念願の! 「長岡花火」こと「長岡まつり大花火大会」へ行ってきました。
コロナ禍において2年連続で開催中止となっていた長岡花火。しかし2022年、無料観覧席をなくし人数制限をしっかり施したうえで遂に復活! 例年よりも席が限られているため先行抽選では玉砕し、先着の二次発売でどうにかゲットできました(なぜか河口湖駅でチケットぴあの画面と睨めっこしました)。
大前提として、そもそもなぜわたしが長岡花火に惹かれているかというと、大林宣彦監督の映画『この空の花 長岡花火物語』のせいです。
語れば長い話なのですがかいつまむと、2020年4月、大林監督の訃報をきっかけにわたしは初めて大林映画に触れ、そして想定外に心酔していくことになります。なかでも晩年の代表作とされる『この空の花 長岡花火物語』はそのものずばり実在する「長岡花火」の物語。映画公開後は「この空の花」と題した花火の演目も毎年打ち上げられており、大林ファンなら行くっきゃないイベントです。
でも言わずもがな、恨めしいことに時代はコロナ禍へ突入。長岡花火は開催中止となり、大林監督のお別れ会すらできず(未だにできていませんね)、にわかファンにとってはやり場のない気持ちを煮込み続ける日々だったのでした。そんなところに、今年は遂に!!っていう経緯となります。
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まあ正直もうひとつの大林宣彦的聖地巡礼レポート「尾道探訪記」もまだまだ書き途中だというのに後ろめたくはございますが、目の前のことから片付けていこうぜっていうことで、今回はさくっと(さくっと?)1記事で書いていきたいと思います。
もくじ
- 綱渡りの朝
- 驚きのアオーレ長岡
- 映画『この空の花』ゆかりの地を巡る
- 長岡戦災資料館
- 山本五十六記念館
- 地面が赤い
- 平和の森公園
- 水道公園
- 長生橋
- 長岡花火(2022/08/03)
綱渡りの朝
2022年8月3日。異常な猛暑が日本を襲うサイテーな夏。すっかり「雨」というワードを忘れかけていたところ、この日に限って新潟に大雨警報が。暑さ対策しかしていなかったので、早朝のニュースを見ながら大慌てで雨用の荷造りに変更。いろいろ買ったけど全部置いていく。空き巣にひっくり返されたような部屋になる。
新横浜〜東京間を新幹線でショートカットするつもりでギリギリの時間に家を飛び出ると、今度は新幹線が人身事故で止まっているという。青ざめる。が、なんとか、なんとか再開してくれたのでこだまに乗り込み、東京駅へ無事到着。満席の上越新幹線で長岡へと向かう。汗だく。11時ごろ、初めての長岡へ到着。はい、ではまいりましょう。
驚きのアオーレ長岡
「アオーレ長岡」という市役所併設の施設が駅寄りのイベント会場になっているようなのでまず向かいました。そこまでの長岡はよくある地方都市でしかない感じでしたが、このアオーレはめちゃめちゃおしゃれで、めちゃめちゃ盛り上がっていて、完全に夏フェス! ここで夕刻まで時間をつぶすのがおそらくおすすめプランです。
ちなみにこの建築、なんか既視感が……と思ったら隈研吾案件。開業から10年が経っているとはとても思えない、とにかく「きれいでテンション上がる」系スポットなので必ずお立ち寄りください。クーラーの効いた屋内休憩所も、清潔なお手洗いもございます。
映画『この空の花』ゆかりの地を巡る
花火の時間までだいぶ時間があるため、映画『この空の花 長岡花火物語』に関連した場所を歩ける範囲で巡ってみることにしました。
長岡戦災資料館
駅から歩いてすぐの場所にある「長岡戦災資料館」。『この空の花』劇中では、河川敷で焼夷弾の残骸を見せてもらった主人公が紹介を受けて訪れる施設。目立たない場所に大林監督のサインあり。
現在8月1〜3日の固定日開催となっている長岡花火は、そもそもが昭和20年8月1日「長岡空襲」の慰霊・復興として始まったものでした。ここではその長岡空襲についての資料展示と(焼夷弾も触れます。重かった…)、3階へ上がると戦災受難者の遺影展示や、模擬原子爆弾「パンプキン」の実物大模型などを見ることができます。
資料館のリーフレットには、『この空の花』で富司純子さんが演じる「元木リリ子」のモデルであり劇中にも本人役で登場する七里アイさんのお話が。また、遺影展示には亡くなられた幼い娘さんの姿も確認できました。
模擬原子爆弾投下地点跡地へのマップなども置いてあるので最初に立ち寄るのがよさそうです(投下地点、歩いて行くにはやや距離がありそうだったため今回は諦めました)。
山本五十六記念館
山本五十六生誕の地ということで、生家から墓までさまざまなまつわるものがあります。この「山本五十六記念館」は、目玉展示である「長官搭乗機の左翼」にスポットが当たるかたちで『この空の花』劇中にも登場します。
「長官搭乗機の左翼」すごかったです。実物から放たれる、圧倒的な何か。ニューヨークの9.11ミュージアムで消防車やビルの残骸などを見たときのことを思い出しました。また、翼の一部から察すると長官搭乗機が想像していたより遥かに大きかったことにも驚きました。
ここでは、なぜか長岡花火のポストカードを数点購入。あと、いま自分の過去記事を読み返していたら山本五十六の生家はロケ地になっていた……。入ればよかった……。
地面が赤い
