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映画「神在月のこども(2021)」感想|劇場用アニメって難しい世界だなと思う

観てから2週間くらい経ってしまったんですけども、今年の劇場鑑賞一発目はシネマ・チュプキ・タバタにてアニメーション映画神在月のこども』を観ました。

去年チュプキのスケジュールを確認していたら1月前半ラインナップの最初が本作だったので、確かこれはマイスイート坂本真綾さんが参加しているやつだと思い、2022年を坂本真綾ボイスで始められるじゃんと歓喜。さらには昨年から「スクリプトドクターのサクゲキRADIO」を愛聴している三宅隆太さんも脚本に参加されてるということで、どんどん期待が高まってしまった、のがいけなかったか。まあつまるところ、合わなかったです。


映画「神在月のこども」ポスター
映画「神在月のこども」ポスター/2月にはNetflixでの配信も始まるようです


掴みは良くて、わたしの無知ゆえとも言えるのですが、タイトルになっている「神在月(かみありづき)」のこと。神無月じゃないんだ、なんて思ったのですけど、出雲地方では神無月(10月)のことをこう呼ぶのだそうです。そもそも神無月というのは、日本全国の神々が出雲に集まる時期、つまり全国各地から神々が不在になってしまう時期で、だから「神無月」。ただし出雲地方にとっては「無」どころか神々が集うことになるわけですからむしろ「神在月」。全然知らなかった〜おもしろいな〜、と引き込まれました。

また、主人公の少女が「韋駄天」の娘、とされていまして。大河ドラマ『いだてん』を開始数週でリタイアした身としては、ああいだてんって神様の名前だったんだ、きっと数段おもしろく見れただろうから『いだてん』観ておけばよかったなあ、などと少し後悔しながら観ていました。他にもとにかく日本の神々にまつわる物語なので、そのへんの知識がないゆえの楽しめてなさ、正当に評価できてなさ、みたいなのは少なからずあるのだろうと思います。

そのうえで、個人的にどうも乗れないなと思ってしまったのは、まずアニメーション作品としての質があまり高くないように感じたこと。アニメって実写以上に映像クオリティが評価に直結するようで大変だなと同情もしてしまうのですが、エヴァなり新海作品なり所謂「すごいアニメ」で誰しも目が肥えてしまっているという現状、よほどお話に魅力がないと凡庸な画をスクリーンに大映しにしたときの感想は減点方式になっちゃうなあ、と。

頼みの綱なお話についても、言ってしまえば面白くないというか、子供向けアニメなのかなと思ってしまう「どこかで見たような感じだらけ」というか。これはキャラデザインや声のディレクションも大きく関係していると考えますが(特に坂本さんの白うさぎ、苦手だった……)、テレビで観るならいいけどスクリーンで観るのはちょっときつい。きわめつけの挿入歌の「おいおい」感も、なかなかのもので。あれは一体どういう意図のジェネリック某なのか。どんどん減点スパイラルに陥ってしまった感じです。

あとそうそう、強烈に冷めてしまったきっかけが、一瞬だけ挿入される「秒針」のショットなんですけど、本作の世界って時の流れがめちゃめちゃスローってことになってるんですよね。雨粒が止まったりしてて、そこはいい感じなんです。ただ、その「秒針」。スローとはいえ普通に動いてんの。せいぜい半分くらいのスピードで動いてんの。いやいやそれはツメが甘すぎるでしょ雨粒止まってる世界やぞ、とガン冷めしちゃって。そこ(わりと序盤)からだめでした。はい。

悪いことで締めるのもいやなので、よかったところを最後に。主人公の声を演じている蒔田彩珠(まきた・あじゅ)さん。この方、朝ドラ『おかえりモネ』の「みーちゃん」です、と言えばわかる方も多いでしょうか。本職声優さんではありませんが、とてもいいお仕事されてました。特に「わかったようなこと言わないでって言ってんの!」という台詞がすごく「みーちゃん」っぽくてよかったな、っていう『おかモネ』ファン的感想。

それからエンドロール、miwaさんの主題歌にはなんの非もないのですが死んだ目で眺めていたところ、どうやら歌詞に合わせて突然パッと画面が黒地から白地に変わるんですよね。そんで線画の主人公が走り出す。ここが、もしかしたら一番よかったかもしれないなあ。さほど集中もしてなかったのに、無意識のうちに目頭が熱くなってしまって。アニメは本当、難しい。

(2022年5本目/劇場鑑賞)

もしかするとノベライズのほうが素直に入り込める、のかもしれません。

公式サイトには、これ非常に珍しく素敵な取り組みだと思ったのですが「制作追体験」なるコンテンツがかなり豊富に用意されていて、こちらも併せてチェックしてみるとまた感想も変わってくるかもしれません。