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主に映画の感想文を書いています

アトロク「オリジナル音声ガイド制作プロジェクトby日比麻音子アナ」の経緯を振り返る

チュプキの壁に書かれた日比さんと矢野監督のサイン

先週水曜日、アトロクことTBSラジオアフター6ジャンクション」にて、シネマ・チュプキ・タバタとの合同企画「オリジナル音声ガイド制作プロジェクト」完結編が放送されました。矢野ほなみ監督の短編アニメーション作品『骨噛み(2021)』に、TBS日比麻音子アナウンサーが音声ガイドを付けるというものです。

アトロクきっかけで音声ガイドに興味を持ち、気付けばチュプキの中の人になってしまったわたしにとって、こんなにも感慨深いプロジェクトはありません。と言いつつ何も関わってはいないのですが。

で、感慨深さを語るのもいいのだけども、それ以前に「ここまでの経緯」があったほうがいいかなと思いまして、いろいろとリンクを貼りつつ記録 兼 ご紹介していくことにします。※必要以上に長くなりました。

日比さんと音声ガイド

アトロクでは過去にも数え切れないほど音声ガイドやアクセシビリティ関連の特集を放送していますが、帯番組のため必ずしも「水曜パートナー」の日比麻音子さんが関わっているとは限りません。例えばわたしのマイ・ギャラクシー賞である20年5月の音声ガイド特集は火曜パートナー宇垣美里さんの日ですし、同年3月の「UDキャスト」特集も宇垣さんでした。


そんななか、日比さんが音声ガイドに強く興味を持つきっかけとなったのは、20年3月の「バリアフリー演劇特集」だったそうです。日比さんは学生時代に演劇をやっており、もとよりアトロク水曜は演劇の話題が多め。最も身近なものとのコラボレーションで、強く印象に残ったのかもしれません。なお、この特集には今回のプロジェクト首謀者であるバリアフリー活弁士・檀鼓太郎さんも出演しています。

バリアフリー演劇特集(2020/03/18)
【文字起こし】バリアフリー演劇特集 Part 1「TA-net 廣川麻子さんインタビュー」
【文字起こし】バリアフリー演劇特集 Part 2「バリアフリー演劇『メゾン』+インタビュー」
※音声で聴きたい方は、「ラジオクラウド」アプリの「【アーカイブ】アフター6ジャンクション」から20.03.18を探していただけるとまだ公式に音声が残っています。

この特集を今あらためて聴いてみると、『メゾン』上演後の日比さんが「演劇をラジオでやってのけたっていうのは革命じゃないかと思いますね!」と大興奮していて、未来人からしますと「日比さん、2年半後に“映画”でもまた革命起こしちゃいますよ」なんてニヤッとしたり。

さて、その後、音声ガイド関連の特集はいつしか水曜日に組まれるようになりました。演劇の音声ガイドに始まり、映画の音声ガイド、プロレスの音声ガイドと、さまざまな音声ガイドに日比さんは短期間で触れていくことになります。

映画鑑賞サービス “音声ガイド”は今、こんなに面白い特集2021(2021/06/23)


プロレスを音だけで楽しむ「音声ガイド」の世界(2021/07/21)


一方、すっかりアトロクの常連になった檀鼓太郎さんは、かつてバリアフリー演劇特集で「日比さんが音声ガイド制作に興味を持っていたこと」が常に頭の片隅に。何らかの企画を立ち上げられないか、ずっと構想していたと言います。

日比さんと『骨噛み』

今回のプロジェクトで日比さんが音声ガイドをつけることになった短編アニメーション作品『骨噛み』。こちらもちゃんと経緯があります。

矢野ほなみ監督の作品『骨噛み』は、TBSが主催する短編映像アワード「DigiCon6 JAPAN」の2021年大会にて最高賞を受賞しました。

じつは日比さん、学生時代から「DigiCon6」の運営に関わっており、TBSアナウンサーになってからは司会を担当! もちろん、この2021年大会も司会進行で携わっていたわけです。この回についてはアトロクで特集も放送。骨噛み、矢野ほなみ監督、日比さん、アトロク。パーツがどんどん揃ってゆきます。

「DigiCon6 JAPAN」の面白さと意義をちゃんと説明する 特集 by 伊藤有壱さん(2021/11/17)


さあそして、これまでアトロクが育ててきた土壌、日比さんの想い、檀さんの想いなどが、ついに合わさります。

オリジナル音声ガイドプロジェクト

忘れもしない、22年8月31日(水)。チュプキのクラウドファンディング最終日、カウントダウン生配信に参加すべく山手線でチュプキへ向かっている最中、radikoで聴いていたアトロクから嬉しい報せが届きました。


当時のチュプキはとてもとてもてんやわんやだったので「え?!なんかいま発表されましたよ?!」みたいな感じで、SNS等でのレスポンスも結局翌日になってしまったのですけども。んで翌週には首謀者の檀鼓太郎さんが出演し、ことの経緯を説明。長きにわたる構想の末に実現したプロジェクトであることがわかります。


