「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995)」の、9年ぶりに作られた続編です。前作の9年後というリアルタイムな設定になっています。主演は変わらずイーサン・ホーク&ジュリー・デルピー。
あんな甘酸っぱいロマンスの続編、野暮になってしまわないのでしょうか。心配しつつも観てみました。
あらすじ
あれから9年。ジェシー(イーサン・ホーク)は作家になっていた。各国をまわるプロモーションツアーの最終地パリで、彼の前に「彼女(ジュリー・デルピー)」が現れる。あの日交わした約束を、ふたりは果たせていたのだろうか。夕暮れまでのわずかな逢瀬、9年間の空白が語られていく。
続編の最適解
お見事っ!!! お見事でした!!! 素晴らしい。もはやリチャード・リンクレイター監督に絶対の信頼を置く他ない状況に置かれております。
まずは冒頭、9年越しの再会、それもあれだけ美化された記憶との再会というハードルを超えなければいけないシーンですよ。──パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店でジェシーが自著の取材に答えている。どうやら「あの日」のことをフィクション小説にしたらしい。
これはあなたの実体験をもとにしたものですか? 作中の彼女は実在する人物ですか? ふたりは半年後に再会できたのでしょうか?
「それを言っちゃ野暮だよ」と笑いながら対応するジェシー。狭い店内をカメラが切り取っていく。記者。スタッフ。ジェシー。記者。セリーヌ。…セリーヌ?!
は〜! こんな淡々と、かつ衝撃的に登場させるとは。そうきましたか。うわ〜〜。この時点でわたしは大満足しておりました。
あえてメタ的視点を使い、その先を描くのって野暮だよねわかってるよ、と「懸念の共有」から入る作りも非常に配慮が行き届いていると感じました。実世界で9年も経っていれば完全にみんなの物語ですからね。
んでもってここは、こう言っちゃあれですが、でもぶっちゃけ一番大事なところでしょう、美化された記憶との再会、つまり10年近く経ってもあの娘は変わらず魅力的なのかどうか。結構心配していたところでございました。杞憂! なんだこの、ジュリー・デルピーさんってば魅力のバケモノか! 幻滅しなさがすごい。
今回も全編会話劇で、やはりタイムリミット有。ビフォア・サンセットってことは夕暮れまでか…と半日程度を想像するかもしれませんが、実際はおそらく1〜2時間程度という短さ。それを80分尺で描いているという美しさ! 監督! 好きです!
あの日ほどの刹那感は漂っていなくて、飛行機までの時間ちょっと話そうよという割り切った大人の感じ。話題も思想や現実が生々しく出てきて、あの日ほどの楽しさはない感じ。前より増えちゃった地雷なども踏みながら。でもそれが、いいんだなあ。
そんでね、終わり方がまたセコいんですよ。前作は出会いと別れがイベント的にはっきりしてたんですけど、本作はいつの間にか始まっていつの間にか終わってる映画なんですよ。フェードアウトがしっくりくる曲ってあるけど、フェードアウトがしっくりくる映画っていうのもあるのですね。
とにかく、ラブストーリーの10年後を描いて幻滅させないというのはすごいことだと思います。10年間その魅力を磨き続けていたキャスト、きっと構想をずっと練っていたであろう監督、関係者たちの継続的努力なしにはこの見事な続編、実現しなかったことでしょう。
そして繰り返しになりますが、9年越し、満を持しての続編をたったの80分という尺にふわっと収めてくれた監督の英断と手腕、ほんっとに素晴らしいです。さらなる続編「ビフォア・ミッドナイト」も素敵な作品であることを願いつつ…次いってみよう!
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