大林宣彦監督作品「HOUSE/ハウス(1977)」雑感
大林宣彦監督が亡くなられたという報を受けて、まだ一本も観たことのなかった大林作品を観てみることにしました。極端に妙ちきりんっぽい映画から観たほうがいいだろうと思い、一作目の『HOUSE/ハウス』から。
あらすじ
夏休みを軽井沢で過ごす予定が飛んでしまったオシャレ(池上季実子)は、長年会っていなかった伯母(南田洋子)の家に女子校の仲間たちと行くことにした。“おばちゃま”がひとりで暮らす大きなお屋敷にはしゃぐ彼女らだったが、どうも様子がおかしいと次第に思い始める。
「これは好きなやつ」
始まった瞬間、本能的に「これは好きなやつ」と思いました。はい、好きなやつでした。仰々しくもコミカルな音楽*1、セーラー服の女学生たち、妙に響いて不明瞭な彼女たちの会話、っていうかさっきからやたら音のでかい劇伴、などなどビビビッと「これは刺さる」の信号が。
場面がヒロインの自宅へ移ると、書き割り背景のテラス。おお、いい感じのチープ*2。 親と言い合って自室へこもった彼女。劇伴に合わせてピアノを鳴らしてみたり、変な効果音とともにくるっとターンしたら服装が変わってたり。好きだぞ…。
学友たちに“おばちゃま”の説明をするシーンでは、サイレント映画風の回想映像をみんなで見ているようなコメンタリー状態になってみたり、お屋敷への道中で登場人物紹介のコーナーがあったり。好きだぞ……。
お屋敷に着いてからは女の子たちのやんやイチャコラが延々と続いて眼福です。詳しくは知りませんがアイドル映画のようなものらしく、基本的には女の子しか出てきません。とてもいいです。しかもわりかし脱ぎます。まじか。びっくりしたわ。
んで、これは一応ホラーなので(C級オカルトホラーコメディってとこか)徐々に奇怪なことが起きて、まあ言ってしまえば様々なバリエーションで女子たちが殺されていくのですが、そのチープでクソコラじみた死に様もすばらしい。なかでもピアノに喰われるメロディーちゃんが好きでした。あと彼女がしょっちゅう「いやん」って言うんですけどね、「いやんエッチ、アフターG」って言ったのが衝撃的でしたね。なんだそれ。
いろいろありつつも最後の一人まで喰われて、もはや笑っちゃうエピローグ付きでおしまい。あーーこれは、めっちゃ好き。めっちゃ好きだわ。これから観てよかったわ。
石原さとみとベルイマン
は関係ありませんが。まずは石原さとみの話。いや、出てませんし生まれてもいませんよ。しかし、ヒロインの池上季実子さん、これ石原さとみじゃろ…。
より正確に言うと永野芽郁も足して割った感じなんですけど、激似です。静止画だけでなく、動いてても石原さとみに終始見えます。77年の映画でこれはちょっとギョッとしちゃう。
…というのも、『ダーク』脳のせいで、石原さとみと池上美希子は違う周期の同一人物なのではないかとかいう発想になってしまうんですね。はい。ドイツ製Netflixドラマ『ダーク』面白いのでおすすめです。
もいっちょ、ベルイマン。出てくる女の子がわりかし脱ぐ、ってさっき書いたんですけど、エピローグ前のラストシーンでも池上季実子さんがだいぶ大胆なことをするんですね。で、そのシーンを(ただの下心から)見返していてふと気付く。これ、こないだ観た『叫びとささやき(1973)』のこのシーンと全く同じじゃないか。
本作のほうは完全にポロリしてるんで貼りませんが、宗教画のようなこのシーンを完全に模してます。しかも『叫びとささやき』を連想させる真っ赤な背景で。こ、興奮。
なお大林監督はベルイマンをかなりお好きだったようなので(「ベルイマン生誕100年映画祭」のサイトにコメントがあったりもする)オマージュで間違いないはず。やっぱこういう「観る順番」みたいなのって、導かれるんだなあ…。
もしも遅ればせながらこのタイミングで初めて大林作品に触れてみようというわたしのような方がおられたら、妙ちきりんな映画がお好きという自覚があればですが『HOUSE/ハウス』非常におすすめです。『JAWS/ジョーズ』みたいな企画を、ということで作られた映画だというエピソードも面白いです。
(2020年54本目/U-NEXT)