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主に映画の感想文を書いています

ゲット・アウト(2017)

公開当時よくタイトルは目にしていたものの未見だったので、レンタルで鑑賞。今思えば、あんなに目にしたわりによくネタバレを見なかったなと…笑 つまり、未見の方はぜひネタバレを入れずにご鑑賞ください。

あらすじ(ネタバレなし)

付き合って数ヶ月のカップル、クリスとローズ。両親にクリスを会わせるべく実家訪問を計画するローズだったが、アフリカ系アメリカ人のクリスは白人家庭であるローズの実家で「招かれざる客」になるのではないかと不安を隠せない様子。「オバマに3期目があったらパパは絶対投票するわ」となだめながら、気の進まないクリスを助手席に押し込んでローズは車を走らせる。

以下ネタバレします。



感情のままに雑感

ざっくり言っていいですか、ヤバい!! なにこれ!! こんな映画だって聞いてない!!

黒人が主役なのはわかってたので、「ムーンライト」か「ドリーム」か、くらいのイメージで観始めたんですよ。オープニング、いきなりポップな音楽とともに人がさらわれるんですよ。急でビビるんですよ。タイトルが出て、黒人と白人のカップルがありがちな会話をしている。うん、実家へ行ってやっぱり何かあるんだろうなとは思うんですよ。車中でたわいもないイチャコラを見せられるのも、まあいいんですよ。いきなり鹿が飛び出てきてハネるんですよ。急でビビるんですよ!!!

このあたりで確信。この映画、予測できないぞ…と。ていうかジャンルとか見てなかったけどこれ、どんな映画だ? 明らかにドラマ映画の空気感ではないぞ?と。まず劇伴からしてすげえ嫌な感じだぞと。

右ヘッドライトに鹿の血を浴びた車が実家に到着し、歓迎を受けるもその背後から不審な視線。心理学者だというお義母さんも明らかに笑顔が薄ら気持ち悪い。確実に、何かが変

きわめつけは初日の夜。目が覚める。ドアが開いている。出てみる。誰かが後ろを通る(ヒッ)。庭に出てみる。黒人使用人1が正面から猛ダッシュしてくる(ヒッ!!)。逃げつつ振り返ると黒人使用人2が窓から笑顔で見ている(ヒィィィッ!!??)。むり!もうむり!なんだよホラーじゃんこれ!!言ってよ!!!


これ、ものすごい貴重な体験ができたのかもしれないなと思っているんですけど、ホラー映画だと思わずにホラー映画を観ると超怖いっすね…。ある意味、可哀想な主人公クリスとまったく同じ立場で観ることができたのかもしれない…。是非この体験は多くの人にしてみてもらいたい…!

信じ難いんですが、この映画一応「コメディ」の枠にもあるらしいんですよ。監督自身が黒人のコメディアンで、日頃から人種差別の自虐ネタをウリにしてるような人らしいんですね。だからその人が撮ったホラー映画だと分かっていれば、コメディとしても観れるみたいなんですよ。コメディかどうかは別としてもまあ確かに2回目からはぎゃーぎゃー言いながら楽しく見れるのかもしれない…。


テイストとしては最近流行りの「シャイニング(1980)」に近いと思います。初見では指の隙間から観ないといけないくらいビビるけど、2回目からはちょっと「ネタ」の部類としても扱えるような、そんなところがあります。名作の香りがします。車の鍵とかも、ねえ〜〜〜(あのシーンの背筋ゾワッが半端ない)。

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「何かが変」という不穏感は同じくキューブリック監督の「アイズ・ワイド・シャット(1999)」も近いニュアンスを持っていますね。観ながらそんなことを思っていたら劇中で「アイズ・ワイド・シャット的状況だぞ」みたいな台詞が出てきて、なるほど全てを承知しました、という気持ちに。他にもキューブリック感は各所にあるかな〜と思います。催眠術で沈まされたとこの表現とか。

コメディと言うのならば

なんかどうもこのテの作品では「メッセージ性」を読み取らないといけない雰囲気が漂っているように思うんですが、わたしとしてはこの作品、黒人である監督のコメディアンとしての面も踏まえて「人種差別問題をうまくミスリードに利用したスリラー・ホラーでありエンターテインメント作品である」という印象を受けました。プロモーションで使われていたっぽい「サプライズ・スリラー」という言葉、おもしろいですね。

なお、てっきり予告ではそこまで出してないのかな〜と思って予告編観てみたら普通にモロ出ししてますね。サプライズになってないじゃん! 未見で、しかも冒頭で忠告したにも関わらずここまで読んでしまわれた方は予告編すら観ないで鑑賞されることをおすすめします(笑)

劇中で「まるで人生は悪趣味な冗談だ」と誰かが言いました。そんな映画だと思います。何度ヒィッと叫んだかわからない悪趣味な映画でしたが、後味としては最高に面白かったです!

(2018年87本目)