映画「麻薬王(2018)」感想|70年代、日本相手のヒロポン闇取引をソン・ガンホ主演で描いた作品
Netflixで配信されている韓国映画『麻薬王』を観ました。監督は『KCIA 南山の部長たち(2020)』のウ・ミンホ。出演はソン・ガンホ、ぺ・ドゥナほか。
ひとつ前に観た『インサイダーズ/内部者たち(2015)』から続けてのウ・ミンホ監督作品ですが、こちらもキャストが非常に豪華。上記ふたりのほかにも『KCIA』の朴正煕大統領役イ・ソンミンさん、『秘密の森』『梨泰院クラス』ですっかり大好きになったユ・ジェミョンさんなどが控えめに出ていたりします。
パラレル『秘密の森』じゃん!と鼻息荒く喜んだ『インサイダーズ』と本作を合わせると、偶然なのかなんなのか『秘密の森』主要キャストがだいたい揃ってしまうのはなんとも面白いところです。かたやチョ・スンウ助演、かたやぺ・ドゥナ助演。後半からは検事の話になりますし(演じているのはチョ・ジョンソクさん。わたしは今回初めて拝見したのですが、有名な方のようですね)。
※Netflixで観れる韓国ドラマ『秘密の森』、しつこくプッシュ中です!
さて、この映画は70年代韓国に実在した麻薬王(イ・ファンスンという人らしい)をモデルとしたフィクションです。いきなり日本から始まるのですが、監督の前作『インサイダーズ』も日本で終わった(オチた)ことを考えると、監督なかなか日本にただならぬ因縁がありそう。
開口一番「ヒロポン=メタンフェタミンは第二次世界大戦中に日本でも神風特攻隊が使ってたらしいよ」と来るぐらい本作は日本と関わりが深く、麻薬王さんの取引先は当然日本。大阪や神戸が何度も登場し、ソン・ガンホやぺ・ドゥナはときに日本語を喋り、とある日本人キャストが出てきたりもします。
ちなみに日本描写にはお決まりのサイバーパンク的トンチキ感が否めず、アジア同士でもダメか〜〜とちょっと可笑しくなりました。日本語台詞が妙にボソボソっと抑揚のない感じになるのもハリウッド同様。なんでなんだろう、本当にそんなイメージなのかニッポン。
監督の作風というところでは、『インサイダーズ』以上に拷問プラスアルファが過激! 薬物中毒の描写もただイカれてるだけではない残酷さがあって印象的でした。また、のちに『KCIA』でしっかり描くこととなる朴正煕大統領の暗殺事件も背景として登場し、かねてから扱いたい題材であったことが伺えます。金大中事件に使われた船??みたいなエピソードも出てきます。
キャスト的なところでは、まあやはりソン・ガンホ先輩はすごいなと。庶民中の庶民から成金、ヤク中の廃人までを自然に行き来しますからね。観てるときは思わなくても後から「ソン・ガンホすごかったな」って思う感じですね。
ぺ・ドゥナ様もこれはかなり珍しいタイプの役柄では?? 四ヶ国語を操る美人ロビイストを演じており、いつもの飾らない姿に慣れていると気恥ずかしいほどでした。それにしても実際に何ヶ国語も話せるというのは強いなあというのを『センス8』などでの活躍しかり感じます。
といったふうに見どころは多いのですが、ストーリーは弱いっていうか入ってこないっていうか、表面は面白かったけど中身ピンとこなかったなって感じの映画でした。韓国では劇場公開されるも大コケしたそうで、実際見比べてみると『インサイダーズ』と『KCIA』が大ヒットしてこちらがコケるというのは納得です。
(2021年42本目/Netflix)
本作はNetflix独占配信なので、引き続き『インサイダーズ/内部者たち』をおすすめしておきます。