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主に映画の感想文を書いています

悪い種子(1956)|その少女、サイコパスにつき

f:id:threefivethree:20190115185005j:plain 久々に痛快な胸糞映画を観ました。「悪い種子(たね)」、原題は「THE BAD SEED」。

職場の人が「そんなに古い映画は観ないけどひとつ印象深い白黒映画がある」とおすすめしてくれた作品。最高の映画と出会わせてくれたことに感謝ですが、なんだってこんなブッ飛んだ作品を観たのでしょうあの人。

あらすじ

クリスティーンは悩んでいた。8歳の愛娘ローダはとてもいい子に育っているが、いまひとつ子供らしい純朴さが足りないように思うのだ。

ある日、学校の遠足でローダのクラスメイトが事故死したというショッキングなニュースが入る。クリスティーンの心配に反し、遠足から帰ってきたローダはあっけらかんとしていた。しかし徐々に、事故とローダとの関係性が明らかになっていく。

この映画、ネタバレ禁止につき

ざっくり言うと、サイコパス少女のお話

一家の主人が一ヶ月の出張に出るところから物語は始まり、留守を預かった妻クリスティーンと娘ローダの女二人、彼女らを取り巻く近隣の人たちによって話は進んでいきます。8歳のローダはおさげが可愛い活発な少女。この子がまあとんでもねえサイコパスだったっていう映画なんですけども。やーもう、ほんと怖い。原作小説の作者が出版一ヶ月後に死んでるのもめっちゃ怖い。

スリラーやサスペンスへの耐性は比較的ついてきた気でいたんですが、これは久々に背筋が凍り、指の間から画面を見ました。といっても何か心臓に悪い映像が出てくるわけではないのです。徐々に見えてくる真相、回収される伏線、直接見せられることはなく想像力に委ねられた衝撃的展開の数々、最後まで天真爛漫な少女、そして“悪い種子”とは?? いろんな要素に追い詰められてただただ怖くなってきちゃうのです。

主人公一家のリビングを中心に展開していくワンシチュエーションものな本作。いちばん動きがあるのはドアでしょうか。次から次へといろんな人が出入りするこの感じがすごく舞台作品的だなと思ったら、もともとブロードウェイで上演されていた舞台を同じキャストで映画化したものなんだそうで、大いに納得。ヘイズコード対策で付け加えられたというラストの妙なカーテンコールも、舞台と思えばありかな。

伏線回収と書きましたが、130分と比較的長尺なわりに無駄なシーンのない映画です。例えば冒頭、いつもよくしてくれる大家のおばちゃんの前でタップを踊ってみせたローダは、「アステアみたい」と褒められます。もう伏線は張り始められています。「ジンジャーじゃないんだ」なんて思っている場合ではないのです。よくできてます。

「情婦(1957)」よろしく最後に「ネタバレ配慮してくださいね」のテロップが出るので(情婦のほうが一年後ですけどね。この頃こういうの流行ってたんでしょうか)あまり内容には触れないこととして…、気になりましたらぜひご覧くださいませ。とんでもねえ映画だな?!となること必至でございます。

(2019年4本目)

悪い種子 [DVD]

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TSUTAYA DISCASでレンタルしました。これは買ってもいいかも…。胸糞映画、好き…。

そういえば同年公開の胸糞映画で、石原裕次郎デビュー作の「狂った果実」なんてのがありますが。狂った果実、悪い種子。めっちゃ語呂よくないですか。