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韓国ドラマ「愛の不時着」10話〜最終話のネタバレ雑感

Netflixで配信されている韓国ドラマ『愛の不時着』、観終わりました。まず最初に、この記事はネタバレ前提で書いております、ご注意ください。なんとなく気になってるんだけどそれどんなドラマ?っていう方はこちらの記事をどうぞ。

では早速ネタバレへ。回避中の方は、ポスター貼っておきますのでその間にお逃げください。

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折り返し地点と思われた9話で一旦止めて上記の記事を書き、一週間ほどおいてから後半を観始めたわけですが、予想通り10話からは物語の舞台がガラッと変わりましたね。無事韓国に帰れたセリ、そしてあまりにあっけなく再会するふたり。おいおいそんな簡単に38度線またげるんかい! そう思ったのは視聴者だけではないようで、セリも「こんなにすぐ来られるんだったら私の苦労はなんだったの?!」とすかさず逆ギレしています(このツッコミのおかげで視聴者的には一安心)。

とはいえ、涼しい顔してじつはそんな簡単に来れたわけでもなかったジョンヒョク。24時間のほふく前進、愛です。思い返してみると、セリは空から、ジョンヒョクは地下からそれぞれ普通じゃない方法で境界線を超えて来ているんですよね。物語自体もここを境に、鏡写しのような展開を見せていきます。北チームがセリの家に泊まる、南の地にうまく馴染んで束の間の楽しい日々を送る、そして、事故で生死の境を彷徨う……。

止められるはずもないラスト1話

いじわるなクリフハンガーは比較的少ない本作ですが、さすがにラストはいじわるでした。心停止エンドなんて。しかもダブらせ。そんなそんな、いくら「韓国ドラマはラストで主人公が死にがち」だからって、これは例外でいいじゃん?! 見事に乗せられて、23時も回ろうというのに最終話観始めてしまいましたよ。しかも2時間くらいあんの。アホかと。最低限セリの無事だけ確認したら止めて寝ようと思ったけどそういうわけにもいきませんでしたよ。

それにしてもラストの生死彷徨いはほんと、いじわるでしたね。まさか2度も彷徨わせるなんて(これも韓国ドラマあるあるなんでしょうか)。それも、仮にセリが死んでしまったとして、ジョンヒョクにとっては「死なせてしまった」から「殺してしまった」にぐるっと変わるような意味合いの違いですもんね。いやーあれは、えげつない。まあ、なんやかんやコッテコテ鼻ホジのハッピーエンドに落ち着いてくれてよかったです。

ダンとスンジュンの話をしよう

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はい。ところでわたしはこのふたりを推しておりました。まずとにかくダンめっちゃ可愛いんだもん。彼女の魅力に気付けたスンジュン、お前ほんといいやつ。ダンの魅力を100挙げるシーンでスンジュンが言う「節度のある頑固さ」っていう表現がめっちゃ好きです。要はツンデレなんだろうけど、なんて粋な言い方なの。節度のある頑固さ。あ〜、いい。

そんなわけで正直あのトマト栽培者サイドの恋は一旦ほっといて、とりあえずこのふたり、幸せになってほしいと思ってました。だもんで悲しい。でもまあ、仕方なくはあるというか、スンジュンは実際に犯罪者だし、そうそう幸せにはなれないはず。これでよかったんだと思う。いや、でもでも、救急隊員さん無処置にもほどがあるでしょ! これが医療レベルの南北差か! つらいな!

トマト栽培者たちの話も一応しよう

結末まで観るとなおのこと、本作におけるセリとジョンヒョクのロマンスは『ビフォア・サンライズ(1995)』からの『ビフォア・サンセット(2004)』だったなと思いました。刹那の極み、そして再会。『不時着』ファンの方には『ビフォア』シリーズ、すごくおすすめです。ふたりの『ビフォア・ミッドナイト(2013)』までは見たくないかな…。

ところでジョンヒョクはまあ、犬っすよね。コロコロ転がされて、キョトンとして。「ヒョクちゃん、嫉妬してるの?」なんて(あの台詞、キュンときた〜〜〜)。セリ、ほんといい飼い主。でもあの犬、思い出作り禁止!って言われてんのに次々と思い出作りよるからにいい加減にしろよお前〜〜〜って感じでしたね。メールとかあんなの、耐えられない。あんだけマメなこと仕込んでおきながら再会は運命任せとかさあ。最後の一通で約束したげなさいよ、も〜〜〜。

時制の扱い方がトリッキー

いきなり違う話をしますと、このドラマすごく時制の扱い方、要は回想シーンがトリッキーだと思っていて。ポストクレジット的なところで真新しい回想を入れてきたり、アバンタイトルで前回のクリフハンガーを繰り返してくるのかと思いきや別アングルの回想だったり、同じ場面の回想なのだけど出てくるたびに解像度が増していくような作りになっていたり、「じつは」のチラ見せと、それによるカタルシスの小出しがいちいち巧みなんですよね。

前半の記事にも書きましたがそのおかげもあって毎話毎話ストレスフリーに楽しめて、「運命」に陶酔していける。そんなところがこの作品のヒットに貢献していると思いますね。

すごくキナ臭い状況下でホームコメディをやっている

このドラマはとにかく意外なほどコメディ要素が強いわけですが、どれだけほのぼのとしたホームコメディが繰り広げられていようとも忘れてはいけない、彼らは「一緒にいるだけで違法」なのだということを。ふとそれを思い出しては、全てが刹那的に見える。恋愛とか以前の切なさ悲しさがやはり常に刺さってくる作品でした。現代を舞台にしてこの物語を描けてしまうのは韓国映画・ドラマの強みでありましょう、しかし本作のファンが望む本当のハッピーエンド、それは『愛の不時着』がない世界であるとも言えます。

とそんな感じで、『梨泰院クラス』に続き『愛の不時着』も思いっきり楽しませてもらいました。今回キャラ語りはしなかったので主要人物以外のことをほとんど書いていませんが、言うまでもなくみんな大好きですし、みんな幸せでいてくれるといいなあっていう、そんな気持ちです。特にダンね。ダンには最大限の幸せが降り注ぎますように。

(ふと『梨泰院クラス』完走後の感想を読み返したら全く同じ類の願いで締めてあって、わたしの感情移入先はブレないなと思いました)