353log

主に映画の感想文を書いています

映画「愚行録(2017)」雑感

f:id:threefivethree:20191024211739p:plain

現在公開中「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督作品。原作は貫井徳郎さんの同名小説。これが石川監督の長編デビュー作とのことです。

愚行録 (創元推理文庫)

愚行録 (創元推理文庫)

鑑賞動機としましてはもちろん「蜜蜂と遠雷」が良かったから、あとは臼田あさ美さんが好きなので観たいなと(笑) 臼田さんは「蜜蜂〜」にも出演されてましたが本作のほうがよりじっくりたっぷり堪能できます!

それでですね、本作とにかく非常におもしろい映画だったため未見の方にも猛プッシュしたいなというところで、感想ぐわーっと書いてはいますけども「ネタバレなし」を心掛けました。核心には触れていないつもりです。おもしろそうかも、と思われましたらぜひご覧くださいませ〜。

あらすじ

主人公妻夫木聡は、この映画のなかで二つの面を持っている。ひとつは週刊誌の記者としての面、もうひとつは兄としての面。

記者としての主人公は、一年前に起きた一家惨殺事件を追っていた。迷宮入りの事件だったが、あらためて周辺の人物に話を聞き、真相を引き出そうとしていた。兄としての主人公は、仕事の傍ら刑務所に来ていた。妹満島ひかりが逮捕されたのだ。罪状は育児放棄だった。

仕事では殺人事件の真相を調査し、プライベートでは妹の面倒をみる。そんな彼の日々は、意外な一点に向かっていくこととなる。

面白かった…!!

タイトルからしていかにもな「どんより系邦画」の香りがするんですけど、いやはやこれは、すごく面白かったです。漢字の「面白い」でいいと思います。ミステリー/サスペンスとして、かなり楽しめる映画でした。

妻夫木くん演じる根暗な、でも一応「記者」な主人公がですね、上司に頼み込んで未解決事件の取材を粛々としているのですよ。殺された旦那さん側の同僚、奥さん側の同級生、といった具合に次々と会っては話を聞いていく。そんな日々がしばらく続きます。

ここで独特なのは、全ての話に回想シーンが付いていること。例えば臼田あさ美演じるカフェのオーナーに話を聞きに行ったとする。彼女がタバコをふかしながら大学生時代のことを語り出すと映像は当時のキャンパスに切り替わり、大学一年生の垢抜けない臼田あさ美が出てくる。これがまた、全然違う臼田あさ美が見れるのですよ。

他の人たちもそうで、一人一役ではあるんですが主に学生時代の話をしているので結構な別人になるんですね。役者さんってすごいな、というのが人数分ある感じです。

んで、この殺された一家の夫婦というのが大学の同級生だったので、主人公が聞く話は話し手が違っても「同じ風景」だったりするわけなんですよ。別々の話と思われたものがじつはひとつのところに……!!っていう、言わば「パルプ・フィクション」的な面白さがあるんです。

一見「面白い/楽しい」といった感想には繋がらなさそうな「どんより系邦画」の皮をかぶりつつ、エンタメ度もとても高い作品になっています。

見どころ

まずは妻夫木くん。こんな素晴らしい役者さんだったんだなと…。特に、劇中での口数は少ないながらもさりげなく着実に演技を重ねていたんだということに気付かされる「二度目のカフェのシーン」、んもう凄いです。えっ、これもう、めちゃくちゃまずい状態でしょ、って誰もが緊張するであろうあのシーン、そしてまあ納得できてしまうその後の展開。あれを「まあ、そうなるよね……」と思えてしまうのは妻夫木くんの積み重ねによるものなんでしょう、気付かなかったけど。

そしてまあ間違いない、満島ひかりさん。終盤の「独白(文字どおり)」のシーンなんか演出的にもピーク中のピークで、うわすごっ…!!でした。とんでもないことを独白しているのだけど、観ている感情としては「楽しい」に触れてしまうような、あの一連の流れ。惚れ惚れしてため息出ちゃう…。

あと満島さんはラストの面会シーン(リプライズ)も印象的でした。対面する妻夫木くんはそこそこ奥まっているのに、満島さんはめっちゃ前に出てくるんですよ。なんならスクリーンから出てくるぞ…?!な勢いでこっちに語りかけてくる。ここは怖かった。やべえかも本当に出てくるかも、って思った。満島ひかりが出てくるなら最高なんだけどそれどころじゃなかった(笑)

クールでスタイリッシュな映像表現の数々も必見です。「蜜蜂と遠雷」での「馬」を彷彿とさせるような「蝕まれていく」インサート映像とか、映画序盤の殺人現場のシーンとか。殺人現場のシーンは、終盤で再度その話がなされたときに自然と位置関係を把握できている自分!っていうところであのカットのすごさに気付かされたりして。

っていうか散々見てきたあのふたり、映画始まった時点で既に死んでるんだよな…。すごい不思議な感じだ…。2回観たらまただいぶ違う印象を受けるかも。

とまあそんな感じで、見どころ沢山です! 書ききれなかったけど臼田あさ美さんは大満足かつ予想以上の活躍っぷりだったし、表情のスイッチが印象的な「夏原」を演じた松本若菜さんも絶品だったし、小出恵介もかなり良かったし、見ごたえある役者さんばかり。総じてお見事な一本でした!

(2019年124本目)

愚行録

愚行録

今回はPrimeVideoの課金レンタルで鑑賞しました。

石川慶監督の最新作「蜜蜂と遠雷」は現在劇場公開中です!