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主に映画の感想文を書いています

海外ドラマ「シェイムレス 俺たちに恥はない」の紹介と、あわせて読みたい本のことなど

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2011年からWOWOWで放送されている海外ドラマシェイムレス 俺たちに恥はない』が2020年4月、Netflixに入りました(シーズン5まで)。観終えてから書こうと思っていましたが、シーズン4へ入ったあたりでだいぶ視聴ペースが落ちてきたので一旦書いておきます。ネタバレなしの作品紹介+広義の関連本紹介です。

舞台は現代のシカゴ。ギャラガー家という大家族がドラマの中心となります。しかしこの家族、家庭崩壊寸前。母親は失踪、呑んだくれの父親は年中ほっつき歩いているくせに障害者年金受給日(それも不正受給)にだけちゃっかり帰ってくる抜け目のなさ。親がこんなだと子供はしっかりするものです。唯一成人している長女のフィオナが母親代わりとなり、幼児ガキんちょ思春期男子からなる大勢のきょうだいたちを辛うじてまとめあげています。

一家の暮らしは毎日が台風のようですが、ミクロの悲劇はマクロだと喜劇。カオス極まりないその暮らしっぷりはどこか楽しそうに見えてしまうのも事実です。テイスト的には映画『万引き家族(2018)』の明るい部分がずっと続くようなドラマ、とでも言いましょうか。ただし、セックスバイオレンス上等、ときには予想もつかないような展開にギョッとさせられる、かなり過激で衝撃的な作品です。ファミリー向けでは全くないのでご視聴の際は諸々ご留意ください。

個人的にこのドラマから何度も学ばされているのは、人を第一印象で切り捨ててはいけないという月並みなこと。これはすごくこのドラマの特徴だと思っていて、最初の印象が「クソ」なキャラクターほど意外なかたちで物語に残っていくのです。あいつ第一印象サイテーだったけどいいとこもあるよな、あいつみたいなのでも落ち着ける場所があったよなって。なかなか人を憎めないドラマなんです。

それは劇中最もサンドバッグにされている父親フランク・ギャラガーがいちばんの例で、誰が見てもクソ親。どう考えても死すべき。なのに、なぜか憎めない。そしてその先に必ず思わされる、「信じたのが馬鹿だった」。でもやっぱり……。それの繰り返しで、言わば視聴者がDV被害者のような状況に置かれるという。シーズン4の時点でこれですからね、現在シーズン10まであるんですよ、一体どうなってしまうのか。もうこんな日々疲れたよ、と少々いやになって視聴ペースが下がったのは否めません(笑)

まあとにかく、コメディタッチではありながらもその日々で巻き起こるあれこれからは現代社会や人間関係などのありとあらゆる問題が赤裸々に映し出され、問い掛けられる、そんな作品です。不快だけど、深いです。

坂本真綾さん激オシ

長女フィオナ・ギャラガーの日本語版吹き替えを担当しているのが、マイスイート坂本真綾さん。坂本さんは尋常じゃなくこの作品を愛しているようで、常日頃からシェイムレス愛のアピールがすごいのです。当然、先日Netflixに入った際も大プッシュ。わたしもそれをきっかけに、ああようやく観れるわ坂本さん激オシのアレ、と思ったものでした。外出自粛期間中にナタリーがおこなった取材でも、シェイムレスTシャツ着用でシェイムレスの魅力を熱弁するというぶれなさ(プロモーションにあらず)。

坂本さんの演じるフィオナはものすごく責任感の強い長女であると同時に性的にもなかなか奔放なキャラクターで、「坂本真綾」のパブリックイメージからはかなり外れています。なので最初はいちいち鼻血を出していたのですが、次第に「坂本真綾が声を当てているフィオナ」ではなく「フィオナ・ギャラガー」としか脳が捉えなくなったのは声優さんのプロなところなのでしょう。それにしても、考えうる限りの下品なワードみだらなワードを力の限り叫びまくれるこのお仕事は、坂本さんにとってさぞや日々のストレス解消になっていたことと思います。

あわせて読みたい

池上彰さんの『そうだったのか!』シリーズを読んでいる、と最近ことあるごとに書いているのですが、じつはこの『そうだったのか! アメリカ』をオススメしていたのは坂本真綾さんでした。紹介文のなかに「アメリカのドラマの役作りに役立ちました」と書いてあって、それこそシェイムレスのような作品を理解するうえでかなり役立つなとわたしも思ったのでした。クソ親父のフランク・ギャラガーがパブでくだ巻いているようなことが沢山書いてあります。働かないおっさんたちは意外と本を読んで無駄に知識を蓄えていたりする、とは『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』著者ブレイディみかこさんの談です。

ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち

ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち

ブレイディみかこさんの新刊、こちらにはイギリスのおっさんたちのことが悲喜こもごも書かれてます。まだ読み途中ですがパブでの会話シーンが頻繁に出てくるので、シェイムレス世界ともすごく重なるなあなんて思いながらおもしろく読んでます(今回紹介しているシェイムレスはリメイクで、オリジナルはイギリスのドラマらしいのでそれもそのはずなのかも)。ちなみに『ぼくはイエローで〜』も坂本さんのリコメンドで読んだ本です。

以上、シェイムレス+αのご紹介でした。いつ誰がどんな末路を辿るか分からないという海外ドラマの特性上、キャラ語りなどをできるのはだいぶ先になりそうです。いまのところはリップ推しだけど……。