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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

「ラ・ラ・ランド」に招かれて

もうだいぶ前の話になります。映画館で「ラ・ラ・ランド」を観て、たいそう気に入りました。レビューや解説などを漁るのが好きなので「ラ・ラ・ランド」についても調べていたところ、往年の名作映画、特にミュージカル映画をオマージュしたシーンが非常に多いことを知ります。ルーツを辿ったりするのも大好物なため、よし、いっちょオマージュ元をとことん観てから改めてBlu-ray買って観るぞ!とTSUTAYA通いの日々を始めました。

最寄りTSUTAYAにないものもあったので、iTunes Music Storeで配信レンタルしたり、在庫の多いTSUTAYA DISCASも利用するようになりました(いっぱい借りていっぱい観ないとちょっと割高ですが、古い作品を観たい場合は特にTSUTAYA DISCASとても便利です)。

話題をかっさらった作品ということで、「ララランド オマージュ」などと検索すればネット上に親切なまとめがいくつも出てきます。わたしが参考にしたのはそのようなまとめ記事ですし、結果的にこの記事も焼き直しのようなものになることは否めないのですけども、9割自己満、1割はわたしのような調べたがりの方に向けた読み物のひとつとしてお楽しみいただければ。

弾は抜いておいたのに!/理由なき反抗(1955)

理由なき反抗 [Blu-ray]

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劇中で、関連シーンの一番多い作品かもしれません。なんといっても、作品そのものの映像が登場します。映画館でミアとセブが観ている映画はまさに「理由なき反抗」の実際の映像です(ミアが遅刻してきた印象を受けるシーンですが、劇中で上映されているのはまだ始まったばかりのオープニングシーン。わりと間に合ってます)。映画鑑賞後にふたりが行くのも作品に登場するグリフィス天文台です。

また、映画館デートの導入として「弾は抜いておいたのに!」「もしかして観たことない?」なんて会話があります。「弾は〜」は、「理由なき反抗」のラストシーンで登場する台詞。これを知っているかどうかで、観客が「セブ側」「ミア側」のどちらに感情移入できるかの分かれ道になる気がしていて、おもしろいな〜〜と思います。わたしはもちろん初回は知らなかったのでミア側、再度観た際にはセブ側でほくそ笑んでおりました。

ちなみにこの映画の時代は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」でマーティがタイムスリップする時代と同じ。イナバ物置か?ってくらい1台の車にぎゅうぎゅう乗り込む若者たち、「チキンレース」のハシりなど、あの当時の空気感を別の角度から味わうことができます。味わい的には「ウエスト・サイド物語(1961)」にも通じるものがあります。

君のボガートはなんて名前?/カサブランカ(1942)

カサブランカ [Blu-ray]

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ミアの部屋でひときわ目を引く、壁一面に描かれた女性の絵。これは大女優イングリッド・バーグマンです。ミアはバーグマンに憧れているらしく、彼女の出演作のタイトル、ポスターなどが作中に数多く登場。なかでも「カサブランカ」はキーのひとつとなっています。この作品でバーグマンの相手役をつとめたのはハンフリー・ボガート。「君のボガートはなんて名前?」というセブの台詞はそこに繋がっています。ミアがスタジオ内で「カサブランカの窓」を紹介するシーンもありましたね。

この「カサブランカ」、物語的にも「思い出深いメロディによって、過ぎ去りし日のことを思い出す」という、ララランドに通じるものがあります。あ、そうそう、かの有名な「君の瞳に乾杯」はこの映画がオリジナルなのですよ。ハンフリー・ボガートのシブさに骨抜きになること間違いなし!(ララランドとは関係ないですが「麗しのサブリナ(1954)」で金持ちボガートがヘプバーンに言う「100万ドルなんてゼロの連続だ。穴にすぎん」というもはや鼻につきようのないセリフが大好きです笑)

あの後味がお好きなら/シェルブールの雨傘(1964)

シェルブールの雨傘 [Blu-ray]

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デイミアン・チャゼル監督が最も影響を受けたと語る作品のひとつがこちら。個人的にはタイトルも曲も一応知っているけど観たことはない作品でした。今回ルーツを辿るにあたって最初のほうに鑑賞。まず驚いたのは、とにかく全てのセリフにメロディがついていること。以降かなりの数ミュージカル映画を観てきましたが、このタイプのミュージカルには未だ出会っていません。フランス語特有の眠気を誘う発音でしかも全て節付きとなると、これは相当クセが強いです(笑) ミュージカルが苦手な方にはおすすめしないです。

というのはさておき、この作品を初めて観たときの感想は「ラストがまんまだ…!!」でした。もちろんお話は違うのですけど、あの「後味」まんまなんです。百聞は一見にしかず、観たら納得かと思います。ララランドの後味が気に入った方にはおすすめしたい作品です。

ほかのオマージュポイントとして、本作のヒロインはジュヌヴィエーヴ。ミアが書いた一人芝居の脚本でも、主役の名前はジュヌヴィエーヴでした。関係ないおすすめポイントとしては「雪のエッソ」。これに尽きます! なんてあざとい名シーンなの!(ガソリンスタンド繋がりだとマリリン・モンロー主演「お熱いのがお好き(1959)」のシェルもまた印象的です)

