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主に映画の感想文を書いています/NY旅ブログも連載中

NY旅行記【2日目① 9.11メモリアル】

NY旅行記18本目。この記事の続きです。 ここからフリー2日目に入ります。この日の大きな予定は、午前中に「9.11メモリアル」へ行くこと、午後にリンカーン・センターで観劇をすること、夜にエンパイアへ登ること、です。1日目とはうって変わって、チケットが必要かつ時間指定な予定ばかり。果たしてしっかりこなせるでしょうか。きっとまた長くなりますがお付き合いください。

ニューヨーク 快晴 -8℃

f:id:threefivethree:20181123071730j:plain:right:w150ほんまかいな、である。さすがにちょっと疑う。まあ寒いのは確かだが。

2018年11月23日 金曜日。フリーの2日目。昨晩は旅程中唯一、時差ボケで眠れなかった。

救いがあるとすれば、日本は昼間だということである。眠れない夜に付き合ってくれる人は見つけやすい。どうせ寝れないなら有益なことを、と業務連絡メールに返信したりしていた。いつの間にか寝落ちて、結局すこし寝坊しつつも起床して行動開始。

寝る前に塗ったボルタレンローションは効果絶大のようだ。これといって足の疲れは感じない。

9.11メモリアルへ

今日も朝からしっかり予定がある。「9.11メモリアル」、正確には「ナショナル・セプテンバー11メモリアル&ミュージアム」らしい。要は「9.11」ことアメリカ同時多発テロ事件の博物館だ。

あの日のことは鮮明に覚えている。火曜日だったことまで覚えている。そんなにテレビを見る家ではなかったが、あのときは偶然NHKをつけていて、二機目の瞬間もしっかりリアルタイムで見た。見てしまったと言うべきか。

17年前、今なんかより遥かにアメリカという国は遠く無関係な存在だったはずだけれど、そのあとに3.11などがあってもなお鮮烈な事件として記憶の上位に留まっている。というわけで今回のニューヨーク行きにあたり必ず行かねばと思っていた場所だった。

ミュージアムは時間指定で事前にチケットを買ってある。この日も予定はタイトだったので、開館と同時の9:00入場という一番早いチケットだ。にも関わらず少々の寝坊により9:00到着が危うい。ナビの出している時間が正しければ5分前に最寄駅へ着くくらいの、そんなレベルだ。13時間かかる異国まで来ておきながらいきなり日本の時間感覚で遅刻している。いい度胸だ。

旅メモ: チケットの手配については NY旅行記【準備編② 観劇&観光の手配】 - 353log に詳しく書いてあります。

幸い、地下鉄は時間通りに着いてくれた。ニューヨークの地下鉄は停車も発車もドアの開閉もいちいち速いので、急いでいる身にはとても精神衛生上よろしい。そして乗り換えがないのも助かる。本当に、都合よく一本で行ける場所ばかりだ。こちとら新宿へ出るまでに一回は必ず乗り換えるというのに。

そびえ立つワンワールドトレードセンターは昨日見たのでとりあえずいいとして、急いでミュージアムへ向かう。まだ当日券の列はほとんどなかったが、列形成用に順路が作られておりよくわからないので、とりあえずその辺のスタッフさんにチケット(自分でプリントしたもの)を見せて「こっち? OK?」的な感じで進む。チケットがあるようなところは基本的にこの「チケット見せてOK?と尋ねる」スタイルで乗り切れた。

ニューヨークの主要な観光施設では空港並みのセキュリティチェックがあると聞いていた。実際、ミュージアムの入り口を抜けるとそこには空港さながらの光景があった。することは空港とまったく同じ。しいて言えば空港のときより防寒着が2枚ほど分厚いので、脱ぐのが大変。わたしに限った話ではなく、みんなトレーがもこもこしていた。きっと夏場のほうが列の回転は速いだろう。

このタイプのセキュリティチェック、このあとエンパイアとロックフェラーでも受けたので、空港と合わせると今回の旅で通算5回のセキュリティチェックをこなしたことになる。おかげで帰りのJFKの、なんと余裕だったことか。ニューヨークへ行くとセキュリティチェックに慣れて帰ってくる。

一旦脱いだ防寒着(3枚重ね)をまた着て入場する。が、館内ぽっかぽかなので明らかにこれは邪魔である。預けたい、と思ったらしっかりクロークがあって、列ができていた。クロークのハイシーズンと言えよう。もちろん預かってもらった。

