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大林宣彦監督作品「麗猫伝説(1983)」感想|入江たか子&入江若葉の母娘共演による「サンセット大通り」

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1月9日は大林宣彦監督の誕生日でした。そういえばDVD買ったきりまだ観てないんだったと思い出し、1983年の作品『麗猫伝説(れいびょうでんせつ)』を鑑賞しました。

再生するまで知らなかったのですが、この作品は「火曜サスペンス劇場」用で、しかも100回記念作品として製作・放送されたものだったんですね。DVDにはちゃんとあの「火サス」のオープニング(でー!でー!でーーーん!ってやつ)から収録されております。

本作の売りはなんといっても入江たか子さん&入江若葉さんの母娘共演(正確には二人一役)。〈かつて「化け猫映画」で一世を風靡した往年の大女優〉という入江たか子さんそのままのキャラクター設定で、シナリオはなんとビリー・ワイルダー監督の大傑作『サンセット大通り(1950)』をなぞっている作品でした(『悲愁(1979)』でもあるそうなんですが、こちらは未見につきノーコメント)*1

サンセット大通り (字幕版)

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  • 発売日: 2017/01/01
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大林監督は圧倒的シネフィルでありながら自作ではあからさまなオマージュをしないタイプの映画作家でしたけども、本作に限ってはグロリア・スワンソンセシル・B・デミルバスター・キートングレタ・ガルボなどなどそのものずばりな名前も劇中に登場したりして、だいぶレアケース。『サンセット大通り』におけるグロリア・スワンソン役の入江さん(二人一役なので名字呼びをしておきます)がグレタ・ガルボに嫉妬するような場面がありましたが、『サンセット大通り』で最初に主役を打診されたのがグレタ・ガルボだったんですね。なるほどー。

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「往年の大女優」に幽閉されてしまう脚本家=ウィリアム・ホールデン役を演じるのは柄本明さん。普通の好青年風だったのでしばらく柄本さんだと気付かなくて、お若い頃こんな感じだったんだと少し驚きました。生気を失いやつれていく様がかなり印象的です。生気失い系だと、峰岸徹さん演じるゴシップ記者のラストも『喰べた人(1963)』の応用編みたいでハハッとなりました(もっとクラシックな元ネタがあるんだと思いますが)。

脚本家の恋人を演じるのは風吹ジュンさん。風吹さんも柄本さんと同じくらい大林作品にはバイプレイヤーとして登場しますが、本作ではヒロインと言ってもいいポジションです。お顔は今のままなんですけど少女的な雰囲気も併せ持っていてとても魅力的でした。なんとなく『HOUSE/ハウス(1977)』の池上季実子さんなどとも通じる感じかなあ。終盤で入江さんと対峙したときの「目の演技」が特によかったです。あのへんはサイレント映画的演出だったのかもしれませんね。

そして入江母娘。入江若葉さんこそ大林作品バイプレイヤーズの筆頭ですから、うわー若葉さん主演だーと不思議な気分になりました。入江たか子さんは恥ずかしながら全くかつてのご活躍を存じ上げないので感慨には欠けるのですが、エンドロール冒頭で流れる母娘むつまじくしているオフショットが『時をかける少女(1983/あ、同年ですね)』さながら本編以上に印象的で、オーラがすごい、オーラがすごい、と圧倒されてしまいました。本編よりオフショットのほうがオーラ出てるってどういうことですか。これこそ「女優」。凄かった。必見です。

(2020年7本目/DVD購入)

麗猫伝説 [DVD]

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  • 発売日: 2020/11/06
  • メディア: DVD
可愛い悪魔 [DVD]

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  • メディア: DVD
もう一本の「火サス」である『可愛い悪魔』もDVD出てたようで、買わなくては。あとそうそう、『海辺の映画館─キネマの玉手箱』のBlu-rayリリースがニクいことに大林監督のお誕生日に発表されてました! 待ってた!

*1:偶然ひとつ前に『下女(1960)』の感想で『サンセット大通り』を(無関係とはいえ)出していたのでちょっと驚き。