理想のミュージカル/ロシュフォールの恋人たち(1967)

ロシュフォールの恋人たち [Blu-ray]

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シェルブールの雨傘」と同じくジャック・ドゥミ監督の代表作。主演も「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴですが、こちらは一転、スカッと明るいミュージカルになっています。旅芸人たちがある街へやってきて次の街へ行くまでの数日間を描いたもので(本作にも出演しているジーン・ケリー主演の「踊る大紐育(1949)」を思わせます)、冒頭のダンスシーンがまさにララランドのそれと言われているようです。CMなどで今でもお馴染みな「キャラバンの到着」は本作の音楽なのですよ(ちなみにサントラには「キャラバンの出発」という曲も入っています)。

とにかくカラフルで楽しい、絵に描いたようなミュージカル作品。女の子たちのファッションも可愛いし、ジャニーズかな?と思うような水兵マクサンスくんもイケメンだし、目の保養になります。男女のすれ違いというストーリーだというのに全くストレスを感じさせない展開はさすがの一言です! 万人におすすめの一本。

まずはこれから/雨に唄えば(1952)

雨に唄えば 製作60周年記念リマスター版 [Blu-ray]

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説明も省略したくなるほどオマージュ元多数(街灯のアレはもちろん、撮影スタジオの中を歩くシーンなど完全にそのまんま! ララランドのほうの同シーンで、覗いたスタジオの中に終盤「妄想」シーンのセットが組んであることに最近気づいて興奮しました)。そうでなくとも観ていただきたい必修科目です。

物語の舞台は1927年アメリカ。「無声映画」に代わる「トーキー映画」が登場した年でした。歌はおろか、セリフすら言う必要がなかった当時の映画スター。しかし「トーキー」の技術が登場して以降、スクリーンのスターたちにはルックスのみならず「魅力的な声」も求められるようになります。そんな時代の「映画製作舞台裏あるある」を描いた本作は、映画の歴史を知るうえでも非常におもしろい作品です。

ルックスだけで売ってきたけれど口を開けば金切り声、というカワイソ設定の人気女優をトーキー映画に出すべく、製作陣のみならず共演者もグルで「声だけ吹き替え」という作戦を実行します。その吹き替え役として抜擢されたのが、デビー・レイノルズ演じる駆け出し舞台女優キャシー。今作のヒロインとなるデビー・レイノルズは、「スター・ウォーズ」シリーズのレイア役でお馴染みキャリー・フィッシャーのお母さんです。…なんていうウンチクも垂れやすい映画。

ハリウッド・ミュージカル黄金期であるこの頃の作品というのは一流エンターテイナーたちのパフォーマンスを楽しむ映画としても成立しており、本作もジーン・ケリーを中心に素晴らしいパフォーマンスを堪能できるのですが、それだけでなくストーリーもしっかり面白く、映像も鮮やかで、本当に抜けのない作品だなあと思います。「50年代」というだけで抵抗がある方の入門として、とってもおすすめ!

なお、セブのダンスシーンでも分かりやすくオマージュされてる印象的な楽曲「雨に唄えば」はこの映画がオリジナルではなく、作品の舞台である1927年当時の流行歌だったようです。このへんはMGMミュージカルの総まとめ的な作品「ザッツ・エンタテインメント(1974)」の冒頭で説明されており、理解が深まるのでおすすめです。わたしがこの曲と最初に出会ったのは不幸にも「時計じかけのオレンジ(1971)」だったのですが、最近ようやく塗り替えられました(笑)

美術も音楽も/パリのアメリカ人(1951)

巴里のアメリカ人 [Blu-ray]

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雨に唄えば」と同じくジーン・ケリー主演の、こちらも超名作ミュージカル映画。終盤でガーシュウィンの楽曲「パリのアメリカ人」に合わせて20分近い長尺のダンスシーンが繰り広げられるのですが、ハリボテや絵の中で踊る「妄想」シーンとして演出されたその映像はまさにララランド終盤のそれと言えます。

本作では全編通してジョージ・ガーシュウィン(「ラプソディー・イン・ブルー」でお馴染みですね)の楽曲が使われており、ガーシュウィンの実際の友人である俳優兼ピアニストのオスカー・レヴァントがピアニスト役で出演しています。今作でフィーチャーされた「パリのアメリカ人」は1928年の楽曲とのこと。クラシック界のみならず当時のエンタメ界に多くの名曲を残したガーシュウィンは1937年に38歳の若さで逝去。彼の人生を描いた「アメリカ交響楽(1945)」もおすすめです(同じくオスカー・レヴァントが本人役として出演しています)。

ララランドの終盤「妄想」シーンには他にも多くの作品の要素が盛り込まれているようですが、同じくパリを舞台に、そしてガーシュウィンの音楽が使われている作品である、オードリー・ヘプバーン主演の「パリの恋人(1957)」もそのひとつです。序盤、本屋の娘として出てくるヘプバーンは、思うにいちばん可愛いヘプバーンです。

