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韓国ドラマ「秘密の森」シーズン2最終話までのネタバレ感想

ここ数日すっかり映画そっちのけで韓国ドラマ『秘密の森』を観ておりました。シーズン1視聴途中にも簡単な紹介を書きましたが、現時点での最新シーズンであるシーズン2(正確には『秘密の森2』)まで完走したところで今回はネタバレ多めの感想を書いていきたいと思います。

『秘密の森』について改めてざっくり紹介しておくと、脳手術の後遺症で感情表現が乏しい敏腕検事ファン・シモクチョ・スンウと現場主義の熱血女刑事ハン・ヨジンぺ・ドゥナが組織の垣根を超えてバディとなり不正や犯罪を暴いていくサスペンス・スリラーです。

韓国では社会現象を巻き起こしたほどのヒット作だそうで、シーズン1は2017年、シーズン2は2020年にテレビドラマとして放送されました。日本ではNetflixで全シーズン配信されています。

シーズンごとに16話たっぷり使って「ひとつの事件(から派生した大小様々な事件)」の真相を明かしていく濃密かつ綿密なストーリー、男女バディものだというのに2シーズン32話まったくロマンスなしで視聴者をつなぎとめてしまう潔さと秀逸なキャラ造形、このあたりが個人的には魅力だと思っています。

さて、では以下ポスター画像に続いてネタバレ感想です。シーズン1終盤からシーズン2ラストまでの具体的な展開に触れています。なんていうか、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』よりもネタバレの破壊力はでかいです。すでに視聴中の方はくれぐれもご注意ください。

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韓国ドラマ「秘密の森2」ポスター


シーズン1終盤からシーズン2序盤まで

前回の記事は10話まで観たところで書きましたが、その後が波乱でございました。11話で「07」が初登場。12話で「07」のまさかの真相判明。そしてそれを見てしまったウンスが……という13話。中略、最終話。

いやはや。死ぬタイプの韓国ドラマに耐性がなかったもんで、「マジか」の2連続でただただ呆然としちゃいました。それもよりによってあのふたりとは。

ウンスは数少ないロマンス要員だし、希望の星たる最年少なわけじゃないですか。イ・チャンジュンはこの上なく複雑な魅力の役柄で、ここからいよいよ!ってところじゃないですか。そんな推進力をふたりも殺しちゃってどうすんの、どうなんの。

案の定というか、ふたりを失ったシーズン2はなんともパッとしない感じの序盤。果たしてこれからシーズン1ばりの面白さを見せてくれるのかどうか。

(※じつはこれ、下書きに寝かせていた当時の感想です)

それにしても、シモクの感情の動きが終盤たまらなかった。特に、葬儀での一幕。視聴者ですら「誰の声?」となったあの叫び。思えばシモクはこれまでウンス関係のことでしか声を荒げたことがなくて、それは最後までそうだった。ずっとしっかりセットしていた前髪をおろし、ノータイで葬儀に現れるシモクのカタルシスよ。

イ・チャンジュンは、まあ糸が切れてしまったんでしょうなあ。彼もシモク同様にずっと張りっぱなしの人だったから、あれはある意味カタルシスと言えなくはない最期。ソ検事を黙認した終盤のシーンは思い返すに泣けます。いいんだよそれで、っていう愛情を感じる。

──というわけで、書きかけで放置していたシーズン2入りかけの頃の感想をまずそのまま載せました。「なんともパッとしない感じの序盤」だったシーズン2、果たしてその後どうなったのでしょうか。

シーズン2最終話まで観終えて

パッとしないとか言ってすまんシーズン2よ! めちゃくちゃ面白かった! とはいえ前シーズンで大胆に主要キャストを何人もリタイアさせてしまっており、そこから数年が経過。かつての面々はみな散り散りになり──というところから始まるシーズン2はどうしたってもどかしい(攻殻機動隊シリーズにおける9課再編成までのジレンマ的なやつ)。

シモクもヨジンもキャリアアップで立場が変わり、気になる案件があっても以前のような捜査はなかなかできない。おまけに検察と警察の捜査権を巡るバトルに巻き込まれ、会議室では敵として対面しなきゃいけなかったりする。そんな状態がずるずる続くのでフラストレーションはすごい。

ときに、馴染みの顔がだいぶ減ってしまったなか意外と残っているソ・ドンジェ。ああもうこいつでもいいや、嫌味なやつだけどなんとなく安心するしなんなら好きになってきたかも──っていうのがじつは仕掛けで、そこからの悪夢再来、もう背に腹は変えられないと動き出すかつての面々、パッとしなかったはずが気付けばのめり込んで止められない!やった!

掴みが必要なシーズン1と違って「掴まなくてもいい」のがシーズン2以降の強みであり、「2期っぽさ」と言われるような独特の魅力(攻殻2ndみたいな)に繋がるんだなあと、あらためて思いましたね。

あと、シーズン1って硬派な社会派ドラマと見せかけてじつはなんだかんだ財閥やらなんやら「ザ・韓国ドラマ!」っていうゴリゴリのやつをやっていたんですけど、シーズン2ではそのへんの要素を一気に削って警察目線から犯罪捜査の過程を描くことにかなり比重を置いている印象を受けました。

どんどん“秘密の森”に踏み込んでいく感じっていうのはシーズン1から共通ですが、2では事件が「迷宮入り」していこうとする様をすごくリアルに描いているんですよね。一向に尻尾を掴めないからとにかく怪しいものは全て調べる。するとそこからまた枝分かれしていって収拾つかなくなってくる。マジでこの事件、解決しないかも……。この超スローな展開を許してくれる韓国ドラマの「60分×16話」は強い!

シーズン2で描かれる警察の捜査過程は本当に細かくて、防犯カメラの映像ってこんなふうに使われていくんだなあとか、ネット上の投稿者を特定するためにはこんな手順を踏むんだなあとか、知らないなりにかなりリアルなのでは?と思わせる地味な作業の数々が逆にエンターテインメント。電話とメモとタイプライターだけで極上エンタメを実現させた『大統領の陰謀(1976)』を彷彿とさせます。

大統領の陰謀 (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

ほかにはなんだろう、書きたいこといっぱいあるんですが、きりないし。シモクとヨジンの関係はますますプラトニックになってきて、いちばんキュンキュンしたところでせいぜい会議中の発作かなあ。あそこで口をつけずにコーラ飲むヨジンがよい。そもそもこの発作を決してお決まりのようには使わない製作陣の誠実さ(知らんけど)もよい。ヨジンといえば超珍しくロングヘア仕様のペ・ドゥナ様がオツなものでしたね。

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よきかな

他の面子もシーズン2ともなるとみんな愛おしくて。この検事たちと刑事たちのいる世界から離れたくない!ってラスト数話ずっと思ってました。カン地検長とか、シモクがついウンスと重ねてしまっているあの若い検事も好きだったな。ハンジョの奥さんもまるで別人のような顔立ちで。ソ検事との約束もあることだし続きが見てみたいなあ。

名残惜しいですがそんなわけで以上、『秘密の森』すごく面白かったです。このあとはチョ・スンウ氏を追ったりなんだりいたします。


追記:『秘密の森』ロス対策には映画『インサイダーズ/内部者たち(2015)』がおすすめ。チョ・スンウが検事です。