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映画「NOPE/ノープ(2022)」感想|どうにかUFOを撮りたい! 音効特盛のエンタメ快作

ゲット・アウト(2017)』『アス(2019)』などのジョーダン・ピール監督最新作『NOPE/ノープ』を観てきました。ようやく秋めいてきて、久しぶりの平日レイトショー! 生きてるって感じがする!


なんか妙に細長い、映画「NOPE/ノープ」本国版ポスター
なんか妙に細長い、映画「NOPE/ノープ」本国版ポスター


さてこちら、ジョーダン・ピール作品であるのはもちろんのこと、何か得体の知れないSF系ホラーな予告にとても期待しておりました。そして見事に期待以上でした。ってのと、ジョーダン・ピール史上最高にエンタメ寄りの快作でした。『未知との遭遇(1977)』とかお好きな方は、どうか劇場でやっているうちに観ていただいたほうがいいと思います。

好き要素が多いので、ちょいちょい分けながら書いていきましょう。

そんなに飛ばして大丈夫か??

ユニバーサルなどのロゴをバックに、いきなり始まる音声劇。家族の会話? シットコム? 早速誰かが口走る「ノープ!」=「あり得ない!」。こりゃ楽しい予感だな〜と聴いていると、とても音声からは想像できなかったような光景がパッと広がり、理解に苦しむ。えっ? えっ……???

場面は変わり、広大な牧場と馬。調教師の父親と息子の何気ない会話。突然の「変な音」。全く絵面にそぐわない、同じ次元とは思えないような音。そして、最悪の奇跡。予告で見た、あのシーン。

めちゃめちゃ掴みいいけど、開始5分と経たずにそんなに飛ばして大丈夫か?? 130分もある映画、尻すぼんじゃ嫌よ??

そこから今度はまたがらりと変わり、ハリウッドの撮影現場。「世界初の映画」と「黒人」についての講義が始まり、ジョーダン・ピール作品の幕開けに身を引き締める。果たしてどう展開していくのか——。

一貫して「UFOを撮るぞ!」な映画

予告だとディザスターもの的な、パニックもの的な雰囲気のあった本作ですが、蓋を開けてみれば劇中の人物たちがしようとしているのは「撮影」。なんとかしてあのUFO的なやつを撮るぞ!というのを最後までずっとやっている映画でした。

たまらんのが「銃器の代わりに撮影機材がひたすら出てくる」ところ。予告で印象的だった防犯カメラに始まり、ありとあらゆるカメラが登場します。とある王道のホラーシーンにて、さもホルスターの銃に手をかけるかのような動きで取り出したのも、やはりカメラ。さらには極め付けの「手回し○○○○」に爆笑。ホイテ・ヴァン・ホイテマ! ぜひ映画館の最高峰鑑賞スタイルでご覧ください。

ラストの撮影方法もおもしろかったなあ。わたし馴染みなかったんですけど、ああいうの海外のテーマパークなんかにはあるんですかね。彼女はおそらく歴史に名を刻んだはず。

音響効果の見本市

特筆したいのが音響効果。とにかく音がすごい! 音でどれだけ盛ってんだ?!って感じの映画です。轟音、怪音、そこからその音が聞こえるのはおかしい「ノープ」な音の数々。不快だけどちょっと気持ちよさもあるASMR的パリパリカサカサ音もよかったですね。

また、「停電」という設定を活かしてしょっちゅう「無音」が訪れるのもポイント。最初のレコードはともかく、最終的にはカーステレオや携帯までグォォォン…とピッチダウンしていく「いやそうはならんじゃろ」なケレン味、好きでした。なんだろ、それこそ『TENET(2020)』みたいなノリかな。

ケレン味というところでは、ツボだったのが「アレの内部」。そこまでゴリゴリの最先端VFXで作り込んできたのが、明らかにこれはただの布かなんかだろっていうB級C級映画のオマージュみたいなローテク悪趣味シーンにいきなり切り替わって、でも音響効果のせいでめちゃめちゃ気味は悪くて。映画だなあ!って思いました。

未知との遭遇2022

本作、どんな映画かと聞かれたらずばり未知との遭遇2022』と答えます。そう、言わずと知れたスティーヴン・スピルバーグ監督の名作『未知との遭遇(1977)』。なんといっても、想起するのはまずこれ!(実際、監督のインタビュー等でも筆頭に挙がってきます)

引き続き音響効果の話になりますが、以前リバイバル上映で『未知との遭遇』を劇場鑑賞したとき、その「音」にとにかく感動したんですよね。自宅の環境じゃ絶対に(少なくともアパート暮らしでは絶対に)体験できなかった「音との遭遇」感。音響効果マジすげえ、映画館マジすげえ、と目ん玉ひん剥かれたものでした。本作『NOPE』にもそれはあります。

また『未知との遭遇』のデビルズタワーみたいな、畏怖の念すら覚える巨大な何か、みたいな愉しみも各所にありますね。アレはもちろん、雲とか巨大人形とかね。『メッセージ(2016)』なんかお好きな方にも多分おすすめですね。

その他いろいろ
  • ティーヴン・ユァンの「あの感じ」大炸裂! また子役の子もめっちゃ似てる〜〜〜。ゴーディとの対面シーン、近年観た映画でいちばん怖かったかもです。スクリーン越しに死を覚悟した。

  • リズ・アーメッド似の家電量販店にーちゃんが好きだった(ありゃ設置工事必要だよ!)。いちばん『未知との遭遇』的な末路を辿るハリウッドのカメラマンも、短い登場時間ながらわりと愛せる人でした。フィルムごとどっかに吐き出されてたらいいけど。

  • スタイリッシュだった「アレ」がどんどんフカヒレみたいになっていくの気持ち悪くてよかった。なんだっけなこの既視感、と思ったらエヴァだそう。ああ!!はいはい!!!!って感じ。こんなところに庵野が出てくるとは……。まごうことなきAKIRAもありましたね。それで言うと「雲」もラピュタだったりすんのかな。

  • ポスターにも写っているフラッグ、わたし予告の時点からあれ『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2(1989)』ラストでデロリアンが雷に打たれるシーンを連想してたんですよね。はらはらはらってフラッグが空から落ちてくるの。オマージュなんじゃないかなあ、違うかなあ。


あ、そうそう、「そんなに飛ばして大丈夫か??」についてですけど、わたし的には最後までずっと面白かったです! あんな飛ばしつつも130分持たせるのすごい! 『NOPE/ノープ』かなりのヒット作でございました。

(2022年150本目/劇場鑑賞)

こっちじゃなくて最新予告のほう、本編にないシーンが入ってるような。