優雅なダンスシーンの真骨頂/バンド・ワゴン(1953)

きました、わたしの本命、フレッド・アステア主演の作品です。オマージュ元を辿っていく過程でアステアに出会い、これといって魅力的なルックスでもないのに何故か取り憑かれてしまい、もう15本くらい主演作観ました(それでもまだ半分以下かな…?)。自伝も読みました。おかしいな、最初はジーン・ケリーのほうが好きだったはずなのに。

さておき。本作の有名なシーンとして「ダンシング・イン・ザ・ダーク」というダンスナンバーがあります。パートナーであるシド・チャリシーと夜の公園で優雅に踊る(しかし、ケンカの直後)このシーンは、ララランドのこちらも有名な夕暮れのダンスシーンのオマージュ元とされています。シド・チャリシーという女優がまた本当に優雅で、見ものです。とにかく脚が長い! 綺麗!

どちらかというと「燕尾服にトップハット」のイメージがあるアステアの白スーツ、そしてチャリシーの白ワンピース、ため息が出るような美しさのダンスシーンには、この時代のミュージカル映画と役者たちのすごさが詰まっています。これを観てから見るセブとミアのダンス、引けを取ってしまうのはやむを得ないことです。

同じくアステアだと、ベンチでのダンスでオマージュしたとされる「踊らん哉(1937)」(なんとローラースケートでのダンスナンバー。お相手は名パートナーのジンジャー・ロジャースです)、煌めく光源のなかで踊るシーンがそのまんまな「踊るニュウ・ヨーク(1940)」(じつはまだ抜粋でしか観たことがありません。お相手はこちらも名パートナーとされるエレノア・パウエル)などが関連作としてよく挙げられます。

(「踊るニュウ・ヨーク」より)

なるほどわかる/マルホランド・ドライブ(2001)

突然2000年代へ飛びまして。調べているといろんなところで「マルホランド・ドライブっぽい」という感想を見かけました。だいぶ毛色の違いそうな作品だけど…??と思いつつ観てみたのですが、見事「なるほど確かに、わかります」という感想に落ち着いてしまいました。

ララランドっていつのまにか色味や空気感の変わっている作品ですよね。この「マルホランド・ドライブ」もまさにそんな作品で、同じくLAを舞台にしながら現実と妄想・夢の世界が交錯していく、とにかく「観たらわかる」んです(笑) ただしR指定描写も多いので苦手な方はご注意を。鑑賞後は解説サイトなど探して読んでみるとよりおもしろいですよ!

LAものだと「フォーリング・ダウン(1993)」も明確なオマージュ元のひとつ。ララランドと同じく、「LAの渋滞」から始まる物語です。渋滞してるからとりあえず歌い踊っちゃうケースがララランド、堪らずブチ切れてしまったケースが「フォーリング・ダウン」。とりあえず、踊っておいたほうがまだマシな結末を迎えられそうです。

そういえば該当シーンの「Another Day of Sun」、いちばん有名な曲でありシーンだと思うのですが、セブとミアが(少なくとも画面上、音声上は)出てこないのはちょっとおもしろいですよね。同じようなところで、最近「美女と野獣(1991)」を初めてちゃんと観て、あの「美女と野獣」の曲を歌ってるのがポット夫人だと知り、ずっこけました。ポットかーい。

名パートナー?

ラブ・アゲイン [Blu-ray]

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ララランドとの関係はありませんが、ライアン・ゴズリングエマ・ストーンが恋人役として共演している作品、じつはあと2作もあります。「ラブ・アゲイン(2011)」と「L.A.ギャングストーリー(2013)」です。個人的には「ラブ・アゲイン」のほうがおすすめ。冴えてるライアン・ゴズリングが見られて、お話もおもしろいです。

ラ・ラ・ランド」に招かれて

そんなわけでだいぶごちゃごちゃと書いてしまいました。ひとつの映画からここまで掘り下げられるって、なかなかすごいことだと思います。何も知らなくても初見でしっかり楽しむことができ、興味が出て調べてみたらまた何倍にも楽しむことができる、こんな映画を作ってくれたデイミアン・チャゼル監督に感謝です。前年あたりに「セッション(2014)」を観ていなかったらさほど興味も湧かず観なかったかもしれないので、自分にも一応感謝です(笑)

今回、1950年代くらいまでのハリウッド・ミュージカル黄金期を知れたことが、わたしとしては一番の収穫でした。古い映画だとナメてかかったら大間違い。度肝を抜かれるような世界が待っています。手始めに、前述の「ザッツ・エンタテインメント」シリーズを観て、気になった作品から掘っていくのがよいでしょう(同シリーズ、パート3まであります。とりあえず1974年のパート1をどうぞ。ちなみにこの「ザッツ〜」は、こちらも前述「バンド・ワゴン」劇中曲のタイトルです)。

ザッツ・エンタテインメント [DVD]

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そして改めてですが、ここに書いたことは全てネット上で既出のものです。有益な記事を書いてくださった諸先輩方、ありがとうございました。この記事も誰かのお役に立てれば幸いでございます。