めちゃくちゃスタイリッシュで楽しかった。
アニメーションで製作された「スパイダーマン」関連作だけれど、スピンオフなどではなく普通に単品のエンタメ超大作。
スパイダーマンに限らずアメコミの世界では「マルチバース」という考え方があるらしく、要はいろんなパラレルワールドが公式に存在しているよということ。キルスティン・ダンストがMJだったピーターと、アベンジャーズに入ったピーターは別ラインだよ、ということだ。
この「スパイダーバース」では、そんないろんな「別ライン」の“スパイダーマン相応キャラ”たちが、バースの乱れで続々集まってきてしまう。なんとかしてみんなを元の世界へ戻してあげなくちゃ!という簡単なお話。
ところでこの「353log」もマルチバースを採用することにした。今日この記事を書いているのは別ラインの353だ。という“てい”で、単にわたし、普段の文体に飽きたのでイメチェンをしようと思います。では。
めちゃくちゃスタイリッシュ
アートでスタイリッシュな作品なんだろうなというのは事前に分かっていたが、いざ始まってみるとじつはなかなか思ったようなものが見れない。チープでバタ臭いCGアニメがしばらく続く。これ面白くなるんだろうかと心配になってきたところで、違うバースからの来訪者あり。そして一気に面白くなっていく。
映像のテイストは言ってしまえばCMやMVなどの短編作品でよく見るようなものなのだけど、本作がすごいのはそれを2時間やり続けていること。どこを切り取ってもかっこいい、テンポのいいアートな映像がひたすら供給される。かつ、ファミリー映画としても成り立つ親しみやすいストーリーラインがそこにはしっかり通っている。
コマ割り、吹き出し、擬音、といったコミック風の要素をふんだんに取り入れているのも大きな特徴。アメコミをそのまま動かした、日本ではお目にかかれないタイプのアニメーション作品だ。
スパイダーバース、死ぬかと思うくらい面白かった…これはヤバい。ほんとヤバい。 https://t.co/UaxFOxDip7
— 大根仁 (@hitoshione) March 12, 2019
鑑賞前に見かけた大根仁監督のツイートを、今ふと思い出した。大根監督は「バクマン。」にて、実写ではあるが近いコンセプトでものづくりをしていた。そりゃ興奮もするわ。
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独特なアート感は、アニメ「四畳半神話大系」などを連想させるものでもあった。
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マルチバースたのしい
違うバースからの来訪者をきっかけに、本作は急加速で楽しくなっていく。「これどこまでいけるんだ?!」という無限の可能性が一気にひらけるからだ。
何かが絶望的に古臭いジャパニーズ・マンガ的な女の子ペニー・パーカー。手塚治虫のヒョウタンツギにしか見えないが一応無関係らしいブタマンのピーター・ポーカー。突然の白黒、スパイダーマン・ノワール。
大体こういう世界観なんだなと把握しつつあったところを一気にぶっ壊しにくる、テイストの違いすぎる“スパイダーマン相応キャラ”たち。わたしのように元ネタを知らずとも単純に楽しめるけど、熱心なアメコミファンの人なら身震いするほど興奮してしまうのだろう。ちょっと羨ましい。
架空のニューヨークがときめく
過去のスパイダーマン作品同様、ニューヨークが舞台になっている。愛する気持ちを呼び覚ます街はアニメで見てもときめく。
スパイダーマンといえばクイーンズボロ橋のイメージがあるのだけど、今作ではブルックリン橋がフィーチャーされている印象だ。張り巡らされたワイヤーの「ウェブ」感といい、考えてみればブルックリン橋がお似合いなのではと思ったりもした。
わたしが「四畳半神話大系」を観て京都に魅了されたように、多くの人が例えば新海誠作品で新宿に魅了されたように。アニメに落とし込まれた実在の街というのは独特の魅力がある。
IMAX 3D
近場で上映されている字幕版が一択だったので、IMAX 3Dでの鑑賞となった。IMAXは一度だけあるが、IMAX 3Dは完全に初体験。相変わらず3Dメガネとの相性はあまりよくない。慣れるまでに1時間ほどかかる。
3D、総じて悪くはなかったけれど知っておくべきことがひとつあると思った。それは、コミックの世界を再現するために意図的な「色ズレ」が使われているということ。こういうやつ。
これ、じつは鑑賞中ずっと「メガネの調子がおかしいのかな」と思ってしまっていた。うまく3Dになってない3D映像、みたいな感じなのだ。この演出が多用されている以上、どちらかというと2Dのほうがストレスなく楽しめるんじゃないかという気もした。コミックだし。
というわけでIMAX 2Dがあればそれをより推したい。意外と万人向けの超エンタメ作品なのでぜひとも映画館でどうぞ。現実世界でもやたらと「バース」の多いスパイダーマン、そのわけがわかる映画になってます。あれ、文体戻ってきちゃった。
(2019年33本目/劇場鑑賞) デップーちゃんいたよね。