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主に映画の感想文を書いています

NY旅行記【2日目② ニッチな聖地、想い出の食事】

NY旅行記19本目。この記事の続きです(前回の記事、後半に少し付け足しました)。 風邪をこじらせ、なかなか書き進められない353。グラウンド・ゼロを後にし、少々ニッチな聖地巡礼と昼食です。

World Trade Center Station

非常に特徴的なデザインの"World Trade Center Station"から次の目的地へ。

この駅は2016年に完成したばかりの超新品である。時間がなくて通りがかりにしか撮れなかったが、正面から引いて撮るか、反対側へまわってワンワールドトレードセンターをバックにしたほうがいい写真が撮れそうだ。

この駅を思わせるデザインのバイクがミュージアム内に展示されていた。

空間は地下に広がっており、外から見るより大きい。記念写真を撮る人が多数で、新たなフォトスポットという感じだった。

地下鉄以外も通っている駅のようだが、ここから地下鉄に乗る。当然ながらかなり綺麗。 帰国早々メトロカード廃止のニュースを知り悲しんでいたけれど、これだけ綺麗な駅となると確かにタッチ&ゴーで抜けたくなる気持ちはある。

暗くなるまで待って

1ラインで"Houston Street Station"まで行く。ここから5分ほど歩くと、今回どうしても行きたかった場所へ着ける。

途中、ブルックリンでも見なかったような壁画に出会う。よく見ると小型のクレーン車があるようだ。もしやこれで描いているのか…?

さて本題。「暗くなるまで待って(1967)」というオードリー・ヘプバーン主演の映画がある。

後期の作品だし、他の有名作と比べると知名度は低いが、非常に好きな映画だ。一見いやらしいものを想像するタイトルだけれど、ビリー・ワイルダー作品の邦題などと違ってこれはタイトルに偽りなし、原題も「WAIT UNTIL DARK」で、「暗くなるまで待つこと」がミソなスリラー映画となっている。

本当にこんなところにあるのかと思いながらGoogleMapを頼りに歩いていると、見たことのある通りへ辿り着いた。

今回行きたかった場所というのは、この映画でヘプバーン演じる盲目の主人公が住んでいたアパートである。まずは劇中のシーンがこちら。

そしてこの場所の現在が、これだ。

感動した。劇中のシーンは調べずになんとなく勘で撮ったのだが、大正解だった。なんなら街路樹の“うろ”まで同じように見える。半世紀前と同じ街路樹ということがあるのだろうか…と思いつつ。せっかくなので同じだということにしておこう。

映画の舞台となっているのは上ではなく、半地下の部屋である。住居なので接近はこのへんまででとどめておく(人気を感じないのでもしかしたら空き家かも)。なお、このロケ地情報はこちらのサイトを参考にさせていただいた。

旅メモ: ちなみに、ニューヨークでよく見かけるこのタイプの住居。階段を上った先のドアと、階段の下にあるドアはそれぞれ別の物件になっているのだそうです。 つまりヘプバーンの住んでいた部屋はちょっとバリュープライスということ。なるほど。ちょうど知恵袋の回答に「暗くなるまで待って」のタイトルがあったので載せてみました。

今回の記事を書くにあたって映画を観直した。フェンスや窓格子なども当時と同じだった。物持ちのいいアパートだ。劇中ではケチな大家と言われているが、それが本当なら、そのおかげで残っているとも言える。

昨日のヴェラザノ・ナローズ橋と同じく、ここもニューヨーク行きを決めたとき真っ先にマークした「行きたい聖地」だったので、来れてよかった。何かにつけて思うが、ニューヨークまで来ても日本とやっていることは同じである。

乙女ミートボールに感動

カメラが不調で、ちょいちょい露出アンダーな写真が撮れる。これなんかは悪くない気がしたので大幅に加工して良しとした。ワンワールドトレードセンターと飛行機雲。

これはお気に入り。連なるイエローキャブ(圧倒的日本車率)と黄色い信号、もくもくと出るスチーム、「好き」が詰まっている。

ニューヨークの冬の風物詩、地下に張り巡らされた暖房網によるスチーム。路面から出ているほうが絵になって好きなのだが、このように煙突型のパイプで上に逃がされているものが多い。まあ、路面から出てると視界不良で事故るよな、とは思う。

時刻はすっかりお昼過ぎ。このあと長時間の観劇が待っているため、空腹のままでいてはならない。今回の旅で行きたかった飲食店のひとつ「ザ・ミートボールショップ」へ行ってみよう。もちろん抜かりなく、先程のアパートから歩いて十数分の場所にあるのだ。