このミュージアムは全体的にとにかく品位があるというか、スタッフの対応ひとつとっても、わかりやすく言うと日本的なサービス業のスタイルだ。丁寧に、にこやかに対応してくれる。それはやはりここがセンシティブな場所であるからで、あのざっくりとした労働観のニューヨークでもこういう違いはあるのだなと興味深かった。

ミュージアムの空気感

センシティブな場所と書いたが、この場所は他の観光地と比べて明らかに異質だった。観光地と呼んでいいのかもよくわからない。客層も現地の人が多いように感じた。普段あんなに賑やかなニューヨーカーたちが別人のように静まり返り、写真撮影可にも関わらずシャッター音を立てるのがはばかられるような、そんな空間だった。

f:id:threefivethree:20181212212109j:plain:right:w200また印象的だったのが、ところどころに用意された非常用の出口。あれは防災的な非常口というよりも、気分が悪くなったらすぐ出れるように、という非常口だと思う。順路の途中で座って休憩できる場所も多い。

撮影禁止のより具体的な展示コーナーには、注意書きとパーテーションに守られたショッキングな展示がいくつもある。そういったコーナーには決まってティッシュとゴミ箱が設置されている。この雰囲気は相当独特である。

展示をかいつまんで

前述の通り写真撮影可のエリアが多いので写真はあるが、おそらく写真から伝わるものは少ないと思われるため、ごくかいつまんだ掲載にとどめておく。

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最初に出迎えてくれる大きな写真。これは事件当日の朝8:30に撮影された、平和そのものな一枚。この15分後に一機目が突入する。アメリカでは9月が新学期。爽やかな青空のもと多くの人が新しい生活を迎えようとしていた朝。

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階下に大きくひらけた印象的な展示。これは「スラリー・ウォール」と呼ばれる壁で、地下7階分も掘り下げたワールドトレードセンタービルの地下地盤をハドソン川の水流入から防ぐためのものだそう。このミュージアムは倒壊したワールドトレードセンタービルの地下2階部分に位置するので、この壁も「本物」であり、繰り返すがこの場所は倒壊したあのビルの地下その場所である。

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進んでいくと、青いタイルが無数に並べられた巨大な展示物がある。なんだろうと思っていたのだが、この作品は「あの朝の青空」をイメージして作られたものだった。中央に配置された言葉は「どんな月日も、あなたを時間の記憶から消すことはできない」という古代ローマの詩で、文字パーツはビルの瓦礫を鋳造して作られたものだそう。

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あの日の朝、最初の写真に写っているあの平和な青空。その色が、無数のタイルを彩っている。

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撮影可能エリアにある目を引く展示物のひとつ。これはビルの屋上からそびえていたアンテナの一部分。ニューヨークの摩天楼からはみな長いアンテナが生えているが、あれが地上へ落ちてくるとこんな感じか、と震える。

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おそらく撮影可能エリアでは最もわかりやすい展示物。ビルが倒壊した際に瓦礫で潰されたハシゴ車。同様の緊急車両たちは撮影禁止エリアのほうにも複数展示されている。消防車、パトカーなど、天井の低い展示室に置かれていることもあってかこのハシゴ車よりもさらにゾッとさせられるものがあった。

撮影禁止エリアは大きくふたつあり、ひとつは全犠牲者の顔写真が展示されている追悼ホール。3,000人近い笑顔の写真が四方の壁に飾られている。ちょうど目線の高さに日本人の方をみつけた。ひとりひとりの情報が見れるタッチパネルの端末もあり、そこで誰かを探しているような人もいた。

もうひとつは、事件発生からその後までを具体的に展示した資料性の高いエリア。ミュージアムとしてのメインコンテンツとも言えるだろう。入った瞬間まず生々しいライブカメラの連続画を見ることになり、たった数秒の映像にしばらく目が離せなかった。そのあともショッキングなものが続く。特に衝撃的だったのは、ビルから飛び降りる人たちの写真をスライドショーで流しているコーナー。もちろん、望まなければ見れないようになっている。

未遂で墜落したユナイテッド93機のコーナーや、1993年に起きた同じくアルカイダによる爆破事件のコーナー、犯行グループについてのことなど、情報は多岐にわたる。各国のニュース映像を流しているコーナーではNHKの映像もあった。あの日見た場所へ来た。

