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主に映画の感想文を書いています

大林宣彦監督作品「姉妹坂(1985)」雑感

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大林作品集中履修、1985年公開の『姉妹坂』を観ました。ひとつ前に観たのが『この空の花 長岡花火物語(2012)』だったので次は公開順に『野のなななのか(2014)』のつもりが、170分?!そんなに時間ない! という就寝時間的事情により100分の本作を挟んだ次第です(笑)

あらすじ

早くに両親を亡くし、ささやかなお店を営みながら仲良く暮らしている四姉妹。しかし彼女たちは血の繋がった姉妹ではなかった。そのことを知ってしまった三女沢口靖子はショックを受け、かつて自分を捨てた実母からの招きに応じる。そんな折、四姉妹の大黒柱的存在であった次女浅野温子白血病に倒れ──

※超絶シリアスな筋書きですが、冒頭しばらくは顔が歪むほどのB級コメディです。我慢の時。

雑感

名作『さびしんぼう(1985)』の半年後くらいに公開されている作品です。Wikipediaによれば、本作の撮影が延期されたことによりその空き時間と富田靖子の冬休みを使って作られたのが『さびしんぼう』とのこと。大林組の夏休みに撮ったという『廃市(1983)』の名作っぷりといい、なんだか片手間のほうが、おっと。

主役の「四姉妹」を演じるのは紺野美沙子浅野温子沢口靖子富田靖子。豪華若手キャストによる義理の四姉妹ということでいうと、是枝監督の『海街diary(2015)』を連想します。漫画原作である点も共通ですね。また、ショートヘアーの富田靖子さんが角度によっては広瀬すずさんに似てるなあ、なんて思っていたのも偶然の共通点。

誰がヒロインでも成り立つ豪華キャストですが、まあ本作のヒロインは沢口靖子さんでしょうか。眉や目元のメイクが特にそうさせているのかもしれませんが、ハリウッド大女優の若い頃みたいな雰囲気があり、特に正面からの笑った顔などはジュディ・ガーランドに見えることが多々。シリアスな表情ではバキッと美人だなあ、という印象でした。

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次女なのに長女的な浅野温子さんは、いかにも少女漫画のかっこいいお姉さん!なキャラ付けのクールビューティ。いかにもという点では、控えめな長女の紺野美沙子さんも、おてんば末娘の富田靖子さんも同様で、漫画原作であることがとても想像しやすい作品です。富田靖子さんは『さびしんぼう(の白塗りピエロじゃないほう)』と比べると非常に幼く演出されており、『さびしんぼう』でファンになった当時の人は期待外れだったんじゃないかという気がしてしまいます。

『廃市』で尾美としのり×小林聡美が再共演していたように本作でも尾美としのり×富田靖子の再共演が早くも実現していますが、あえてなのかどちらの再共演もキャラ付けを大きく変えていますね(って、『転校生』はまだ観てないんだった。想像です)。大林映画は比較的みんなハキハキと喋る印象なのですが、今回はとにかく囁く。声が小さい。監督がお好きなベルイマンみたいな雰囲気になったなと思いました。

本作の舞台は京都です。王道の撮影地なのに、大林監督が使うとなると意外に感じてしまう不思議。ロケ地は主に蹴上のあたりで、水路閣インクライン浄水場、タイトルになっている「坂道」も蹴上にあるようです。わたし、かつて森見登美彦さんの小説で京都にどハマりした人なので、インクラインとか出てくると無性に興奮してしまいます。

水力発電つながりでいうと、宮川一朗太さん演じる恋のお相手が働いていた「富山のダム建設現場」って黒部ですよね。コンクリートを運ぶバスケットが後ろで動いているシーンもあったし。とすると時代設定は1960年前後あたりなのかしら。

そういえば、途中でいかにも50年代的な、『理由なき反抗(1955)』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)』の1955年パートに出てきたような不良と車が出てくるので、それぐらいの設定ということでいいのでしょう。ダンスパーティーのシーンなども含めると案外『BTTF』と共通点があるのですが、日本での公開日を調べてみたらたった2週間違い。偶然の一致ですかね。

「代表作」「名作」の枠からは外れる作品だと思いますが、若かりし名女優たちを堪能する上ではなかなかにお得な一本です。

(2020年82本目/PrimeVideo)

姉妹坂

姉妹坂

  • 発売日: 2016/12/01
  • メディア: Prime Video