コーエン兄弟監督の映画『ヘイル、シーザー!』を観ました。出演はジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、スカーレット・ヨハンソン、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)』のオールデン・エアエンライク、ほか。
あらすじ
1950年代ハリウッド。マニックス(ジョシュ・ブローリン)は、スタジオ内のスキャンダルなどあらゆる問題を片付ける「解決屋」。撮影中のスターが失踪してしまったり、不慮の妊娠をしてしまったり、それをゴシップ屋が嗅ぎ回っていたり……と彼の一日は大忙し。早朝には日課のように教会へ立ち寄り、今日もまたハリウッド中の罪を背負って懺悔する。
雑感
これはひとつ前の『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015)』から繋がるかたちで観た作品です。『トランボ』について調べていた際に町山智浩さんが本作とあわせて「この2本の映画は互いに補い合ってひとつの物語になるところがある」と紹介していたので、それならば、と続けて鑑賞しました。
ただ、想像していたような「同じ時代を違う視点から切り取った映画」とはちょっと違って、町山さんの言う「奥の方でつながっている映画」という表現が確かに適切かなと思いました。正直、難しい映画でした! 『トランボ』は比較的堅実なノンフィクション、対するこちらはコメディで一見わかりやすく楽しめそうなものですが、笑いには教養が必要ということなのでしょう。
思った以上に理解できないまま終わるのは悔しいので、こういう時はやはり町山さんに頼るのがお決まりです。町山さんが不定期に音声配信している「映画その他ムダ話」という映画解説があり、そこに上がっていた本作の解説音声を聴きました。有料ですが、ひとつの映画に1時間前後も割いてみっちり解説してもらえるのは大変ありがたく、わりと頻繁に利用しています。
これがですね、小ネタの解説程度を期待して聴き始めたら非常に感動的な考察となっておりまして、そういう話だったのかーーーーと目から鱗。同時に、こんなの解説してもらわなきゃ絶対わかんないよ!というお手上げ感。もし本作を観てあんまよくわかんなかったな、と思った方がおられたら必聴です。
そんなわけで、本作の物語に関して自分の言葉で語れることは無に等しいので割愛させていただきます(笑)
ハリウッド名作再現ものとしての楽しさ
自分の言葉で語れるのはせいぜいこれぐらい。といってもお話の中心にある『ベン・ハー(1959)』的な映画のことは明るくないのでいきなり飛ばすとして、最初におっ!と思ったのはスカーレット・ヨハンソンによるこのシーン。
これは、元競泳選手で「水着の女王」と呼ばれた女優エスター・ウィリアムズの代表的なシーンを模しています。ちょっと意味わかんないくらい大掛かりでゴージャスな「水中レヴュー」というジャンルが一時期あったのでございます。
また、水兵さんたちが飲み屋で踊りまくるシーン。こちらはものすごく出来のいいナンバーで思わず見入ってしまいましたが、模しているのは言わずもがなの歴史的スーパーダンサー、ジーン・ケリーのパフォーマンス(動画は一例。水兵さんの格好はこの時期よくあります)。
こういったハリウッド超黄金期を一望するには、MGMミュージカル映画のハイライトシーンを一挙に振り返っていくアンソロジー作品『ザッツ・エンタテインメント(1974)』がおすすめです。とにかく開いた口が塞がらないほど度肝を抜かれる映像のオンパレードで、所詮「昔の映画」でしょ、と思っていたものに平伏すること間違いなしです。
『トランボ』とのあれこれ
本作には『トランボ』で描かれた「ハリウッド・テン」と思わしき10人くらいの男性たちが登場しますが、彼らの役どころはなんと「誘拐犯」。ジョージ・クルーニー演じる誘拐されたスター俳優が彼らの唱える共産主義に毒されて帰ってきて、バカ!目を覚ませ! とビンタされる、あくまでそんなお笑い要素でしかありません。
『トランボ』は共産主義者たちの目線から見た世界、本作は真逆の目線から風刺的に見た世界。ま、いろんな思想があるよ、ってことみたいです。それにしても確かに、『トランボ』観てなかったらあの誘拐集団なんて完全に意味不明だっただろうな……。
他には、ヘレン・ミレンが『トランボ』で悪どく演じたコラムニストのヘッダ・ホッパー(をモデルにした人物)も登場。『ハン・ソロ』のオールデン・エアエンライク(好演!)に頭を抱える監督は町山さんによればジョージ・キューカーがモデルとのことで、Netflixドラマ『ハリウッド』とも繋がっていきます。
ちなみに監督のコーエン兄弟、『ブリッジ・オブ・スパイ(2015)』では脚本を手がけておりまして、全く奇しくもここ数本の鑑賞作品が全部繋がってしまいました。
(2020年78本目/PrimeVideo)
- 発売日: 2017/04/21
- メディア: Blu-ray