスのテレビドラマシリーズドクター・フーを観ています。近年わたしのカルチャー摂取はその多くがアトロクことTBSラジオアフター6ジャンクション」の影響下にあるのですが、今回もそのパターンでございます(ちなみに今日で放送1,000回!おめでたい!)。

始まりは昨年11月23日。番組リスナーが毎日あらゆるコンテンツを紹介してくれる投稿コーナーの初回にて『ドクター・フー』が紹介されました(Spotify該当回へのリンク)。メインパーソナリティのライムスター宇多丸さんが意外やノーマークだったのに対し、火曜日パートナーの宇垣美里さんは昔テレビで観てた!好きだった!と敏感に反応。そんなご縁もあってか、今年1月18日の同じく火曜日にあらためて特集コーナーが組まれたのでした。それがこちら。


ドクター・フー門外漢」の宇多丸さんに『ドクター・フー』の魅力を教えてくれるゲストは、イラストレーターのQUESTION NO.6さん。


この方、オフィシャルなツイートの文面からだと察し取れませんが(そらそう)実際はパッションほとばしるオタクの鑑みたいなお方。パッションほとばしるオタクといえば宇垣美里さんがまさしくそれなのですけどQUESTION NO.6さんも全く同じ熱量のオタクで、最強最高のコンビみたいになってました。

で、この特集がとにかく「楽しそう」「面白そう」「好きそう」だったのですよね。これは観ないといかんな〜〜と予感が働いて放送後すぐに観始め、見事にハマって今ワンシーズン観終えたところです。ただ、シーズン1からではなくわたしの場合は「シーズン5から」観始めました。そんな中途半端な、と思われるかもしれませんが、どうやらそれが許されてしまうのが『ドクター・フー』らしいのです。

ドクター・フー』のシステム

上記特集からの受け売りを自分なりに整理してみると、こうです。『ドクター・フー』の歴史は1963年へと遡ります。ここから1989年まで四半世紀ほど続いたシリーズを「旧シリーズ」と呼び、長い沈黙期間を経て2005年に仕切り直され現在まで続くリブート的シリーズのことを「新シリーズ」と呼びます。配信で手軽に観れるのは新シリーズ以降となっており、シーズン表記も数え直しなので、今回ここでシーズン1と書いた場合は1963年の作品ではなく2005年の作品を指します。

ドクター・フー』には非常に特徴的なシステムがあります。本作のメインキャラクターは、人間の姿をした異星人「ドクター」。ドクターは例えるならば『007』シリーズにおけるジェームズ・ボンドのように時折「代替わり」してゆき、現在は1963年の1代目から数えて13代目。ただしボンドと違うのは、キャスト変更がストーリーに組み込まれていること。公の設定として「転生」するようなシステムになっている、んですって。わたしもまだその場面を見ていないので「ですって」としか言えないのですが。

んで、ドクターが代替わりするごとに「シリーズとしては地続きだけど制作陣もまるっと変わったりする」らしく、全然別物みたいになるんだそうです。なので自分の好きそうな「ドクター」のところから観始めるんでも全然大丈夫ですよ、とQUESTION NO.6さんはおっしゃる。そういうことであれば、とわたしが選んだのがシーズン5でした。

このシーズンから「11代目ドクター」を演じるのはマット・スミス。QUESTION NO.6さんの推しドクターであり、わたし的にも歴代ドクターのなかで唯一なじみのある顔だったため入口に選んでみました。代表作は『ザ・クラウン』のエディンバラ公フィリップ、最近だと『ラストナイト・イン・ソーホー』のあいつとか。だいたい嫌なやつです。嫌なやつだと思ってました。でも本作を観たことですっかり愛おしくなってしまいまして、なるほど、この「ドクター」としての成功を経て、のちのキャリアがあるわけですね。

ドクター・フー』の世界

さて『ドクター・フー』はどんなお話なのか。ざっくり言えばSFファンタジーで、引き続きの受け売りになりますが『ドラえもん』みたいな、サイエンス色は弱めの一話完結タイムトラベルものです。「ドクター」というドラえもんがいて、その不思議な力で時間旅行を共にする「コンパニオン」という地球の仲間たちがいます。こちらはのび太を筆頭にしずかちゃんスネ夫ジャイアンといったところでしょう。

