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映画「ファーザー(2020)」感想|認知症を擬似体験する映画

映画「ファーザー」ポスター公開中の映画『ファーザー』を観てきました。主演のアンソニー・ホプキンスは本作で第93回アカデミー賞の主演男優賞を獲っています。

こちら、そんなに多くを語るような映画ではないのですが、ざっくり言えば「認知症」を扱った作品です。認知症の兆候が出てきた80歳の父親アンソニーと、そうとは認めない父親にヘルパーを付けようと四苦八苦する娘オリヴィア・コールマンの苦悩を描いています。

地味な映画なのかなと思うかもしれません。確かにハデな映画ではないでしょう。しかし演出にはかなりギョッとさせられます。まずは冒頭、ああこりゃジイさん完全にボケちゃってんなあ大変だなあ、などと普通に観ていると突如「えっ?」。そこからもどんどん「えっ??」。

じつはこの映画、認知症を患った人の目線で認知症の擬似体験ができるようになっているのです。5W1H何もかもが揺れ動き、何が本当かわからない。何も信じられない。突如ループに突入したりもする。それがずっと続く。という状況の「映像化」。

ほぼ満席状態だったTOHOシネマズシャンテ、エンドロール中の呆然感がなかなかでした。この映画は誰にとっても「自分事」。いつか自分の身にも降りかかるかもしれない、抗えない現象。この先わたしは年老いていくのが怖くなってしまいました。

身近に潜む「老化」というホラー、サスペンス、それでいてときにコメディ。ううむこれは確かにアンソニー・ホプキンス主演男優賞も納得の、すごい映画です……。

(2021年94本目/劇場鑑賞)