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主に映画の感想文を書いています

映画「インテリア(1978)」雑感

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ウディ・アレン監督の映画『インテリア』を観ました。U-NEXTの作品ページには「W・アレンが敬愛するイングマール・ベルイマンにオマージュを捧げ、その世界観を再現。」とあります。そんなわけで、初ベルイマンをキメた直後に観てみたのでした。

本作は代表作『アニー・ホール(1977)』の翌年に発表され、同じくダイアン・キートンも出演していますが、全く違うテイストの作品で興味深かったです。

あらすじ

父が母に別居を切り出した。威厳を保ちながら戸惑いを隠せない母と、板挟みになる三人の娘たち。母はインテリアコーディネーターとして地位を築き、父以上に一家の長であった。しかしその完璧な人生が崩れていく。

雑感

こんなにヒリヒリした映画も撮れるのかウディ・アレン、と驚きでした。氏の作品は好きでそこそこ観ていますが、明るくはなくともシニカルな笑いのある作品がほとんどだと思います。本作ではそういった要素すら削ぎ落とされ、まあだいぶ暗いアート作に仕上がっていました。

しかし、ベルイマンのオマージュだと言われれば「あらお上手!」って感じの感想に切り替えることもできます(笑) なんてことを言えるのも前述の通り、この直前に初めてのベルイマン鑑賞をしたから。

とりあえず、で選んだ『叫びとささやき(1973)』でしたが、本作を楽しむ上ではこの一本だけでもかなり「わかった気」になれました。ウディ・アレンが特に『叫びとささやき』を意識したのか、それとも未見のその他ベルイマン作品も共通してこんな感じなのか、なんにせよ初ベルイマンとしては良い選択だったみたいです。

『叫びとささやき』との共通点
超にわか視点で、ベルイマン『叫びとささやき』との共通点を挙げてみると、まずは分かりやすく「三姉妹」。それぞれに全く違う性格付けとビジュアルの三姉妹がなんともヒリッとした空気感の中にいる感じは、まさにそれ。

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とても美しい存在として回想される若き日の母親だったり、「お気に入り」になれなかったコンプレックスなども共通しています。『叫びとささやき』に出てくる男たちは揃いも揃ってしょうもない男だらけの印象がありますが、そこも同じく。ウディ・アレン投影型キャラクターは今回はいないかな?(思考的には長女=ダイアン・キートンの旦那が近いかも)

母が設計し尽くした無印良品的インテリアと、そこに流れる無音の時間(窓の外は海が波打っているのに室内は静寂、というコントラストが印象的)。色味は違えど、一見してオマージュを感じられる美術・演出が各所に。

露骨に『叫びとささやき』なのはラスト、次女が「綺麗な想い出」を日記に綴るというシーン。本作で死ぬのは次女ではなく母ですが、日記を書くのが次女なのは同じだし、ペンも万年筆(ベルイマン側はインクをつけるタイプのペン)、そこまでのヒリつきはなんだったのと拍子抜けするような美しさ、それで終わるの?!という感じのフェードアウト、ついでに言えばその前に長女と次女が一瞬心を通わせているようなシーン等々、ここにきて諸々あからさまで、もはやギャグなオマージュっぷりでした。

ダイアン・キートン、好き。
久しぶりに見たダイアン・キートンはやっぱり好き。格好いいし、可愛くもある。よく見ると変な髪型なのに、それもなんかいい。最近とある映画でうわ〜(よくない意味)と思った予告があって、その最後に「主演:ダイアン・キートン」と出ていたものだから余計にうわ〜〜となってしまいました。あれはなるべく観たくないな…。

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次女を演じるメアリー・ベス・ハートさんも、内巻きボブとオシャレ瓶底眼鏡が今に通用する可愛さで好き。口論シーンではございますがこの、ワンピースのポケットに両手突っ込む感じも可愛い。お話が暗いぶん、ファッションくらいは楽しめる映画です。

ウディ・アレン作品としておすすめするには異色ですが、ベルイマンオマージュ映画として『叫びとささやき』からの本作、みたいなハシゴをすると結構楽しめると思います。どちらもU-NEXTで観れます。

(2020年53本目/U-NEXT)

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