Netflixドラマ「ハリウッド」の紹介
戦後間もないハリウッドを舞台にしたNetflixドラマ、その名もずばり『ハリウッド』シーズン1を鑑賞しました。約50分×7話で、あっという間に完走。おそらく単独シーズンの作品だと思いますので気軽にご覧いただけます。
ハリウッドの夢追い人たちを描いた物語というと、足を引っ張り引っ張られ、落とし落とされ、といったものを想像するかもしれませんが、このドラマの登場人物たちは基本的にみんな善人。巨大なハリウッドサインにしがみつき、時には手を差し伸べ、力を合わせながら登っていく主人公たち。そんなオープニング映像に方向性がよく現れていました。
俳優志望、監督志望、脚本家志望。志を抱いてハリウッドで生きる若者たちの、志とは裏腹な冴えない日々が序盤では描かれていきます。対して、若者たちの憧れである大手スタジオの中核で働きながらも志からは目を背けているような人々も登場。いつしか一つの作品のもと、彼らは一点に集まります。
作品のタイトルは『メグ』。監督はアジア系、脚本家は黒人、主演女優も黒人。当時のハリウッドでは誰も首を縦に振らないような企画です。しかし誰かが大きなリスクを抱えて動かなければ、歴史は、時代は変わらない。葛藤の末、この異例の問題作は製作に踏み切られることになりました。物語の後半は『メグ』の製作内幕を中心に展開していきます。
紆余曲折を経て公開に至った『メグ』はアカデミー賞各部門にノミネート。授与式の日、果たしてこの挑戦的な映画は時代を動かすことができるのでしょうか。
歴史改変ファンタジー
1940年代後半のハリウッドで、どう見てもパラマウントな門構えの最大手スタジオが挑戦的にポリコレを推進していき、時代を変える先駆者となる、という物語である本作。実在の人物や作品を登場させつつも、まあ結構なファンタジーとすら言える「歴史改変もの」です。
『風と共に去りぬ』のマミー役で一悶着ありながらもアフリカ系の女優初となるオスカーを獲ったハティ・マクダニエルが大きく絡んでくるクライマックスの展開など、あの時代にこうだったらよかったのに!を全力で実現させていく脚本は痛快で、ご都合主義すぎるのでは? いい世界すぎるのでは? などと水をさすのが野暮なくらいの振り切ったハリウッド・エンディングを味わうことができます。
どちらかといえばバッドエンドのほうが好きなわたしですが、今回はうまいこと展開に乗れたのか最終話のおともにティッシュが手放せず。びっくりするくらいずっと泣いてました。疲れた心がこういうお話を求めていたのかしら。
劇中で主人公たちが製作する映画はもともと「絶望のあまりハリウッドサインから投身自殺をした女優の伝記映画」として悲劇的プロットでスタートするも、最終的には希望をもたらすエンディングへと変更されることになります。もしかしたらこのドラマも製作時にはシビアな結末が選択肢としてあったのかもしれません。
優しい物語を欲している方はぜひご覧になってみてください。最後の最後、「The End」の代わりに映し出される文字がとても粋だと思いました。