ひみつ道具もあります。その最たるものが「ターディス」。青い電話ボックスの形をしたタイムマシンで、ドアを開けると外見よりも遥かに広い宇宙船の船内につながります。つまりドラえもんなら机の引き出しとどこでもドアの合いの子みたいなものです(もしもボックスは惜しい)。これがないと『ドクター・フー』は始まりません。

それから、ドクターが常に携帯している「ソニック・ドライバー」というペン型の万能ツール。あっちにピッ、こっちにピッ、青い光を当てればなんでも直せちゃうし壊せちゃう、まさしくひみつ道具。レジンでも固めてんのかって感じの地味アクションでいささかチープですがクセになります。もともとが子供向け番組だったということで、全体的にそのへんはゆるいです。ニチアサ要素のあるドラえもんと思ってください。

そんなわけで、ようやくシーズン5の感想に入ります。

ドクター・フー』シーズン5感想

第1話がとてもよかった! さっきの例で言えば「のび太ドラえもんの出会い」を描いた回なのですが、これが初回からなんとも心温まるお話になっておりまして。

シーズン5におけるのび太=主役コンパニオンはカレン・ギランさん(MCUのネビュラ、リブート版ジュマンジなど)が演じる「エイミー」という赤毛女子。第1話は彼女の幼少期から始まって、一瞬で大人の女性になるんですけども、この演出がとにかく秀逸。始まってほんの数分で「え、めちゃめちゃエモいじゃん」と引き込まれてしまいました。またカレン・ギランさんが超キュートなんです。

先ほど書いたとおり本作は基本的に一話完結で、遠未来の宇宙を旅していたかと思えば次の回では第二次世界大戦中のロンドンでチャーチルに会っていたりする、そんな自由な気ままな物語。最初のうちは「振り幅広いなあ」とそれらを観ていくのみですが、後半にかけてじつはバリバリ伏線張り巡らされてた!みたいな展開もあって驚きました。

例えばアトロク内でも「名作」と紹介されていた第10話「ゴッホとドクター」。自殺直前の画家ゴッホに会いに行く話(終盤が泣ける……)で、いかにも一話完結っぽいエピソードです。でもこの話、じつはかなり衝撃的な出来事の直後に位置していて、知った上で観るとまただいぶ違った味わいがプラスされます。さらに、一話完結と見せかけて案外その後の展開にも大きく関わってきていたりするんです。だけど、一話完結ものとしても問題なく観れる。いや〜、よくできてます。

そして極め付けはラスト2話。これ、あれですよ、アベンジャーズで言えば『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』みたいな2話ですよ。それでいて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的タイムパラドックス風味(あくまで「風味」な緩さがよい)と『さようならドラえもん』を一度に味わえるような、すごいエピソードで。最終話「ビッグバン」がわたしはかなり好きでした。エモすぎ。

このエモさ、ちょうど一年前にエモ散らかしていた『センス8ウォシャウスキー姉妹によるドラマシリーズ)』とも近いかもしれません。サイエンスよりはエモーショナルを取るほうの、「奇蹟」な展開。『センス8』ぐらい「うわあなんかすげえエモい死ぬ」とくらくらできる作品にまた出会えないかなあと日頃思っていましたが、まさか『ドクター・フー』ほどの巨大コンテンツがそれだとは。歓喜

ドクター・フー』沼、いかがですか

以上、にわかフーヴィアン(トレッキー的なやつ)による『ドクター・フー』の紹介と新鮮な感想でございました。先にも書いたようにニチアサ的チープさのある作品ではありますが、そんなの関係ねえという力技のエモを提供してくれる作品でもある!とたったワンシーズンで確信いたしました。PrimeVideo等でシーズン12までばっちり観れますのでピンと来た方はぜひ試してみてはいかがでしょう。もう一押し、という場合はアトロクの特集をぜひ。あまりに楽しそうなので観たくなることうけあいです。

もう一度貼っときますね。

第1話 11番目の時間

第1話 11番目の時間

  • マット・スミス
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上でわたしが書いているシーズン5の第1話(字幕版)はこちら。そうそう、『ザ・クラウン』といえばこの第1話にすっごいチョイ役でオリヴィア・コールマンが出てます!