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最近読んだ本の紹介「古関裕而の昭和史」「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

絶好の読書日和がまだまだ続きそうですね(皮肉)。最近読んだ本古関裕而の昭和史」「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」2冊のご紹介です。

古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家(辻田真佐憲)

古関裕而(こせきゆうじ)は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』窪田正孝演じる主人公のモデルとなった作曲家です。同時代に活躍した山田耕筰服部良一などと比べてやや知名度が低いようでわたしもお名前は存じ上げなかったのですが、その作品は身近に多く潜んでいます。例えば─

などなど。「モスラの歌」は、観たことなくてもなぜか知ってる「モスラ〜〜〜ヤッ」のやつですね。ここで挙げたのはスポーツ関連曲ばかりですが、そのキャリアは長く(だから朝ドラにもなるわけで)、戦時中には無数の軍歌も手がけています。昭和をまるっと生きた大衆作曲家の仕事を追っていくことで同時に昭和史をおさらいできる、そんな本です。

とても資料性の高い内容でありながら、本書が特に重視しているのは「古関裕而という作曲家をよく知らない一般読者向けの歴史書であること」だそう。わたしもそれこそ「六甲おろし」「モスラの歌」くらいしかピンとこない状態で読み始めましたが非常に楽しく読むことができました。

朝ドラ『エール』の副読本としても(今のところ、幼少期はそこそこなぞってますね)、大衆音楽から紐解く昭和史の本としても、おすすめです!

上記サイトなどで実際に曲を聴きながら読んでいくと、より楽しめます。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(ブレイディみかこ

最近すごく話題になっていて、いろんなところで見かけるタイトルでした。イギリス在住の「ぼく」は日本人の母(著者)とアイルランド人の父を持つ中学生。カトリック系の名門小学校から一転、社会の縮図みたいな「元・底辺」中学校に入った彼が、ファンキーな学校生活を通してどんなことを学び、考え、成長していくのかを母親目線で観察し記録した、という本。

本来ならあんまり進んで手に取るタイプの本ではなかったのですが、マイスイート坂本真綾さんが最近のイチオシとして紹介していたので、あなたが言うなら、と諦めて手に取った次第です。

で、これがまあ、おもしろい…!!! あまり気が進まなかった理由であるところの「大人顔負けの考えを持った少年」みたいな要素が当然詰まってるわけなんですけども(漫画ツイートとかで見たら絶対ゾワっとするやつ)、悔しいかな、おもしろいんですよ………。こりゃベストセラーなるわと大納得。おまけに子供が欲しくなりました。

「おもしろい」はもちろんinterestingでもあって、昨今エンタメを語るうえでも意識させられるポリコレだったり「多様性」のことだったり、本を読んでまで勉強したくはないなあと消極的になってしまうようなことが本書を読むと自然に入ってきて、楽しみながら意識のアップデートができたと思います。そういう意味では、“不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門”こと「お砂糖とスパイスと爆発的な何か(北村紗衣 著)」などとも近いポジションの本かもしれません。

いやもうほんと、何はともあれおすすめです。めちゃくちゃおもしろいです。上記の新潮社サイトでだいぶ長く試し読みもできるようなのでとりあえず読んでみてください。

「アトロク」ではブレイディみかこさんが「ぼく」の近況なども教えてくれていました。そうそう、このキャッチーなタイトルの由来もおもしろいのですよね。

以上、こんな時期におすすめしたい書籍2冊のご紹介でした。