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映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021)」感想|予習復習は裏切らない!〈前半ネタバレなし〉

MCU27作目スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観ました。

この前置き部分はネタバレなしです。ただし「予習復習」について触れるためつまりはそういうことか、くらいの察しはついてしまうかもしれません(予告映像で既にMCU外のキャラが出ているのでそこは勘弁してください)。その後、注意書きとポスター画像を挟んでネタバレ雑感に入ります。そんな感じで、よろしくお願いします。

最初にひとことふたこと言わせていただくと、すごかった……! フェーズ4のMCUについていけなくなってきたな〜なんて方も、これはスルーしないほうがいいやつ。でも予習復習は必須!でした。

さて、まずわたしの「先週まで」の『スパイダーマンリテラシーですが、「一応MCUでは追ってるけど、過去のシリーズはほぼ未見」といったところ。ついでに最近のMCUとも倦怠気味。しかし本作は公開後やたら評判がよく、Filmarksでも4.7点?!がずっと持続してる?!(今見たら4.6点に下がってましたけどそれでも普段見ない数字)

じゃあまあ早めに観るか〜と思って諸先輩方に相談してみると、口を揃えて「過去シリーズの予習は必須」とおっしゃる。職場の柔和なバイトくんまでそこは頑なな表情を見せている。承知しました、オタクの本気スイッチを入れます。てなことで、平日仕事後の時間を全て捧げ、サム・ライミ版の『スパイダーマン』全3作アメイジングスパイダーマン』全2作の計5本を3日で履修。

さらに、ここまできたら!とMCU版『ホームカミング』『ファー・フロム・ホーム』も追加で復習。4日で計7本観ました。満を持してとはこのこと。もうウェブシューターなしで糸出るレベルです。

で、果たしてここまで本気の予習復習が必要だったのか?と思いつついよいよ鑑賞してきたのですが、何度も言いますが、必要だった! 予習復習の甲斐しかなかった! 諸先輩方に感謝……!!

以上、長い前置きでございました。本作未見の方の、わたしと同じくらいの熱量でMCUおよびスパイダーマンと接していた方の参考になれば幸いです。それでは以下、ポスター画像に続いてネタバレ雑感となります。


映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」ポスター
映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」ポスター


ひとことで言えば

「すごかった」。逆に言えばそれ以外の言葉もすぐにはあんまり出てきません。大人の本気を見たといいますか、こんなんよくやるわ……。スパイダーマンというコンテンツに思い入れがなくても予習復習をしっかりして臨めば必ずこの「すごかった」が得られる作品であり、そして本作を経てしっかり思い入れもできました。全シリーズの価値がいい意味で均等化されるような作品でもあったんじゃないでしょうか。

ヴィラン

全く何も知らない状態で最初の予告を見たときには、なんかタコみたいなグラサンおじさんが出ててきっとこの人にみんな興奮してるんだろうなと思ってましたが、今思うとパッと見の範囲でもグリーン・ゴブリン要素まで大写しされてたんですね。変わらぬウィレム・デフォーにうわあすごいと声が漏れてしまいました。

そして彼らと戦うのではなく、最初はまず「助ける」ほうに展開していくのがおもしろい。まあ結局そうはいかないわけですが、オクタビアスヴィランズのなかでも可哀想だなあと思っていたので早く治せてよかったです。ていうかあのペアリング(笑) まさかのBluetooth接続。

サンドマンやエレクトロ、リザードなんかはキャラが弱めなので(弱いか? いや、地味だと思う。少なくともわたしなら直近で観てなきゃ覚えてる自信がない。サンドマンの背景なんて特に)、予習復習してた甲斐がありました。ああいうところで「誰?」ってなっちゃうとなかなか乗れないですからね。

スパイダーマン

これはネタバレ的要素を踏んでなかったので、そこまでのヴィランズの豪華投入っぷりを目の当たりにしたうえで「ということは、来るのか? 来るよな??」とドキドキでした。最初にアンドリュー・ガーフィールドのピーターが登場したときは妙に感動しちゃった。たった2作のお付き合いだけど好きだったんだなと気付きました。

トビー・マグワイアのピーターは思いのほかお年を召されていたものの、レジェンドみがあってやはり感動的。すごい、って感じです。一人だけ天然ウェブなのをいじられているのもよい。よく知らないトムホピーターから「スパイダーマン2」ってナンバリングされちゃうのは可哀想。MJといい関係を保てているようで、何よりです。

アンドリューピーターで脚本に感謝したのは、グウェン喪失の重みをしっかり入れてくれたこと。あんなんピーターじゃなく脚本が悪いんだけどさ、アンドリューピーターはあっちの世界でずっとその苦しみを抱えて生きて、終盤こっちのMJを間一髪救うでしょう。あれは彼にとっても救いになったはずで。……なんてことを考えて目頭あたためていました。

3人の揃ったシーンでわたしが連想したのは「ソロシンガーがライブでゲストシンガーと歌っているときみたいな感じ」。坂本真綾さんが25周年ライブでla la larks内村友美さんと歌っていたときのような、B'z稲葉さんが対バン企画UNITEでミスチル桜井さんと歌っていたときのような、要は「重責の分散」。ヒーローはフロントマンであり、常に重責がのしかかっていることを改めて気付かされるシーンでした。

MJ、ネッド、まわりの人々

トムホピーターはつくづく友人に恵まれたなと思います。MJとカップルになってもなおナチュラルに続くネッドとの関係性。「3人組」がすごく素敵に描かれていました。そしてそんなかけがえのない彼らとの関係を一旦断つことにしたピーター。あえてビターな後味になっているけれど、とても寂しくてもどかしいけど、あの3人ならきっと大丈夫。

メイおばさんはついに悲劇のターゲットにされてしまって……。そうか、この世界ではベンおじさんポジションだったんですね。そもそもこっちのメイおばさんって未亡人だったんだっけ? あ、やっぱりベンおじさんを亡くしてはいるのか。スパイダーマンはやたらと死ぬなあ、人が……。

5年分遅れをとったストレンジ先生の翻弄されっぷりはなかなか愉快。でもあの幾何学な世界はめちゃめちゃわくわくする! からの、魔術より数学! 文系が言うのもなんですが、本作は敵味方どっち向いても理系ばかりなのがいいですね。科学者数学者、それらの卵、しか出てこないのでは? 魔術師が所在ないのもやむなし。

といったところで、にわかがにわかに語れるのはこれぐらいでしょうか。クイーンズボロ橋とトラムウェイから始まるのもよかったなあ。

これは最近すごく思っていることなんですけど、シリーズものを観るときは予習復習をちゃんとしないといけないなと。大いなるコンテンツには大いなる文脈が伴うとでも言いますか(うまく言ったふう)、そこは最低限の礼儀なのかなと個人的には考えるようになりました。「わからなくてつまらなかった」は作り手側に対してフェアじゃない。わかった上で、でも好きじゃなかったと、言うなら言いたい。あ、本作は「わかった上で、超おもしろかった」です。

以上、『ノー・ウェイ・ホーム』感想でした。全てのバースに幸せがありますように(さっそく次が不穏!)。

(2022年14本目/劇場鑑賞)

MCU版は、当時あんま楽しめなかった『ファー・フロム・ホーム』を観直しておいたのがよかったなと思います。ピーターMJネッドの3人組、メイおばさんとハッピーの関係など、記憶に新しかったおかげで今回はドラマ部分をたっぷり味わうことができました。あとアンガーリー・ライスさんのベティがね、可愛いんですよね。ちょっとだけど今回出てきて嬉しかった。やっぱり可愛かった。