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タイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017)」感想|カンニングは海をも超える! 世界規模の答案伝達大作戦

昨日観た『ハッピー・オールド・イヤー(2019)』に引き続いてタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を観ました。『ハッピー・オールド・イヤー』主演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンさんが同じく主演をつとめた作品で、2017年にタイ国内で最も高い興行成績を収めた映画とのことです。


映画「バッド・ジーニアス」海外版ポスター
映画「バッド・ジーニアス」海外版ポスター


こちら、昨日の記事にも書いた2021年9月23日(木)のアトロクOPSpotifyに飛びます)にて宇多丸さんが関連作品として名前を出した際に、代打のTBSアナウンサー篠原梨菜さんが「あっ!大好きでした!」と即座に反応していて、やっぱりTBSアナウンサーのサブカル偏差値は異様に高いな、すごいなと思いながら、篠原さんに負けてはおれんということで早速観た次第でございます。

『ハッピー・オールド・イヤー』は「断捨離」映画だったんですけども、本作はずばりカンニング」映画です。タイ映画、切り取り方がいちいち面白い。そして期待を裏切らず非常に面白い作品でした。

なんといっても、カンニングという題材でここまで見栄えのする映画が作れるのか!!という驚きですね。U-NEXTの作品紹介には「高校生版『オーシャンズ11』」なんて表現があってそれも確かに頷けますし、個人的にはチェスの天才少女を描いたドラマ『クイーンズ・ギャンビット』を観ているときの感覚に近かったです。

『クイーンズ・ギャンビット』のヒロインは地方の大会から始めて次第に世界レベルへと上り詰めていくわけですが、本作もなんとカンニングが海を超えていくというまさかの世界スケールな戦いが、しかし案外納得いく展開としてセッティングされているのがかなり面白いです。

試験が一貫してマークシート方式であることによる「伝達手法のバージョンアップ」っぷりも見どころで、特に終盤「ピアノによるデータ化」は、これちょうど最近アトロクで放送されたピアノ特集*1のなかで「ピアノは、アナログな楽器の中で限りなくデジタル寄りのもの」っていう話があったんですよね。「ボタンで入力して何かが出力されてくる」機器*2なんですよ、ピアノ。その話を聞いたばかりだったので、まさしくそれだ!!と興奮しちゃいました。

その他いろいろ、まあとにかく全てがアイデア賞!な映画でした。見せ方次第でこんなにスリリングに楽しめるんだ、カンニング!! ということです。あまりに試験中キョロキョロしすぎだろとか冷や汗かきすぎだろとか突っ込みたいところもあるんですがそもそも全てが突っ込むべき案件ですし、高スペックの頭脳はあれど精神的には子供、な様がよく描かれていたと思います。

またそんなメインキャラクター4名も、等しく愛着を持たせてくれる素晴らしい造形でした。富裕層として生まれてきたが高学歴社会に相応しい頭脳を持ち合わせていない若者たち、持たざる者として生まれてきたが頭脳だけは手にしている若者たち。みんな社会の犠牲者で、単純に善悪で白黒つけられない。全員幸せになってほしい。そう思える子たちでした。あとグレース(イッサヤー・ホースワンさん)めっちゃ可愛い。

(2021年165本目/U-NEXT)

バッド・ジーニアス 危険な天才たち(字幕版)

バッド・ジーニアス 危険な天才たち(字幕版)

  • チュティモン・ジョンジャルーンスックジン
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『ハッピー・オールド・イヤー』に「サノス」が重要なワードとして出てきたよと前回書きましたが、本作には「X-MENのメンバーかよ」なんて台詞が登場しました。アメコミ文化、タイにはかなり根付いてるっぽいですね。