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主に映画の感想文を書いています

「トキワ荘の青春('96)」「電車を止めるな!('20)〈音声ガイド付〉」書きそびれ感想

ずるずると書きそびれてしまった感想を2本ぶん。どちらも田端のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」にて直近で取り上げていた作品ですが、上映期間中に書けなくてすみません!

トキワ荘の青春(1996)」デジタルリマスター版

映画「トキワ荘の青春」ポスター手塚治虫石ノ森章太郎藤子不二雄赤塚不二夫などそうそうたる漫画家たちを生んだ伝説のアパート「トキワ荘」を舞台にしたドラマ映画。本木雅弘さん演じる寺田ヒロオの、いちばんマトモなのにどんどん取り残されていく感がじんわり切なかった。漫画家とは過酷な職業である……。

そのほか主要キャストに阿部サダヲさん、古田新太さん、生瀬勝久さんなど、今となっては超豪華キャストに見えるのだけど公開当時はまだ小劇場などを中心に活動していた方が多かったそう。そのあたりも物語とリンクして興味深い。

個人的に印象深かったのは大森嘉之さん演じる赤塚不二夫。大森さんは大林宣彦監督の『青春デンデケデケデケ(1992)』がとても魅力的だったのだけど、本作の役どころも不思議な魅力がある。阿部サダヲさんの藤子F先生も、なんかすごい雰囲気あって好き。

特別何が起きるというわけでもなく、昭和の空気感と青春のほろ苦さを味わう映画。

(2021年81本目/上映用の字幕チェックを兼ねて鑑賞)

「電車を止めるな!(2020)」音声ガイド付き

こちらも字幕チェックがてら初見した作品。シネマ・チュプキではまさに電車が止まらん勢いのロングランとなっていたが、チュプキにおいてこの作品はバリアフリー活弁士・檀鼓太郎さんによる音声ガイドが売りとなっており、今回はガイド聞きたさに劇場で再鑑賞。

音声ガイドというのは通常は映画本編にのみ付いているものだけれど、本作のガイドはなんと上映前の時間から「前説」が流れており、本編中で説明しきれない補足情報をあらかじめ楽しく教えてくれる(ちょうど朝ドラ再放送で『澪つくし』を観ていたため、「澪つくし号」などタイムリーな情報もあった)。これは他の作品にも採用してほしいスタイル!

本編ガイドも「補足」の域を超えた楽しいものになっており、例えばニコニコ動画的「流れるコメント」の演出では実際にそのコメントたちが読まれていく。もともと「ツッコミ」の役割があるコメントが声として聞こえることで、コメディとしての可笑しみも上がっているように感じた。

補足的なガイドに関してもガイドというよりは「実況」のようであり、特に印象的だったのが「電車が止まらない」シーンでのさながらスポーツ実況なカウントダウン。見事に手に汗握った。もう音声ガイドなしでは物足りなくて観られない。

こちらもチュプキでの上映は終わってしまったのだが、そのうちまた再上映がありそうな気がしてならないのでその際にはぜひご覧いただきたい。……うっかり固い文体で書いてしまい偉そうですが、ぜひ、ご覧ください。

なお、劇中に登場する銚子電鉄オリジナルグッズ(主にお菓子)の数々はチュプキにて6月中は販売を続けるとのことです。映画を観終えて出てきたら本当に売ってる、ってのは確かになかなか購買意欲をかき立てられるものがありました。

(2021年89本目/劇場鑑賞)