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映画「クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2020)」感想|前作を復習しておいたほうがいい

クワイエット・プレイス パート2』もといクワイエット・プレイス 破られた沈黙』を劇場鑑賞してきました。絶対『パート2』のほうがかっこいいと思うんですけどね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー 悪夢の摩天楼』とか嫌じゃん。

さておき、2018年に公開され大ヒットとなった『クワイエット・プレイス』の続編たる本作。地球外生命体の侵略的サムシングにより荒廃した世界で命からがらサバイヴする一家を描いた前作は、ポップコーンも食べれないほどの静寂を売りとした新感覚ホラー映画でした。

というのも、地球に巣食う謎のクリーチャーたちは聴覚が発達しており、少しの物音でも感知し襲ってくる。だもんでコピーにあるように「音を立てたら即死」なわけです。そんななか、主人公一家にはかろうじて生き残る術がありました。長女が聴覚障碍者だったため、家族全員が「手話」でコミュニケーションを取ることができたのです(演じるミリセント・シモンズさんも実際に聴覚障碍者)。

とはいえクリーチャーは非常に凶暴で、生き残りたくば息を潜めているほかないことには変わりありませんでした。しかし前作ラスト、ついに奴らの弱点を発見します。「こいつ……勝てる……!(ジャキッ)」。今回じつは『パート2』鑑賞後に前作を観直したのですが、やはりこのラストは最高にアガる!滾る! ホラー映画でブチアガるラストってなかなかないのでは?? 改めて傑作だと思いました。


以上が前作までの簡単な紹介。続き物なので前作は観て(観直して)おいたほうが楽しめます。前作の細かいことを忘れていて少々置いていかれたわたしからのご提案。

ポスターに続いて、ネタバレ控えめな『パート2』雑感です。

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映画「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」ポスター


置いていかれ気味なパート2雑感

前作「ジャキッ」の続きもしくは後日譚かと思いきや、想定外の「DAY 1」から始まる今作。すっかり設定を忘れていたわたしですが、活気ある街の雑貨屋に置かれた「スペースシャトル」のおかげで前日譚だと気付くことができました。ああ、これから「来る」んだ。

平和な休日、家族で野球応援。ピッチャー振りかぶって「未曾有」が舞い降りる。日常一転しての非日常、不謹慎な高揚感。なるほどこれが事の発端。そのあとは皆様ご存知のとおり一気に飛んで「ジャキッ」。いやはや、今度はオープニングから滾るぜ……。

なお最高のクリフハンガーで終わった前作ですが、続編を作る気は全くなかったのだとか。なのにしっかり思わせぶりの「DAY 89」から始まってる前作、すごい。またあの街(の新品)を作ってるのもすごい。前作のアウトテイクかと見まごう巻き戻しっぷりでした。

ただ個人的には、前作の細部を忘れていたことによる「不必要な置いていかれ感」がちょっとノイズになってしまいまして。本作、キリアン・マーフィー演じる「エメット」というキャラクターが登場するのですけど、この人物、設定的には主人公一家と旧知の仲なんですよね。なのでエミリー・ブラント演じるエヴリンは劇中その設定で「再会」する。この時わたしは思った。あれ、ごめん、この人誰だっけ、覚えてないや。それもそのはず、新キャラなのである。

もちろん、序盤「DAY 1」で描かれているキャラではあります。のちの伏線となるやり取りをリーガンとしていたりもする。とはいえ薄暗がりの再会で気付けるほど印象的ではなくて。主人公一家のために危険を冒してくれているのはありがたいんだけど、大変申し訳ないのですけど、どなた様でしたっけ。そのもやもやがずっとずっと付きまとってしまうことに。

これ、前作の記憶が新しければ問題ないんです。「この人は、観客は知らない新キャラである」と自信を持てる。でも前作の記憶あやふや〜〜な気持ちで観ていたもんでノイズになっちゃった。そんなわけで、記憶力に自信のない方は前作、ほんの90分ですし復習しておかれることを再度おすすめしておきます。もしくは「エメットは新キャラ」と覚えて帰ってください。

(ほぼ自分のせいなのにイチャモンをつけるとすればあの役、「初対面の人」でも良かったような気がするんですけどね。前日譚に伏線を仕込みたかったのかな……)

他にもノイズになっちゃった部分はいくつかあって、エメットに「娘を助けて!」ってお願いするの、流れ的にはそれエヴリンが行くほうが自然じゃない?とか、ひとり冒険していたリーガンが「どう考えても別にわざわざ入らなくていい車両」に入っちゃうの謎すぎるとか(左右ガラ空きなのに……)(もとは救急箱目当てというわけではなかったでしょ、きっと)、んでもって危機一髪でエメットが来るのご都合すぎるとか、そのへんでちょっと醒めてしまったのが惜しかったです。

最終的な成長物語も前作の「ガチャッ」同様アツかったのですけど、いったん斜に構えちゃったもんで「なんで初めての放送局をそんな使いこなしてんのよ」なんて思っちゃう始末。掴みは最高だったし面白かった、でも、復習しとくべきだったなあというのがとにかく初見の感想となりました。

はみ出し雑感

  • 前作を観直していて、この世界が「2020年」の時代設定だったことに気付く。今作では前作よりも月日が経ち「物音を立てずに生活する」ことがだいぶ日常的になっている。勝手にコロナ禍映画として観てしまった。

  • 前作を観たのは初めてのニューヨークひとり旅の往路、飛行機の中。英語字幕で観たのにすごく楽しめた記憶があって、多分なんか美化しちゃってるところもあるのだと思う。久しぶりに旅行記を読んだら我が事ながらおもしろかった。

  • いざニューヨークへ着いたら、今度は『メリー・ポピンズ リターンズ(2018)』のエミリー・ブラントに見守られる日々だった。エミリー・ブラントには縁がある。

  • 映画館でこのシリーズを観るのは今回が初だったのだが、「静寂」が本当にすごかった。近くに座っていた人は、ポップコーンをつまむ手が硬直してしまっていた。ていうかこの作品は、ポップコーンお売りできませんってしたほうがいいと思うレベルだよ。喰われてる時くらいしか食べる暇ないもん。食うか食われるかだよ。

  • 本作に限らず、映画館で体験する「無音」が好きだ。耳鳴りのするような静寂。あれは何なのだろう、「無音を表現する音」が鳴っているのだろうか。それとも本当に無音なのだろうか。透明度100%だと透明すぎて存在を意識できないのと同じように、音も「無音が聞こえる」ような仕掛けがあるのだろうと思っているのだけど。

  • ネットに上がってる各種インタビュー記事、どれも興味深かった。作品とは関係のないところで、実際の夫婦であるジョン・クラシンスキー監督との仕事についてエミリー・ブラントが語っている「仕事をしている時、人は普段より少し違うと思います。一旦家庭を離れると、仕事中は違ったモードにスイッチするはず。その違ったモードでいることを、パートナーとして許すだけです。家にいる時や料理している時とは、少し違う人であるという事実を許すことが大切でしょう。」という発言が、様々なことに当てはまるような気がして響いた。

  • 監督がミリセント・シモンズさんに続編の脚本を見せた際「これから脚本を送るけど、まず知っておいて欲しいのは、あなたがこの映画の主人公だから」と伝えたっていう話、前作ラストの父娘にリンクしてしまってだめ(涙腺)。


以上、いいのか悪いのかよくわからん方向性の感想垂れ流しでした。

(2021年91本目/劇場鑑賞)