初めて長岡に降り立って驚いたこと。地面が錆びて赤い。なんじゃこら、と思ったら、雪を溶かす用の散水パイプが関係した赤錆びなんだそうです。あらためて『この空の花』を観てみると、確かにそこかしこ赤い。てっきり大林映画的な色味なのだと思い込んでいたというか、気にもしていませんでした。行ってみないと分からないこと、ありますね。
平和の森公園
『この空の花』劇中で、舞台「まだ、戦争には間に合いますか?」が上演される公園。これ、感動しました。と同時に、劇中のイメージよりもだいぶこぢんまりとした場所でびっくりしました。あらためて映画でチェックしてみても、いや、なかなか信じがたい。映画マジックってすごい。
水道公園
昭和2年に建造された水道タンクがランドマークとなっている公園。劇中では屋外に「Cafe水道タンク」が作られ、主要登場人物たちの出会いや別れに使われていました。
AKB48『So long!』MVのロケ地と紹介されることも多いですが、じつはこのMV、大林監督による作品。特典DVDに収録された60分超えの『So long! The Movie』は『この空の花』の続編的コンセプトを持つ珍妙な一本です。
で、この水道タンク。思っていたより大きい!(想像ジャストのものが何ひとつなかったですね、今回の旅) 公園全体もきれいで、一見して気に入ってしまいました。観覧エリアではないですが、ここいらから花火を見る人もいるみたい。
長生橋
ちょうせい橋。信濃川にかかる鉄橋。『この空の花』ではポスター画像の時点で既に登場、劇中でも出ずっぱりな、素敵な橋です。上述のエリアをひとしきり巡ったのち、アオーレに戻ってしばし休憩し、17時ごろにようやく長生橋の見えるところまで移動。うわー憧れの橋だーと感動してしまいました。
今回わたしが購入した観覧席は長生橋のたもと。橋で見切れてしまう部分も結構ありましたが、橋フェチとしてはたまらぬ席でした。
長岡花火(2022/08/03)
というわけでようやくの花火大会本番。こういった花火大会にこれまで縁遠かったわたし的には、まあとにかく大規模イベントで驚き。首からパス下げてないとエリアに入れないのとか、完全にフェスでした。公式アプリの充実度も完全にフェスのそれだった。
ど平日にこの活気ってのもすごいなと思うし、それでいて、観光客も山ほど来てるだろうに周辺の大型店舗とか当たり前のように早々と閉めちゃうんですよ。花火主体でまちが動いてる感じがすごい。長岡入りすると「これが長岡花火か」って肌でわかる。
雨のほうは幸い日中は全く降ることなく、花火のプログラム中も時々ゲリラ的に降っては止み、くらいの、壊滅的じゃない感じで助かりました。ただ新潟は翌日から大変なことになっているようなので心配です。ちなみに長岡花火と水害の関係も『この空の花』には出てきます。
さて、花火の模様は写真と動画でご紹介。まずは写真から。
大雨予報ということもあり今回カメラは持っていけなかったのでiPhone撮影ですが、小さい画面で見るぶんにはわりといい感じの写真が撮れました。あと、やっぱり長生橋がいい。
動画は『この空の花』の演目をYouTubeに上げました。手持ちで不安定ですけども、音の迫力や会場の臨場感などは伝わるかなと。思わず歓声(一応、推奨されていない)を上げてしまうような観客の盛り上がりが、公式の動画からは伝わりづらくて、少しもったいないです。
冒頭では、大林監督へ捧げるアナウンスがありました。上げた動画には字幕を入れておきました。以下はアナウンスの全文。群青色の空へ……素敵な文言です。
映画「この空の花 長岡花火物語」の上映から10年が経ちました。
映画で平和を手繰り寄せようと、長岡花火に込められたフィロソフィーを選んでくださった大林宣彦監督。その大林監督が群青色の空へ旅立たれてから2年。今宵、平和への祈りを込めた花束を監督のもとへ、夜空へたむけます。
共同スポンサー44社でお送りする超大型花火物語「この空の花」。
打ち上げ開始でございます。
動画では頭切れちゃってますが、ピアノのイントロがアナウンスの前に入ります。他の演目ではそういう音楽の使い方を聴かなかったので、独特だなと思いました(アナウンス自体は毎回入ります)。
まるでLEDかのように色が変わりまくる花火、何度観ても不思議です。大林監督のお人柄で言うと「白菊一発」とかのほうがよっぽど合う気がするんですけど、作風で言えばこのデジタル感はまさに大林映画の色調。『この空の花』は初のオールデジタル制作映画ですし、理解度の深い花火だなあと。花火のほうのメイキングをもっと知りたいです。
久々に生で観た大きな花火の何が印象的だったって、「綺麗なものを見て感嘆の声を上げる」っていう人間のピュアな部分を感じられるのがすごくいいですね。あとやっぱり、音。腹にくるあの迫力は生でこそ。そして、この音を戦争で聞きたくはない。まだ、戦争には間に合いますか。否、もう正直間に合ってない感も強いけど……、未来を選ばねば、です。
以上、記事1本でまとめるには長かった。お付き合いありがとうございました。花火終了後は駅近くのチェーン居酒屋でうっかり食べ過ぎ、酔ったらどうしようとびくびくしながら高速バスで帰りました。今朝方無事帰宅。車中いまひとつ寝れなかったので数時間昼寝して、気合いでこれを書いています。やっと行けたよ嬉しいなあとしみじみしています。
大林宣彦監督作品『この空の花 長岡花火物語』。変な映画ですけど、観れば観るほどすごい映画です。いま観るべき厭戦の映画です。一度観てダメでも、ぜひ何度か挑戦してみていただけたら、いちファンとして嬉しいです。