行ったのはウエスト・ビレッジ店。年内3日間しかない休業日のうち1日が昨日(Thanksgiving Day)だった。危ない。

この店に行きたかった一番の理由は、オーダーがマークシート方式で会話要らずだと聞いていたからだ。下調べによれば、テーブルの上にマークシートが並んでいるはず。…いや、窓から覗き込む限り、並んでいない。これは席に通されたあとマークシートが来るのか、果たして…。一瞬ためらったが、一期一会の旅でこういったためらいは厳禁である。いざ入らん。

お好きな席へどうぞと言われても数秒迷うほど、席が多い。あと空いている。写真で食器の置いてある席に座った。

速攻で水のボトルが置かれた。マークシートは置かれない。ムムッ…と壁のメニューなどに目をやっていると、少し遅れて紙がやってきた。が、あのマークシートではない。ただのメニューだ。ムムッ。というわけでどうやらこの店舗では普通に注文しなくてはいけないようである。いいトラブルだ。

幸い、メニューの予習はしてあったので何をどう注文すればいいかも大体わかる。店員さんを呼んでなんとなくそれっぽく注文してみる。オーダーごとにいちいち語尾を上げるとちょっとそれっぽい、という気がしている。注文したのは「NAKED BALLS」を「PESTO」ソースで、付け合せにマッシュポテトと、あとノリでビール。

頼んだあとで我に返ったが、このあと観劇だというのにビールを飲んでどうする。とはいえ飲みたいときが飲みどきだし、後から考えてもこのときしか飲むタイミングはなかった。

ビールはすぐに来た。ふと気付く。ここはレストランだ。テーブルサービスのチップは、来てくれる度に払うんだっけか…? 自信がないし、とりあえず今の一回は逃した。

一旦飲んでリラックスする。うめえ。ビールがうめえ。結果的にこれが最初で最後の一杯となった。飲んでおいてよかった。

少ししてメインと思われるものも来た。今度はチップを渡した。「おっ、ありがとね〜」という感じで受け取ってくれた。さっきのビールと違う人なのが気がかりといえば気がかりだが、旅のご無礼をお許しください。いただきます。

思わず「うまっ!」と声が出た。とにかくうまい。「うまい」を具現化したような食べ物だ。未だに思い返しては食べたい……と唾液を育ててしまう。この旅で一番想い出深い味。マッシュポテトって敷くんだ…付け合わせっていうか床材選択だったんだ…というカルチャーショックもあったがそれも合わせて全てがうまい。超おすすめニューヨークめしである。日本進出を切に願う。

空腹のところへ一気に流し込んだせいか、満ちるのは早かった。まだ底のマッシュポテトがだいぶ残っているが、このへんで勘弁しておいてやろう…。ビールも、飲みすぎるといけないから半分くらいで残しておこう…。ニューヨークで多すぎる食事を残す、正直ちょっとやってみたいことだったので今回くらいは許して。ごちそうさまでした。

会計時にもまたチップ問題が発生するのだがとりあえずCheck pleaseしてみる。どんな手順を踏んだかは忘れたが、チップの額を選んでね!の欄があり18%、20%、22%と刻まれていたので20%を選んだ。チップが関係してくるとこっちの店員さんはとっても機嫌のいい雰囲気になるのでよい。じつのところチップ文化、わたしはすごく好きなのである。サービス業というのはこのかたちでいいと思う。

このお姉さんにはよくしてもらった。席を立ってから許可もらって店内の写真を撮っていると「あなたも撮る?」と店内のベストポジションで記念写真を撮ってくれたりした。

想定外にコミュニケーション能力を問われることとなったミートボールショップだったが、度胸がついたし、「どうとでもなる!」という気持ちが一層強まった。そしてなにより、うまかった…。

ニューヨークで故郷を見る

店を出たあと、もうひとつだけここで寄りたいところがあった。そこはごく近い。すぐ裏手あたりにある。なにかというと、これだ。

おわかりいただけるだろうか。E.A.K. RAMEN。イー・エー・ケー・ラーメン。家系ラーメン。である…。そしてもう少し目をこらすと見えてくる提灯、そこには「町田商店」の文字。そう、ここは家系ラーメン「町田商店」のニューヨーク店舗なのである。

町田という小国をご存知であろうか。東京都の、宇宙戦艦ヤマトでいうと第三艦橋に位置する場所で異彩を放つ国であり、わたしの祖国である。その町田国が誇るラーメンチェーン「町田商店」は日本全国に展開しているのだが、なんとニューヨークにまで店を構えていたのだ。お馴染みのあの提灯がここマンハッタンにあるのだ。

感動して思わず入店し町田国から来ましたと叫びたいところをぐっと堪え、店をあとにした。町田国民たるもの祖国の威厳を保たねばならない。

極限まで高まった愛国心に反し、アメリカ合衆国への愛が詰まったリンカーン・センターへと足は向かう。次回、ミュージカル「My Fair Lady」鑑賞。