映画「哀愁しんでれら(2021)」感想|シンデレラストーリーからどう転落するか、そこが見ものなトラウマ級の問題作
土屋太鳳さん主演の映画『哀愁しんでれら』を観てきました。大体のお話は、公式が謳う「裏おとぎ話サスペンス」というワードで察せるところでしょう。
スクリーンで観たい日本人女優ナンバーワンこと土屋太鳳さんのしかもちょっとヤバそうな作品だったのでずっと楽しみにしていたのですが、まず期待していたものは得られた。そして期待以上、想像以上のものも見れてしまった。そんな作品でございました。
本作、ざっくり言えばトラウマ映画の類です。すごいからみんなみて!と言いたいところですけども、ジャンル的にはマタニティホラーなんかと近い要素もあり、単純にしんどかったり不快だったりする人も多いはず。鑑賞の際はその点ご留意ください。
とりあえず、なかなかブッ飛んだ問題作がいま映画館にかかっている!とだけは言っておきます。予告編に続いて、以下ネタバレです。
よくこんな映画作ったな
鑑賞後まず思ったのは、予告編がよくできていたなあと。「裏おとぎ話サスペンス」であることは明かしたうえで裏をかいてくる展開にまんまと驚かされました。それでいて序盤はイメージ通りで、アバンタイトルにして早くも元は取れた!と大満足しちゃったくらいには「観たかったものが見れた」という感じなのがまた嬉しい。
予告編で印象的なのが、キャッチコピーにもなっている言葉「なぜその女性は、社会を震撼させる凶悪事件を起こしたのか」。「凶悪事件」が起きることは決まっている。おそらくは土屋太鳳さんが「その女性」なのだろう。しかし観ていくうちに、むしろ彼女の義娘が『悪い種子(1956)』ばりの凶悪女児であることに気付く。もしや「その女性」はこっちなのか??
いやいやそこはやっぱり、社会を震撼させる凶悪事件を起こすのは主演女優であってほしい。とすると、夫と義娘を殺すなりなんなりするのが妥当なライン。──ピュアな観客なのでこんなふうに考えるわけです。
では実際はどうかと言うと。犯行の矛先はそっちなのか! 予告で見た土屋太鳳の絶叫が全然カタルシスじゃなかった! インスリンをそこに使うか! まさかのモンペ化という着地!
う、うわー、ってなって、カメラが並行移動していって、う、うわ〜〜〜〜〜、ってなって、エンドロールに突入して、ウヒョー。でした。はい。
よくこんな映画作ったな!と、関係者の皆様に敬意を表します。土屋太鳳さんがオファーを3回断ったというのも納得です。また、ストーリーの細部に違和感はあれど、明らかに「寓話的」であるがゆえのまあ許せてしまう感もニクいところです。
土屋太鳳さんラブ
前述のとおり、わたし土屋太鳳さんが好きでして。生理的に好きな女優と言ってもいい。芳根京子さんとのW主演作『累-かさね-(2018)』も真っ先に観に行きました。
自分の感想を読み返してて知ったのですが、『累-かさね-』もキャッチコピーは「ダークシンデレラストーリー」だったんですね。まったく記憶になかった。土屋太鳳的シンデレラ二部作の誕生か。
さておき土屋太鳳さん、圧倒的女優力といいますか、わたしのなかでは「ザ・女優」っていう位置付けです。清純派から悪女までを同じ佇まいで行き来できる天性の女優的お顔立ちに魅了されてやみません。
本作でもその振り幅はいかんなく発揮されており、児童相談所に務める使命感の強い女性、運命の恋人、よき母親、そして──。もうね、ワインレッドのお召し物がこんなに似合う日本人女優さんはなかなかいないと思うのです。衣装フェチとしてはたまらぬ終盤です。
その終盤があまりに強烈でつい忘れてしまうのですが、まだまだ清純モードの序盤でも「切るなら◯◯◯◯◯だろうが!」という突飛なワードが出てきたりするので土屋太鳳さんマジ恐るべしです。
はみ出し雑感
『ミスミソウ(2018)』に次いでまた家が燃えた山田杏奈さん、かわいそう。でも居住区は2階だからそのまま住めてる、って設定が可笑しい。そこは真っ先に援助してもらいなよ!
田中圭さんのこういう役、まあハマるハマる。キレ散らかすなかで「残念です」って一瞬口調が変わるのとかも最高。本作の主要キャスト3人は全員サイコパスに適している。
悪い種子ことヒカリちゃんを演じたCOCOさん、すごいと思うより先に「大丈夫だろうか」と思ってしまう。それは他の子役さんたちにも同じく。いや役者的には楽しいんでしょうけどね。とはいえ心配にはなってしまうよね。
豪邸の雰囲気がちょうど先日観た『Swallow/スワロウ(2020)』によく似ているなと思っていたら、まさかの「異物」まで共通していて驚いた。『パラサイト 半地下の家族(2019)』感もある。ハイソな暮らしのなかで狂っていく映画、好き。
あの家、『愚行録(2017)』に出てきた別荘だ!
(2021年31本目/劇場鑑賞)