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ドキュメンタリー「<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事(2019)」を観た

「<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事」メインビジュアル

この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の制作・公開に密着したドキュメンタリー映画『<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』を観ました。

一応補足しておくと『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』とは、2016年に大ヒットを記録したアニメーション映画『この世界の片隅に』に約40分の新たなシーンを追加したアナザーバージョンの作品です。


さて本作、内容的にはそれこそ最近とても話題になった庵野秀明監督の『プロフェッショナル』的なものですが、庵野監督と比べたときの片渕監督の「真人間」感が半端ないので、受ける印象はだいぶ違うと思います(笑)

とはいえ共通してこれでもかと伝わってくるのは、アニメ作りとは本当に地味で微細で時間と手間のかかる仕事であるということ。主力アニメーターさんに「写経みたい」と言わしめた「着物の柄」の件などはその最もわかりやすい部分で、そのシーン観てるとき何も思わなかったわ……いや、何も思わせない=自然であることを目指しているのだから大成功なのか……。

また非常に心底感服リスペクトしたのが、監督自らプレゼンテーションしてくれる「どこなのか」の件。もはや「漫画原作のアニメ」なんてワードを安直に使えなくなってしまうような学者レベルの調査。これは出題者たる原作者・こうの史代先生もすごいし、その問いにひたすら真摯に立ち向かう片渕監督もすごい。「72時間の男」さんもすごい。

その他にも各部門のプロフェッショナルたちが次々と登場。『さらにいくつもの』から追加キャストとなっている声優・花澤香菜さんが、のんさんと並んでアフレコする光景を見ることもできます。片渕監督から「もっと肺炎の度合いを強くできますか」とディレクションされて激しく咳き込む(演技)花澤さん、これはなかなかレア映像かつ、プロってすごい!映像です。

余談ですが先ほど「写経みたい」と漏らしておられた主力アニメーターさんは中盤(59分あたり)、ポップな書体で「ALL CLEAR」と書かれた薄紫色のTシャツを着ておられます。わたしは気付いてしまいました。こちら、マイスイート坂本真綾さんの2018年のツアーグッズになります(参照)。ファンでいらしたんですね。ご多忙をぬってライブは行くことができたんですね。よかったです。

※こんなのもありましたね。


音楽を担当されたコトリンゴさんのふわあ〜っとほんわか感も見どころ。それでいてあの的確な仕事とプレイ、美声。『この世界の片隅に』の世界観はまず「絵」があって、のんさん演じるすずさんの「声」があって、そしてコトリンゴさんの「音楽」、この三位一体でございますゆえ、いやはやプロの皆様お見事です。

それではここで、KIRINJI在籍時のコトリンゴさんが歌う坂本真綾『うちゅうひこうしのうた』と、坂本真綾さんが歌う『悲しくてやりきれない』をお聴きください。


全国、さらには世界各国の映画館巡りも印象深かったところです。海外でこの作品があんな歓迎を受けているのはとても感動的でした。国内では、日本最古の映画館「高田映画館」さん、存じ上げませんでしたがすごい。2階席のある映画館、行ってみたい……。

そうそう、で、このドキュメンタリーを観るきっかけになった「水口マネージャー」のご登場シーンもしかと拝見いたしました。本当にどこにでもいらっしゃる。昨日お会いできたことが天文学的確率のように思えてきました。

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2021年6月6日の水口さん。シネマ・チュプキ・タバタにて。

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直接いただいた「さらにいくつもの」のイラストポストカード。


ちなみに「水口マネージャー」はシネマ・チュプキで本作を上映した際、音声ガイドのナレーションも担当されたとのこと。ご自分の登場シーンをどうガイドされたのか気になります(笑)

てなわけでついあれもこれもと書いてしまいましたが、端的に言えばとてもとても素晴らしいドキュメンタリーでした。どうしてか覚えてないけれど途中からティッシュが手放せないくらい響いてくる内容でした。『この世界の片隅に』をご覧になられた方であればこちらの作品も間違いなくおすすめです。そうでなくとも観たくなると思いますのでおすすめです。

(2021年83本目/U-NEXT)

なお、いちばん笑ったシーンは「ザビエル組」です。