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映画「インサイダーズ/内部者たち(2015)」感想|アルバトロス!じゃねえよ

映画「インサイダーズ/内部者たち」より

劇中いちしょうもない台詞をサブタイトルにしました。「モヒートでモルディブ」とも迷ったけど、やっぱこっちだろうな。あの“接待ゴルフ”嫌すぎるでしょ。完全フィクションであることを祈る。

はい、というわけで『インサイダーズ/内部者たち』という韓国映画を観ました。

1月に公開された『KCIA 南山の部長たち(2020)』のウ・ミンホ監督による作品で、元々はその流れで観ようとウォッチリストに入れていたんですけども。こういうのって不思議と導かれるものがあるようで、つい最近ハマっていた韓国ドラマ『秘密の森』ともじつはキャストや世界観がかなり被っていたのでした。そんな感想がメインです。

社会派だが、軽い。

映画の筋をざっくり言うと、金とコネと権力で全てを思い通りに操る悪いやつら(財閥、マスコミ、そして大統領候補!)にコネなし平検事とチンピラが手を組んで立ち向かうというサスペンス。チンピラ役はイ・ビョンホンです。

ゴリゴリ社会派な感じかと思いきや、冒頭イ・ビョンホンが見せる「突然の義手」を筆頭に諸々わりかしド派手なエンタメ性を持っているのが特徴で、たとえば「義手」に繋がる強烈な拷問シーン、不意打ちの転落死シーン、そして一度見たら忘れられない強烈な接待シーン。アルバトロス!(脚本のト書きが見てみたいわ)

一応はハードボイルドなポリティカルサスペンスでありながら、劇場ではきっと何度も笑いが起きていたであろう絶妙なコメディ感がうまいなーすごいなーと思いましたね。「モヒートって、どこにあるんだ?」からの爽やかな幕引きもうれしい。2015年当時、韓国で歴代最高の観客動員数を記録したというのも納得であります。

「秘密の森」のパラレルワールド

2017年、2020年と放送された韓国の人気ドラマシリーズ『秘密の森』。つい最近ハマっていたばかりなので詳しくはそのへんの記事をご参照ください。

このドラマは警察と検察の社会派サスペンスで、メインキャラクターであるファン・シモクという感情のない検事が非常に魅力的なのですけども。それを演じているのがじつは、本作の検事役チョ・スンウさんなのです。おそらくは本作のヒットが『秘密の森』のキャスティングにも繋がっているんでしょう。

「秘密の森」のチョ・スンウ

そんなわけで、ビジュアルもほとんど同じチョ・スンウさんの検事が『秘密の森』ロスを埋めてくれる、のかと思いきや。こちらの検事は感情表現豊かで口が悪くて、『秘密の森』の真逆。こんなファン・シモク見たくねえ!!と心では叫びつつ、まあパラレル世界のファン・シモクってことにしておくか……。

さらに、キャスト被りはこれだけではありません。本作の一番「悪いやつ」こと大統領候補の極悪ジジイを演じているイ・ギョンヨンさん。この方は『秘密の森』だと財閥会長。全く同じポジションの悪いやつです。むしろこんなに同じ役でいいのか。パラレルでも性根は直せないのか。

脇役だと、パク・ジヌさん。こちらは『秘密の森』でぺ・ドゥナさん演じるもうひとりのメインキャラクター、ハン・ヨジンの同僚刑事を演じていた方。韓国映画・ドラマって「あの人が出てる!」と気付いたときの喜びが妙に大きいの不思議ですね。

キャスト以外の部分では、韓国の検察の階級がすんなり理解できちゃうのも嬉しくて。序盤で「大統領府首席秘書官」と「ソウル地検部長検事」が並んで歩いてるところとか、『秘密の森』に置き換えればイ秘書官とカン部長が並んで歩いてるってことでしょ? この秘書官は検事長からキャリアアップしたってことでしょ? みたいな。

ちょいちょい映り込む国会議事堂もやはり『秘密の森』と重なってテンション上がりましたし(でもあれ検察の建物だと思っていた。国会だったんですね)、期せずしてベストのタイミングで観れてよかったです。ドラマ『秘密の森』からの映画『インサイダーズ』はこれ、かなりオススメのルートですよ。

(2021年41本目/U-NEXT)

インサイダーズ/内部者たち(字幕版)

インサイダーズ/内部者たち(字幕版)

  • 発売日: 2016/08/24
  • メディア: Prime Video
主演なのに感想がおざなりになってしまったイ・ビョンホン様すみません。『KCIA〜』でも圧倒されましたが、やはりこの人は眼力がすごい。目元で全てを訴えかけてくるようなところがあります。

追記:同じ監督のこちらも観れば『秘密の森』キャストが大体揃うこと判明。