そこからはあれよあれよと、日比さんがチュプキに来てくださって収録をしたり……


文化庁メディア芸術祭とのコラボ企画でもあったので、矢野監督をゲストに日本科学未来館で「映画『骨噛み』の音声ガイドを作ってみよう」というワークショップを(台風のさなか)開催したり……


このワークショップにはわたしも受講者として参加したのですが、とても楽しかったです。『骨噛み』4:00あたりに付けてみた「“わたし”のまわりがぐるぐると回る」というガイドを監督が気に入ってくださって嬉しかった〜。


じつはわたし『骨噛み』を観るのはこの日が初で。ワークショップが始まる前に、監督の前作『染色体の恋人(2017)』も観たのですけど、どちらも本当に、短いながら強烈に何か残していく作品で。『骨噛み』は予告しか観れませんが、『染色体の恋人』はYouTubeで全編観れます。艶がすごいです。日本科学未来館の飲食スペースなんていうざわついた場所でひとり余韻に浸ってしまうほど。ぜひ。


さて、で、ええと、その後も矢野監督は舞台挨拶でチュプキに来られたり、日比さんもお忍びで『骨噛み』上映を見届けに来られたりと、いろいろありつつ、22年9月28日、ついに「オリジナル音声ガイド制作プロジェクト」完結編の放送日でございます。

この日の放送は、オープニング30分、ポッドキャストに残っていない19時台後半(シアター一期一会含む)、20時台まるまると、ほぼ全て音声ガイドやバリアフリーアクセシビリティ関連の内容になっていました。radikoのタイムフリーで聴けるのは明日(10/4火)まで!


20時台の「完結編」では、音声ガイド付きの映画『骨噛み』を10分間「フル上映」するという、ラジオ的に革新的な試みが! 日比さんverの完成品はわたしもこのとき初めて聴きました。一度映像は観ているのだけど、日比さんのガイドによってまた新たな映像が、それも主人公の“わたし”を中心としたVRのような、360度の映画体験が頭の中に広がって、素晴らしかったです。

なお残念ながら現在ポッドキャストアーカイブでは本編部分がカットされているのですが、権利関係調整中とのことで、おそらく後日聴けるようになるみたいです。なってほしい。何卒!

【10/19追記】聴けるようになりました!うれしい!


またこちらの特集、本編音源以外にも、音声ガイド制作過程の「検討会」を実録音声でたっぷり見せてくれる内容になっており、貴重だし面白いです。ぜひ聴いてみてください。

嬉しいことは続くものでして、アトロク金曜恒例の一週間振り返りコーナーでは、脚本家・スクリプトドクターの三宅隆太さんと、TBS山本匠晃アナウンサー、さらに構成作家古川耕さんが、15分以上も尺をとって今回のプロジェクトについてたっぷり感想や補足など語ってくださいました。


日比さん以外の曜日パートナーによる「音声ガイドプロジェクト」も、もしかしてある?!なんて期待しちゃいますね。



『こころの通訳者たち』

その後はと言いますと、この週末の土曜日、アトロクでもご紹介いただいていたチュプキ初製作のドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち』が封切りとなりました。


「『聞こえない人に演劇を届ける舞台手話通訳者たちのドキュメンタリー』を見えない人に届ける音声ガイド作りのドキュメンタリー」という、言葉にすると非常に複雑な作品。しかし、これってつまりコミュニケーションのお話。ニッチな仕事を描きながら、とても普遍的なことを伝えてくれる映画です。

映画には、「音声ガイドプロジェクト完結編」に出ていたチュプキの平塚代表と視覚障害者の石井健介さん、アトロク常連の白井崇陽さんも出演。それと、日比さんが音声ガイドと出会うきっかけになった「バリアフリー演劇特集」ご出演の廣川麻子さんも出ておられます(廣川さんの手話通訳をされていた瀬戸口さんも!)。日比さんがこの映画を観たら、また火がついちゃうはず。


ちなみに、チュプキのツイート1枚目の写真に写っているのがちょうど「平塚代表・石井さん・白井さん」ですね。なぜこんなアッパーなことになっているかというのは、映画をご覧くださいませ。

映画は現在チュプキのみでの先行公開ですが、10/22(土)からのK's cinemaさんを皮切りに全国ロードショー予定です! 関西圏は続々決まってきておりますのでチェックしてみてくださいませ! 着地がここでいいのか? あ、ええと、チュプキに来ると日比さんや矢野監督の壁サインも見れます! ぜひ!


それから檀さんはと言いますと、映画『ファーストミッション』の音声ガイド担当&宣伝隊長(?)として楽しそうにされてます。


『カメ止め』『ベイビーわるきゅーれ』級にヒットしていないのが腑に落ちない桁違いのアクション映画『ファーストミッション』、映画館でしか観れない作品なのでぜひ観にいらしてください。チュプキでは15日まで上映しています! なんと日替わりで音声ガイド3パターンもあるんですって。着地がここでいいのか? いいか。全部ひっくるめてチャレンジヒーローについての記事でした。観ればわかる。