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Netflixドラマ「センス8」紹介|「エモい」という言葉はこの作品のためにある! 〜シーズン1ふんわり感想〜

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Netflixで配信されているドラマシリーズ『センス8(Sense8)』にハマっています。『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉妹を中心に製作された作品で、ジャンルは一言で表しづらいのですがSFでありクィアなヒューマンドラマでありディスカバリーチャンネルでもあるといった感じでしょうか。

きっかけはぺ・ドゥナ様でした。世界的に活躍する韓国の女優さんで、──ここでは説明は省きましょう。上の画像で中央にいるお方です。とにかくぺ・ドゥナ様を推す機運がいきなり高まってきて、映画だけじゃなくドラマも観たい!ってことで、手始めに完結してる本作を選んだのでした。

もし「センス8 ぺ・ドゥナ」で検索中の方がおられたら、先に書いておきます、おすすめです。ハリウッド映画におけるアジア人女性枠あるあるみたいなキャラクターではなく、思いっきり大活躍の武闘派ぺ・ドゥナです。ぜひご覧ください。

で、そう、推しを推すという本来の目的は文句なしに達成しました。でもそれ以上に作品世界にどっぷりハマってしまったため、『センス8』こんなドラマですよっていうのを語っていきたいと思います。ネタバレなしとは言いませんが、観てみないことにはよくわからん系の作品なので気にしなくて大丈夫です。なおシーズン1まで観終わった状態で書いています。

端的に言えば「エモい」

観始める前に「センス8 おすすめ」でポジティブな情報収集してたんですけど、感想の中に並んでいる言葉が「奇跡」とか「神秘的」とか「愛」とかばっかりで、正直やべえなと思いました。ちょっと気持ち悪いやつだなと思いました。

でもなんか、これシーズン2で打ち切られてて、にも関わらずファンからの熱望に応えるかたちでグランドフィナーレが製作されて、とか、Wikipedia読んでてもやけにアツいんですよ。熱量の高いコンテンツは好きなので、乗ってみよう!と結局観ることにしたわけです。

後述しますが本作あんま掴みは良くないです。ただ面白くなりそうな匂いはするので眠気と戦いながら観続けた結果いつしかどっぷり浸かっておりまして、頭の中にうごめく感情はずばり「エモい」。掛け値なしに申し上げれば、「エモい」という言葉はこの作品のためにあります。エモさの内訳はまたのちほど。

掴みは良くない

上述の通り、掴みは良くありません。好みは人ぞれぞれだとしても、スロースターターなのは間違いないでしょう。個人的には、ワンシーズン丸々使って「第一話」をやろうとしてるような印象を受けました。

本作の物語は、ざっくり言うと「世界各国に散らばった8人が超常的な“繋がり”を持てるようになってしまう」お話です。もともと何の繋がりもなかった8人が「もしかして、」「私たち、」となっていく導入がまず最初に必要なわけです、が、それをものすごいじっくりやります。なかなか進まないんです。なので最初は結構あくびが出るかもしれません。


これはわたしの初日のツイート。まだ半信半疑ながらも一応4話まで進んでいるあたりにポテンシャルを予感させます(そうそう、マブリーことマ・ドンソクが端役で出てました。他にも韓国映画ファンが喜ぶサプライズ多数!)。この翌日には──


もう「ハマった」認定しているようです。そしてさらに翌日には──


完全にエモ散らかされて死んでます。テンポが悪いとも思えた前半の地味な描き込みが後半で功を奏しているのは言うまでもありません。というわけで論より証拠ツイートです。観てみようかなとか、観始めたんだけどリタイアかなとか思っている方がおられたら、ちょいと耐えてみるとエモいものが見れるかも、です。

エモさの内訳

さて散々エモいエモいと言ってきて何がどうエモいのか。頑張って言語化していきたい所存。

「奇跡が起こる」「愛が溢れてる」「神秘的」。この作品について一言で表そうとするとどうしても歯の浮くようなワードしか出てこないのですが、具体的かつ適切なところで言うならば「離れていても、そばにいるよ」っていうところかと思います。歯が抜けるレベルの言葉です。

