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映画「ハッピーエンド(1999)」感想|おじさんヒロインのチェ・ミンシクが可愛い

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シークレット・サンシャイン(2007)』からのチョン・ドヨンさんつながりで、韓国映画『ハッピーエンド』を観ました。ざっくり言えば不倫もののメロドラマで、公開当時はチョン・ドヨンさんの大胆なベッドシーンが話題になったそうです。

確かにもう、始まって早々ごあいさつがわりの情事。塗れ場ありきの映画って感じであんまり好印象ではありませんが、まあ見させていただけるものは見させていただきましょう(ちなみにチョン・ドヨンさんの濡れ場ということならわたしは『ハウスメイド(2010)』を推します)。

チョン・ドヨンさんが愛人とお楽しみな頃、世の中の哀愁を全て背負ったかのようなチェ・ミンシクさんは古本屋で立ち読みならぬ座り読み。キャストをよく見てなかったもんで、彼が出てきた瞬間「チェ・ミンシクだ!!」って大喜びしてしまいました。最近気付いたんですけど韓国のおっさん俳優ズのなかではミンシク氏が一番好きかもしれない。

彼はどうやら失職中で(あらすじによると銀行勤めだったようなのでIMF危機絡みの解雇とかなんでしょうか)、チョン・ドヨン演じる妻が働きに出ている間、幼い愛娘の世話をしたり、古本屋で恋愛小説を読み込んだり、家で昼メロを観て泣いたりしています。なんかとにかく、可愛い。しょんぼりした無職おじさんっぷりがどうしようもなく可愛い。そのあとの展開を考えてみても、本作のヒロインはチョン・ドヨンではなくチェ・ミンシクな気がしてなりません。

カメレオン女優チョン・ドヨンはこの頃からすでに「二つの顔」を見事に使い分けていて、まあ本作に関しては演技というよりメイクや服装によるところが大きそうですが(眉がなくなってようやく、ああチョン・ドヨンだなあっていう)、こういう作品を経て多分「こういう役」が増えていったのでしょうね。

本筋とは関係なく気になったのは、夫婦が住むマンションの間取り。リビングの感じが『82年生まれ、キム・ジヨン(2019)』に出てくるマンションとそっくりで、韓国の子育てファミリー層向けマンションってああいう間取りが一般的なのかなあと。お話的にもちょっと『キム・ジヨン』をバッドエンドにしたような話でしたし。

……バッドエンドって言っちゃいましたけど、はい、物語はだいぶ唐突な展開を見せていきまして、正直「えー」でした。インパクトはあるけどなんか不憫。それをやるならアイツにしたほうがほうがせめてカタルシスは生まれるのに。まあそこに至るまでのアリバイの作り方とか、そういえば推理小説読んでたわとかの何気ない伏線はそこそこ面白いですが。チェ・ミンシクをヒロインだと思えば一応楽しめはするかな、って感じでした。

余談としては、一番最初のシーンがめちゃめちゃキューブリックな一点透視図法になってて、無駄にわけありげだな、初監督作品らしいしきっとやりたかったんだろうなと観ていたらその少し後で愛人の部屋に『時計じかけのオレンジ(1971)』のポストカードが飾ってある、なんていう分かりやすい案件を発見しました。以上です。

(2021年12本目/TSUTAYA DISCAS

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