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Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」紹介|予備知識は不要。チェスの天才少女を描いた、最高に滾る物語。

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Netflixで配信されているドラマ『クイーンズ・ギャンビット』を観ました。それはもう貪るように観ました。今年観たドラマで一番好きかも…と思うほど、めちゃくちゃ面白かったです。

これはチェスの天才少女を主人公にした物語で、全7話と非常にコンパクトな観やすい作品なんですけども、そのぶん掴みも強くて、わたしの場合は第1話を観終えた時点で「おもしれえええ……」と脳内ランキング上位に急上昇してしまいました。

魅力はたくさんあるのですが、まずは何より「チェスの対局シーンがアツい」というところを特筆したいです。これ重要な点として、わたしはチェスの知識が全くありません。将棋すら分かりません。なのに第1話で早くも「チェスかっけえええ……」となっている。それだけ描き方が巧みなんです。

そしてもちろん、主人公の魅力。孤児院出身のヒロインが頭脳とカリスマ性を武器に世界チャンピオンの座を奪いにいく成り上がりストーリーなんて、滾らないはずがありません。

そんな2点を中心に、もう少し細かく書いていこうと思います。

弱者の成り上がりストーリー

孤児院育ちな主人公の少女はひょんなことからチェスと出会い、その類稀なる才能でいつしか全国区そして世界トップレベルへと勝ち上がっていきます。社会的弱者として登場した主人公が男性優位のチェス界で最初こそ完全に舐められながらも、しかし圧倒的な実力をもって焼け野原にしていく姿はただただカタルシスの連続! 実力主義なライバルの男性プレイヤーたちが彼女をリスペクトするようになるのも気持ちのいい展開です。

またサイドストーリーとして、義母とのシスターフッド的な共犯関係も中盤の見どころとなっています。ここでは詳しく書かないようにしますが、賞金制のチェス大会と家庭の問題がうまーく噛み合ってストーリーを回していく、じつに秀逸な展開だと思いました。ほろ苦いけれど、このドラマの大好きなところです。

チェスの知識は必要ない

でも、チェスのシーンが一番面白い!

総じてこういう「専門的分野のエンタメ化」な作品というのはそのように作られているわけですけども。将棋が分からなくても『3月のライオン』は楽しめるし、競技かるたが分からなくても『ちはやふる』は楽しめる。それにしたって何も知らないチェスの対局シーンで自分こんな夢中になれるのか、という驚きがありました。

何が夢中になれるって、とにかく「かっこいい」んです。本作の対局シーンでは「頭の回転」が重点的に表現されていて、駒を置くスピード、持ち時間のタイマーをパチッと押し込む音、眉の角度、視線の揺らぎ、口元の歪み、にじむ汗など様々な要素で脳の回転数が手に取るように分かります。盤上の展開は正直さっぱり分からないのですが見せ方は毎回工夫が凝らされているし、めちゃくちゃ頭のいい人たちがめちゃくちゃ高度な頭脳戦をしていることはビンビン伝わってくる。頭がいいって、かっこいい……。

バトル漫画的な面白さ

ちょうど今『鬼滅の刃』のコミックを読んでいる最中なもんで、あ、これまさに少年漫画的な面白さだよなと思ったのが「勝ち上がり」の楽しさです。地区大会から少しずつランクアップしていって、新たなステージ・新たな敵が次々と現れ、かつての敵は今日の友になっていたりする。そして最後にはラスボスが待っている。

考えてみれば少年漫画のバトルものだって「専門的分野のエンタメ化」と言えましょう。『鬼滅の刃』の読者は「鬼」や「呼吸」について詳しいわけではなく、あくまで漫画的な「表現」から察しているだけ。バトルシーンで読者が何を楽しんでいるのかといえば、「強いらしい」「互角らしい」「致命的なミスをしたらしい」といった情報を読み取ることで手に汗握っている。本作においてもそれは全く同じです。

チェス一辺倒ではないヒロイン像

主人公が「チェスしか興味のない内向的な地味っ娘」ではなく、なんなら酒もタバコもやるし、男も気になってる。っていう普通のティーンなところ、好きです(対極として頭に浮かぶのは『3月のライオン』桐山零)。初めて手にした「賞金=自分のお金」で彼女が「チェス盤」と「ずっと欲しかった服」を買うシーンはグッときますし、勝ち進むごとにどんどん垢抜けていくのも最高です。

とにかく、主人公を演じるアニャ・テイラー=ジョイさん、この方がすごくてですね。やはりこういう「原石を磨いていく」ような、ビジュアルの洗練度合いで全てを物語っていくような演出っていうのは女優さんにしか生み出せないタイプのカタルシスだと思うんですよね。結構クセの強いお顔立ちですが、この方のヒロイン像にわたしは惚れ込んで観ていました。

といったところで、まだまだ語りたいところですがここまでとしておきます。気になられた方、ぜひ1話だけでも観てみてください。タイトルからしてなんか無性にかっこいい『クイーンズ・ギャンビット』、かなりおすすめです! Netflixでどうぞ!