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また最初の壁に戻ってきた。真ん中に立っているのは、最後に撤去された柱らしい。事件当時から慰霊碑のように扱われているようだ。広い空間には椅子がいくつも置かれており、静かに座っている人が多かった。夜ならまだしも、まだ昼前だ。疲れて休憩しているのとはちょっと違うのだろうと思った。

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最後はこんなエレベーターに乗ってエントランスへ戻る。

f:id:threefivethree:20181217210603j:plain:right:w200クロークで上着を受け取り、5ドル以上の寄付でリストバンドがもらえるとあったのでスタッフさんに5ドル紙幣を見せたところ丁寧にひとつ取ってThank youと渡してくれた。クロークの前あたりでは案内の女性に「大丈夫?わかる?」と声をかけてもらったし、とにかく対応がいい。「Hey guys!!」で「Go! Go ! Go!」な感じの案内がデフォルトなNY観光において、貴重なオアシスだ。

お土産コーナーも充実している。ここでお土産というのはちょっと、と思ってしまい何も買わなかったが(あとまだそもそも買い物の精神的ハードルが高かった)、結構惹かれるものもあったので買っておけばよかったかと少しばかり後悔した。否、午前中なのでまだ荷物は増やせない。

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地上階への階段からは一気にひらけて気持ちが軽くなる。ざっとまわっても二時間は下らなかったので、それなりに脳が疲れている。上のほうに見える国旗には日本も入っている。

鑑賞を終えて

他と違い、決して楽しい場所ではない。しかしやはり、遠く離れた日本人にとっても非常に衝撃的だったこの事件を、実際にその場所で五感で味わうことができるというのは得難い経験だった。帰ってから旅行について「どこが一番よかった?」と訊かれ、自分の趣味性を抜きにした「一番」をしばし思い巡らした末、「9.11メモリアルかな〜」と答えた。そういうことである。

あの事件に未だ鮮烈な記憶を持っているなら、ぜひ一度訪れてほしい場所。

ワンワールドグラウンド・ゼロ

f:id:threefivethree:20181215213929j:plain:right:w200ミュージアムを出て、あらためてワンワールドトレードセンタービルを見上げる。調べて驚いたが、高さはかつてのツインタワーと同じらしい。

この高さのビルに飛行機が突っ込んで倒壊してきたら…? マンハッタンやブルックリンの離れたところからでも見えるこのビルの上層階に飛行機が突っ込んでいたら…? 想像もできない。

9.11関連の映画でその名も「ワールド・トレード・センター」という作品を事前に観たが、朝、最寄駅を降りてミュージアムへ向かっているとき、「映画で見たあの街並み」を感じた。ここだ、と思った。とはいえ、現地に立っても、あれだけミュージアムで資料を見てきても、ここで本当にあの出来事が起きたというのはやはり想像しがたい。

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ツインタワーのあった土地はどちらも大きなプール型の慰霊碑になっている。犠牲者の名前が外周に彫ってあり、故人の誕生日などには花が刺さっていたりするらしい。このときは見なかった。このプールを見たらどんな感情が湧いてくるのだろうと不安ですらあったのだが、意外にこれといった感情は湧いてこなかった。

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帰り際、ミュージアムの入り口を通るとえげつない大行列。これはみんな当日券なのか、それとも事前購入でもセキュリティチェックの混雑でこれほど待たされるのか。いずれにせよ朝イチ9:00入場指定での事前購入をおすすめしたい。開館したてで館内も静かだし。


旅メモ: 無料の公式音声解説アプリ

有料の音声解説機もあるようですが、公式に無料のスマートフォンアプリ「9/11 博物館オーディオガイド」が出ておりまして、これが日本語にも対応しているのでおすすめです。

アプリをダウンロードしてから言語ごとの音声ファイルを追加ダウンロードしないといけないため、渡航後にダウンロードしようとすると接続環境によっては重いかも。わたしは日本で落としていくつもりがうっかり忘れ、現地で試みましたがだいぶ重そうだったので諦め、復習として後日聴きました。

現地で聴いていたらもうちょっと理解が深まったなあと思える部分も多々あったので(ビンラディン潜伏先のレンガとか、気付かなかった…)、行かれる際はぜひダウンロードしてから渡航しましょう。ちなみに英語版だとロバート・デ・ニーロが解説してくれます。

館内の雰囲気につられてだいぶかしこまった感じの本文になってしまいましたが、そういう場所だったということで。このあとはニッチなロケ地巡り、滞在中いちばん感動した食事、などです。