精神的な、さらには超常的な“繋がり”を持ってしまった8人が、地球上のあちこちでそれぞれの生活を送っている。これが本作の「8人」の基本スタイル。しかし8人のうち誰かがピンチに陥ったとき、一瞬にして「誰か」が、もしくは「みんな」がその場に現れて助けてくれる。みんなありがとう。次の瞬間にはまたひとりに戻っている。

いつまでも歯の浮くことを言い続けますと、この作品は「繋がり」「絆」「信頼」「友情」「愛情」といった、目には見えないけれど我々が間違いなく日頃感じているやつを可視化して描いているんだと思うんです。ネット上の付き合いしかない友達、とかでもいいです。ぽそっと投下したツイートにぽぽぽっと様々な場所から「いいね」が付くような感じ。あの交流を実体化して描くと本作になるってことです。

または。わたしの好きなB'zの曲『Brotherhood』にはこんな歌詞があります。

どこかであいつがベソかいて
どこかでおまえがブッ倒れて
どこかでボクがヤケになってる
味方がいないと叫んでいる
みんな生まれも育ちも違ってるし
ベッタリくっつくのは好きじゃない
いざという時手をさしのべられるかどうかなんだ
だからなんとかここまでやってこれたんだ
You know what I mean

この曲に出会って以降いろんな局面で響いてくる言葉なんですが、これを膨らませたような物語でもあるわけです。

他の部分にはこんな一節もあります。「同じ道をゆくわけじゃない/それぞれの前にそれぞれの道しかない」。だけど「道は違ってもひとりきりじゃないんだ」。まさに『センス8』のテーマ曲であると言えるB'z『Brotherhood』、ぜひ聴いてみてください(あれ?)。

Brotherhood

Brotherhood

  • B'z
  • ロック
  • ¥255
(ファンのみぞ知るアルバム曲だが、東日本大震災発生直後の「Mステ」で演奏されたことがある。という豆知識)


少々脱線したものの、そういうふんわりとしたエモさがまずひとつ。それからもうひとつに、音楽の力があると思います(B'zのことは忘れてください)。これも視聴前に読んでいたプッシュ記事等でよく触れられていて「ふうん」ぐらいの感じだったのですが、実際観てみると、ああ、確かにこれは音楽がすごく独特で、すごく力を持っているかもしれないと納得しました。

ホルガ村に行ったことがある方ならミッドサマー終盤みたいな通奏高音」でお分りいただけるでしょうか。高い音のストリングスが常に不自然なクライマックスを演出し続けているような、あの感じ。あれはとても『センス8』に通じます。

Fire Temple

Fire Temple

「不自然な演出」というところがミソで、エモーショナルなものを扇動しすぎる劇伴は一般的によしとされないことも多いですが、本作の場合はこれが作風なのだからいいんです。映像だけ見てみたら単なる日常生活にすぎない。しかし「エモ音」が鳴り響いていることで、全てがたまらなく美しく見える。現実的な話をするとオール4K撮影なのでそこんとこも本当に美しい。

そんなインスタみたいなドラマ好きじゃねえよと思うかもしれません。でもどうでしょう、いざ五感に訴えかけられたら結構抗えないんじゃないかというのがわたしの考え。わたしがまさに、抗えなかったので。ちなみに『Sense8』は『Sansate(知覚)』の言葉遊びだそうです。

さて。このようにして、またしてもネット上に『センス8』のふわっとスピリチュアルな紹介文が生まれてしまいました。紹介っていうか詳しいこと全然書いてないんですが。あらすじすら書いてないレベルですが。そういう感じのドラマなんです。もしよろしければ、ものは試しに、ぜひ。


1話目から滾りすぎてるシーズン2の感想は、観終わったあとにエモ散らかします。

追記:観終わったので書きました。

感受しすぎて逆に何も書けなくなってしまった。