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映画「リバー、流れないでよ(2023)」感想|貴船で2分のタイムループbyヨーロッパ企画

クーラーのリモコンを取り戻すために「昨日」へタイムスリップする『サマータイムマシン・ブルース(2005)』からの魔改造メディアミックス『四畳半タイムマシンブルース(2022)』、そして「2分後」の自分と話せてしまう不思議なテレビが巻き起こす『ドロステのはてで僕ら(2020)』など、小さなスケールの「時間SF」を多数生み出してきた劇団「ヨーロッパ企画」による新たなミニマム時間SF映画『リバー、流れないでよ』下北沢トリウッドにて観てきました。本作はトリウッドが製作配給のため、一日中これしか上映していない「専用劇場」になっており、演劇っぽくて新鮮でした。

「また2分。」というキャッチコピーがダブルミーニングで示しているように、本作のミニマムな単位は前作『ドロステ』から引き続いての「2分」。しかも今回のギミックは「タイムループ」という大ネタ中の大ネタです。つい最近にも『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022)』がヒットしたばかり、みんな大好きな、逆に言えばみんな目が肥えてハードルが高くもある大ネタ。さてどんなもんでしょうか、とやや身構えながらの鑑賞でしたが、さすが面白かったです!


映画『リバー、流れないでよ』ポスター
映画『リバー、流れないでよ』ポスター


舞台となるのは京都・貴船老舗料理旅館ふじや。ランチ営業もそろそろ終わり、客室を片付けて休憩に入ろうかなというタイミングでループが始まってしまいます。まず気持ちがいいのは、2周目にして早くも「みんなして」「勘付いて」くれる話の早さ。そらそうです、これだけタイムループものが溢れる昨今、こちとらリテラシー高めですから、映画の中とていつまでも気付かないようでは困ります。そして、旅館というサービス業ならではの「不測の事態におけるお客様対応」の可笑しさ。これは新鮮! なるほど、この方向で80分やっていくのかなと思うも、さらに意外な甘酸っぱ切な展開が待っていたりもして。主人公・藤谷理子さん(出身地を調べてびっくり!)の圧倒的ヒロイン力による満足度も高く、いいもの見れたなーという気持ちでいっぱいに。

今作は『ドロステ』と比べてもかなりクオリティが上がっていると感じました。貴船というどこか浮世離れした地と、思わず間取り図を描きたくなる複雑な構造の旅館を舞台としていること。ループと言いつつ勘付くのが早いおかげで実際「ループ」する場面はほぼなく、つまりは『ドロステ』のような「同じお芝居を重ねる」必要もほとんどないであろうこと。さらに、とある不都合な自然現象を「世界線」の一言で見事に(かつ、わくわくさせられるかたちで)解決してしまっていること。等々、とにかく「上手い」です。

上映中は、演劇のまち下北沢という地ゆえかナチュラルな笑いが起きることも多々。ほぼ単館だった頃にユーロスペースで観た『カメラを止めるな!(2017)』を彷彿とさせる映画体験でした。