353log

主に映画の感想文を書いています

映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋(2021)」前作も含めた感想(今作ぶんは非常に辛口です)

今や和製トム・クルーズとの呼び声も高い岡田准一さんの主演映画ザ・ファブル(2019)および現在公開中の続編ザ・ファブル 殺さない殺し屋』を観ました。

先に書いておくと、「前作よかった!」「今作は合わなかった」という内容になります。と、いうか、書き進めていくうちに「合わなかった」どころか暴言になりました。2作目がお好きな方は読まれないほうがいいと思います。あらかじめ、ごめんなさい。

1作目『ザ・ファブル

これは好きでした! 攻殻機動隊さながらお約束のように料亭バトルから始まり、超一級の殺し屋が冴えない一般人として身を潜める様は「カタルシスの予兆」で楽しめる。そう、先週『Mr.ノーバディ(2021)』を観たときに「観たことないけどファブルもこんな話なのかな」って思ったんですよね。鑑賞動機のひとつでした。

キャラクターも魅力的で、安田顕さん柳楽優弥さん向井理さん光石研さん佐藤浩市さんらが演じるクセの強いヤクザ者たち(安田顕さんの作画が良すぎる)、山本美月さん演じる素朴な魅力の「一般人」、そして岡田准一さん演じるファブルは言うまでもなく、最も魅力的なのは木村文乃さん演じる「ファブル改め佐藤の妹」。木村文乃さんのギャルい茶髪ロングとノリツッコミキャラがめちゃくちゃハマってるんですよね〜〜。端的に言って最高です。

コミカルすぎる猫舌キャラとかジャッカル冨岡とか冷ややかな気持ちになってしまう要素もあるものの、全体的には緩急バランスよくまとまっていると思いましたし、岡田准一さん自ら「ファイトコレオグラファー」として専門的に携わったという売りのアクションも楽しめました。

このあと続編に苦言を呈すことになってしまいますが、それはそれとして1作目は単純におすすめです!

(2021年93本目/PrimeVideo)

2作目「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」

映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」ポスター1作目があれだけ魅力的に仕上がっていたのだから2作目はもっとブラッシュアップされて文句のつけようがないくらい楽しめるだろう、と思っていたのですが、ううん?? どうしてこうなった?? というのがわたしの感想。ただfilmarksなどでざっと感想を眺めていると好評価しか見当たらないので「当たりどころが悪かった」みたいな感じなのかもしれません。一意見としてお納めください。

序盤はとてもよかったです。ギョッとしてしまう暗殺アクションの連続は、前作よりもさらにファブルの得体も知れない感が表現されていて目を見張るものがありました。堤真一さん演じる新キャラのマッド感も掴みよし! しかし、同じく序盤の見せどころである「落ちる車」のシーンあたりで早くも最初の「ん??」が。

苦言1:もったいぶりアクション

今回の苦言ポイントは大きく分けて2つあります。まず1つ目は、アクション門外漢だけど「ん??」と思ってしまう「見せどころのもったいぶり」。

まずあの車、なかなか落ちないんですよね。せっかく本当に落として撮ったんであろうに、その「あっけなさ」が全然出てなくてもったいない。むしろ本当に落としてはいないんじゃないかなと思っちゃう。

同様に、のちの「団地の扉」と「地雷」、このへんももったいぶりが過ぎます。団地の扉に関してはまさかのスローモーションでしか見せてくれないし、地雷も一体何度繰り返すのよと。見せどころなのは分かったから普通に見せてよと。さらに、そこで彼女の走馬灯みたいなの見せられてもそんな、これまで描かれてない初出の走馬灯もどきにストーリー的価値はないわよと。

なんていうか、編集が非常にもったいないんだと思います。最大の見せ場である足場アクションなどはメイキングをちょっと見ただけでも「うわあこれ本当にやってるんだ」と感動してしまうし、岡田さん含む現場はものすごいことをやっているのでしょうが、せっかく撮った映像をことごとく殺している、気がする。

注意:以下、特に暴言です。

苦言2:前時代的すぎる性的搾取描写

こっちがメインです。これがなければ、アクション云々は別にどうでもよかった。

この問題、前作からありはしたんですよね。なんかヌル〜く処理される盗撮問題、身体を売らせようとする悪漢。気にはなったんですが、まあまだぎりぎり許せるラインでした(あくまで個人的に)。「ヤクザ」という、リアリティラインの薄い設定のおかげでもあるでしょう。

しかしヤクザ要素の抜けた本作。これだけ現実世界が変わっているというのに盗撮問題はエスカレートし、ただただ不快な自慰シーンが差し込まれ、山本美月さんはなぜか服を脱がされ、平手友梨奈さんに至っては明確な性行為に及ばされる。しょうもないシモのギャグが意味もなく間を埋め、ジャッカル冨岡はクソみたいなことをやらされてる(韓国ドラマを馬鹿にしてるのも許せない)。

いずれも原作漫画にはある要素なのかもしれません(ノーチェックです)。でも仮にそうだとして、それを「どこまで映像化するか」というのはまた別の話だと思います。実際の盗撮映像を見せずとも盗撮は表現できるはず。あそこで山本美月さんが毒蛇セーターを脱ぐ必要は全くない。平手友梨奈さんのアレは、スカートをまさぐられるくらいでもいいだろう。あとは想像できる。最後に堤真一さんにそのものずばりなワードを言わせる必要もない。ジャッカルは……今!!!2021年だぞ?!?!

ていうか、これが「G=誰でも鑑賞できる」なのか?! 違うだろ。子供にあんなシーン見せてどうすんだよ。鬼滅の刃どころじゃねえよ。

途中で席を立ちたくなるくらい不快極まりない前時代的演出の数々。なんでこうなっちゃったんだろう。残念でなりません。アクション云々の前に、この倫理観では到底世界に顔向けできない。出したら恥だと思います。

すみません。なんか思いのほか、腹が立ちました。確実に人を傷つける文章を書いてしまった自覚はありますが、そのまま出します。

(2021年95本目/劇場鑑賞)
最後の最後にせめてものフォローでもう一度だけ書いておきますが、前作はおすすめです。