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主に映画の感想文を書いています

映画「叫びとささやき(1973)」雑感

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ベルイマンを初めて観ました。ウディ・アレンの映画にしょっちゅう名前が出てくるイングマール・ベルイマン。多くの映画人に影響を与えた偉大な監督のようですが、『ミッドサマー(2019)』のアリ・アスター監督もスタッフに本作を見せてから撮影に入ったとか。そんな映画『叫びとささやき』の感想です。

なお初見の場合、後半のネタバレは知らないほうがいいと思いましたので一応ぼかしてあります。

あらすじ

病で苦しむ次女を看取るため生家に滞在している長女・三女と使用人、計四人に渦巻く愛憎の物語。

雑感

ああ久しぶりに難しい映画を観た…と思いました。そういえば最近ご無沙汰でした。とはいえ主な登場人物の関係性と状況が最初からわかっていれば難しくもない話なので、そこだけあらすじに書きました。

有名な『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)』の冒頭を連想するような「時計」のオープニング。時折鳴るチーンというベルの音が、終盤ではまるで仏壇の鐘のようにも聞こえてきます。冷たく静まり返った屋敷の空気感を全編通して演出する、本作の重要アイテムです。

そして真っ赤な部屋が登場。アートだ!めっちゃアートだ!(久々のアート映画に興奮) 真っ赤な壁に真っ白な服、という明らかに設計し尽くされたコントラストが強烈です。こういう映画はもうこれだけで「いい」んだよなあ…とも思っちゃう。シーンが切り替わる際の、ブラックアウトならぬレッドアウトも面白い。

ほどなくして、おそらくは次女であろう顔色の悪い女性がやや辛そうに起床。窓から外を見るわけですが、ここ! アリ・アスター監督ファンは必見!

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窓枠越しのこの感じ、『ヘレディタリー/継承(2018)』でも『ミッドサマー』でも冒頭部にあったカットそのものだと思います。これ好きなんだろうな、オープニングには窓枠越しの風景を入れたいんだろうなとニヤけてしまうファーストポイントです。

さらに直後、ドールハウスまで登場します。

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『ヘレディタリー』でも冒頭部から印象的に登場するドールハウス。本作では『ヘレディタリー』ほど強い意味合いはなさそうに(少なくとも初見では)感じますが、こちらもやはり映画のオープニングとしてアリ・アスター監督のなかに鮮烈に残っていたんだろうなという気がします。

さて、時間が経過していくにつれ次女の病状は悪化。初登場時からなんとも辛そうな演技が胸に刺さってくるハリエット・アンデルセンさんでしたが、以降も名演というか、本当に死んでしまうのではないかという痛ましい演技が続きます。これはもうだめだろ…と思っていると病状が落ち着き、むしろ死なせてあげてくれといたたまれない気持ちに。でも、いざ息を引き取るときはあっさりと。

彼女の死は物語中盤。中心人物不在となった後半からが愛憎劇の本番です。そこまでもなかなか衝撃的なシーンを不意打ちで見せられていたものの、それらを一気に超越した衝撃がここで登場。まさかそんな展開をするとは。そんでもって姉妹たちの反応も、切ないけど分かるな…。それとこれとは話が別よ、って感じ。

だいぶビターな幕引きとなったところで、エピローグ的に強烈な美しさのシーンが挿入されます。「叫びもささやきも かくして沈黙に帰した」。いやーーこれ。どっちの記憶が最後なんだろ。後味よくねえな! チーン、じゃねえよ!

そんなわけで、いつかは観なきゃなと思っていたベルイマン、よくウディ・アレンが言っている『野いちご(1957)』は配信がなかったので本作を選びましたが、初めてのベルイマンがこれでよかったのかな???と心配になってしまうほど衝撃的な作品でした(笑) 理解はできてないと思うけど、記憶には残りました。

(2020年52本目/U-NEXT)

叫びとささやき

叫びとささやき

  • メディア: Prime Video
U-NEXTのサムネイル、すごいシーン切り取ってんな。なお本作はPrimeVideoでも課金なしで観れます。