353log

主に映画の感想文を書いています

ドキュメンタリー「大林宣彦&恭子の成城物語(2019)」ほか雑感|大林映画は“夫婦”の作品

f:id:threefivethree:20200809103853p:plain

U-NEXTで『ノンフィクションW 大林宣彦&恭子の成城物語 [完全版] ~夫婦で歩んだ60年の映画作り~』を観ました。元々はWOWOWで60分番組として放送されたもので、現在U-NEXTほかで配信されているこちら82分尺の「完全版」は昨年の東京国際映画祭にて公開されたものだそうです。監督は犬童一心さんと高橋栄樹さんのダブルクレジットになっています。


大林監督が亡くなられて以降(というかわたしが知るようになったのが亡くなられた後なわけですが)、最晩年の監督を追ったいくつかの番組を観ました。

これは2018年と2019年にそれぞれ放送されていたNHKの番組で、どちらも『海辺の映画館─キネマの玉手箱』撮影の舞台裏を見ることができます。ただし単なるメイキングではなくて写されているのは例えば、体力が落ちて思うように仕事ができず苛立っている姿や、広島の記念公園で意に反する仕事をさせられ激怒している姿。大林監督に抱いていた穏やかなイメージとは逆の、観ていてつらくなる映像の連発でした(恭子夫人ですら「あんなふうに怒っているのは初めて見た」そうです)。

そんななか、見かねた浅野忠信さんがスタッフを叱咤する場面は胸が熱くなります。完成した『海辺の映画館』劇中でも浅野さんは大活躍されていますが、この内幕を知った上で見るとより大きな存在に思えました。また、女優としてではなく家族のように監督に付き添う常盤貴子さんの姿なども印象に残っています。

今回の『大林宣彦&恭子の成城物語』も同時期のドキュメンタリーですが、こちらはタイトルの通り「夫婦の物語」。一転してとても心温まる作品となっていました。大林夫妻の生まれ育ちから、成城大学で出会い、恋に落ち、結婚。そしてそこから共に過ごした60年の映画人生。壮大なラブストーリーです(っていうか本当にラブラブです)。

おふたりの若い頃の写真など、まったく観たことがなかったので新鮮でした。監督はずっと優しい目のままだし、恭子さんもちょっとクセのある可愛さがとっても魅力的。恭子さんは初期の作品で主演されていたということで、最初のミューズだったのですねえ。

『HOUSE/ハウス(1977)』で商業映画デビューした監督を恭子さんは裏方から支えていくのですが、『転校生(1982)』からプロデューサーとしてクレジットされるようになります。このあたりの経緯や恭子さんの考え方が、前時代的ではありながらとても尊い。とにかくこのドキュメンタリーは大林夫妻が「尊いです。こんな結婚ならしてみたいなと思いました。のちに恭子さんがプロデューサーとして賞を獲った際の監督のスピーチなどもぼろぼろ泣けます。寄り添って60年、妻に「今日もきれいだよ」と言える男性が一体どれほどいるでしょうか。

この前に、『映画で未来を変えようよ 〜大林宣彦から4人の監督へのメッセージ〜』というNHK BS1の番組も観ました。

監督が亡くなる間際に名前を挙げたという4人の監督(岩井俊二手塚眞犬童一心塚本晋也)がそれぞれ監督への想いを語っていくものですが、そのなかで犬童一心監督はこんなことを言っておられました。

「あの年まで映画作家としてやり切れたというのは恭子さんがいたからだと思いますよ。ほとんど“コーエン兄弟”みたいな感じで“大林夫妻”みたいな感じなんですよ僕から見てると。大林宣彦という才能とか想いだけでなく“夫婦”で見ていかないと、続いてないしやり切れないし、大林さんはああいう形になっていない」

犬童監督は『成城物語』を手がけたことでよりこう思われるようになったのかもしれませんね。この番組を観て以降、タイトルクレジットの「大林恭子」がものすごく大きなものとして見えるようになりました。

いろいろ調べていると恭子さんのアイデアが前面に採用されているケースも多々あって、最新の例では『海辺の映画館─キネマの玉手箱』の『海辺の映画館』は恭子さんが考えたタイトル、『キネマの玉手箱』は監督が考えたタイトルだそうです(出典「キネマ旬報4月下旬号」p15)。実質『恭子─宣彦』という相合傘のようなタイトルなのですね。

監督亡き今、恭子さんの語る「大林映画もうひとつの側面」にとても興味があります。本など書いていただけたら嬉しいなあと思います。

大林宣彦&恭子の成城物語』はU-NEXTやPrimeVideoなどで、先に挙げたNHKの番組2本はNHKオンデマンドで視聴可能です。最後に挙げたBS1の番組はオンデマンドがないようなので再放送があればぜひどうぞ。あと先日、こちらはBSプレミアムで『ニッポンの夏 長岡の大花火を味わい尽くす!』という番組も観ました。『この空の花 長岡花火物語(2011)』のテーマ曲が使われた恒例のプログラム、初めてちゃんと観ましたが、これは生で観たい……。早ければ来年、長岡花火、行ってみたい……!!

(2020年125本目/U-NEXT)


そして引き続き、最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』劇場公開中です! 大林監督が『成城物語』で「この映画が出来るまでは死ねない」と絞り出していた姿、頭に焼き付いています。