353log

主に映画の感想文を書いています

映画「バクラウ 地図から消された村(2019)」感想|何が起こっているのか全く見えてこない系の映画が好きな人は絶対好き系

f:id:threefivethree:20210104224629j:plain

渋谷シアター・イメージフォーラムにて映画『バクラウ 地図から消された村』を観てきました。1本前の『ブルータル・ジャスティス(2018)』と同じくこちらも「アトロク」ことTBSラジオアフター6ジャンクション」内で特に最近話題の作品。アトロクがなかったらこんなブラジル映画観てないよな〜〜としみじみ思いながらの鑑賞でした。カルチャーキュレーションありがたや。

さてパッと聞きマイナーな本作、じつは映画界的にもしっかり話題の作品で、『パラサイト 半地下の家族(2019)』がパルム・ドールを獲った「第72回カンヌ国際映画祭」にて審査員賞を受賞しております(『レ・ミゼラブル(2019)』と同時受賞。先日観た『燃ゆる女の肖像(2019)』もこの回で脚本賞を獲っていました)。ちなみに正月休み最終日に観に行ったのですが、去年の正月休み最終日は『パラサイト』の先行上映を観てどんより(ハイソな日比谷から空気の濁った地下鉄に乗って)帰った記憶が鮮明です。この一年間、カンヌ第72回に翻弄され続けています。

そう、本作『バクラウ』もめちゃくちゃ翻弄される映画でした。これわたし、めちゃくちゃ好きです。だからめちゃくちゃ推したいんですけど、でもこれいわゆる「何も知らずに観たほうがいいやつ」の類で、推せば推すほど何も言えなくなっちゃうジレンマ。

ただ何も言わずにプッシュできるほどの発言力はあいにく持ち合わせておりませんので、超ざっくりの方向性だけわかりやすくお伝えしておくことにします。ずばり、「ミッドサマーみたいなやつ」。以上です。いい意味で「あそこまでじゃない」ですけど。おおよそのベクトルを察してください。

ピンと来た方はぜひ、数少ない劇場へどうぞ(21年1月現在東名阪8館のみ)。予告編も観ないほうが吉です。

https://filmarks.com/movies/84107/theaters

とはいえ感想も書きたいのでここから先はネタバレします。



ネタバレ雑感

いや〜〜これはもう本当に、何も知らずに観に行って大正解でした。いま初めて予告編を観てみたんですけど、いやいやこんなん楽しみ7割減ですやんくらいには思ったのでとにかく予備知識ゼロで行ってよかった。

始まってから終盤まで、ただただ「状況の掴めなさ」に翻弄されるのみ。ひたすら「どういうこと??」と困惑し続けるのみ。この上なくシュールなあれこれに笑っていいのかなんなのか表情筋をピクピクさせるのみ。こういう映画、大好きです! 「何が起こっているのか全然見えてこない(けど明らかになんか不穏な)映画」大っっ好きなんです。

好きなシーンは山ほどありますが、まずはあのオープニングの「宇宙」。『メランコリア(2011)』かと思いましたよ(ウド・キアは共通)。寓話デース!!っていうアピールと、ちゃんと「GoogleMapから消された村」感に繋げてくる細やかさと、何より満面の「これから皆さんの予想もつかないような映画をお見せします」顔。たまらんオープニングでしたね。

そして視点がズームインして、おもむろに「今から数年後」というさりげなく斬新なテロップ。いきなり棺桶轢いちゃって不穏すぎる「道中」。嫌なほうの期待値高まりまくりな「棺桶から水」。気付けば全体に漂う「西部劇」感。そうだった「今から数年後」なんだったとようやく思い出す「ややミスマッチな文明レベル」。イカした車シリーズ「DJウルソ」と「選挙カー」。なんてったって「UFO」。忘れた頃に「顔面破壊」。満を持しての「歴史資料館(おすすめしたのに!)」。ほか、まだまだいろいろ。

なかでも一番ぶっ飛んだのは、うーん、くだらないけど「アレ」か。あのアレをいきなり見せられた瞬間の底知れぬ胸の高鳴りが忘れられません。あとから見たらポスターにも予告編にも思いっきり登場していたけど、アレはサプライズであってほしい。だからポスターも予告編も完全スルーして劇場にインしてほしい。今これをうっかりお読みでしたら全て忘れてください。ミッドサマーの熊とか思い出しておいてください。一切知らないまま最大限に面食らってほしいです。ここまで書いて、具体的に明記してた「アレ」を全て「アレ」に書き換えました。書かないほうがいいわ、やっぱり。何も言わないほうがいいわ、やっぱり。(ちなみにひとつ前の段落の9番目の鉤括弧キーワードがわたしにとってのアレです)

というわけで、鑑賞済みの方、面白かったですね。説明しづらいですよねこの映画。
ここまで読んじゃった未見の方、おおよそ好きな方向性のやつかもなと思われたらぜひご覧ください。

(2021年3本目/劇場鑑賞)