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Netflixオリジナルドラマ「保健教師アン・ウニョン」雑感|おもちゃの剣で見えない何かと戦う先生の、ふんわり学園ミステリー

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Netflixで配信されている韓国ドラマ『保健教師アン・ウニョン』を観ました。いまのところシーズン1のみで、平均50分×6話とコンパクトな作品です。原作は韓国の人気作家チョン・セランさんの小説『保健室のアン・ウニョン先生』。チョン・セランさんといえば以前読んだ『フィフティ・ピープル』が非常におもしろかった作家さんですが、今回この原作小説に関しては未読の状態で鑑賞しました(先ほどポチッと購入)。

保健室のアン・ウニョン先生 (チョン・セランの本 1)

保健室のアン・ウニョン先生 (チョン・セランの本 1)

主人公のアン・ウニョンは、普通の人には見えないものが「見えてしまう」いわゆる霊能力者。そんな彼女が保健室の先生として勤務する高校では、あらゆるものが「見え」まくり。どうなってんのよ〜〜と困り果てながらも「おもちゃの剣」で日々そいつらに立ち向かうのですが、次第にもっとキナ臭い秘密が見えてきて……、といったお話です。

このドラマはかなりふんわりシュール系で、派手な霊能力バトルがあるわけでもなく、いつも決まって怪訝な顔つきのアン・ウニョン先生がもうなんなのよ〜〜とおもちゃの剣をぺしぺしするような、きわめて独特な空気感の作品になってます。とにかく妙な雰囲気が漂っているため最初こそ戸惑うのですけど、意外と惹きつけてくるものがありすぐに入り込めました(音楽もすごく不思議なムードで、浸らせてくれる)。

物語が進んでいくと、次第に内容は「自分自身との付き合い方」みたいな方向にシフトしていきます。「あ、これは、つまるところメタファー…」などと考えかけるも、どちらかというと「考えるな、感じろ」系の作品なのかもしれません。観終わったとき、漠然と何かそこそこ大きなものを得たような気がしました(感想までふわっとしてしまう)。きっとこれ、観た人それぞれが自分の物語と思えるよう、あえてふわふわ仕上げにしているのだと思います。この世界観が原作だとどう描写されているのか、読むのが楽しみです。

アン・ウニョンを演じるのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)』『82年生まれ、キム・ジヨン(2019)』などのチョン・ユミさん。『キム・ジヨン』でもある意味「見えてしまう」系キャラでしたよね、こういう役どころがすごく合う俳優さんです。また『キム・ジヨン』も本作もベストセラー韓国文学の映像化作品ですから、多くの人が「取り立てて特徴のない主人公」として思い浮かべる人物像と相違のないような、身近に感じられる顔立ちであるとも言えるのでしょう。

もうひとり主役級なのが男性教員のホン・インピョ。こちらも人気俳優のナム・ジュヒョクさんが演じます。彼は学長の御曹司という韓国ドラマっぽい設定を持つ反面、脚に障害がある真面目な好青年というキャラ造形になっているのが新鮮です。アン・ウニョン先生とホン・インピョ先生はふんわり好き合っており、一応ラブストーリー要素もあります(手を繋ぐと充電できるのだ)。

高校の生徒たちが曲者だらけなのも楽しいところ。美男美女をキャスティングしていないのがよいですし、制服がエヴァっぽいのも垢抜けなくていい感じです。全6話と短尺ななかでもそれなりに描きこんでおり、特に後半登場する「ダニ喰い」の少女にまつわるエピソードは妙ちきりんなのになぜかグッときてしまうこと必至。

寝ながらスマホでゆるゆる観るのにちょうどいいくらいの作品なので、濃い味のドラマにちょっと疲れたときなどお口直しにいかがでしょう。吹替もあります(ちなみにチョン・ユミさんの吹替はマイスイート坂本真綾さん。『新感染』でも吹き替えてたので『キム・ジヨン』も担当してるんじゃないかなと期待してるんですが果たして。と言いつつ本作は原語で鑑賞)。