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主に映画の感想文を書いています

劇場版「架空OL日記(2020)」雑感

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原作・脚本・主演バカリズム『架空OL日記』観ました。どうしてもレイトショー以外で観たくて、渋谷のミニシアターまで行ってきちゃいました。

概要

2017年に放送されていた同名ドラマ『架空OL日記』を同一キャストかつ完全新作で映画化したもの。バカリズムが2006年から「銀行員OLになりきって」綴っていたブログをもとにしている。出演はバカリズム升野英知)、夏帆臼田あさ美ほか。

雑感

このドラマ、大好きで。映画化が発表された時は立ち上がるレベルで興奮してしまいましたが、同時にこうも思いました。というかこの作品を知るほとんどの人が思ったでしょう。どうすんの? と。

というのも、この作品は基本的にな〜んにも起こらない、いわゆる「日常系」だからです。家と職場の往復、会話は主に更衣室。「劇場版」という枕詞がこれほど似合わない映画もありません。一体スクリーンで観る必要があるのだろうか。

で、観てきた結論。これはいいものだ。

なにが起こるの??という問いに対しては「なにも起こりません」と笑顔でお答えできます。しかしその「なにも起こらなさ」を映画館というリッチな視聴環境でだら〜りと楽しめるのが、なんだろう、この形容しがたい至福。

なにも起こらないなかでかろうじて起こる些細な出来事は、ドラマ版と全く同じスケール感。「週休6日法案」「憂鬱マイレージ法案」といったいつも〜〜〜のやつから始まって、緊張の走るシーンといえば「給湯室のスポンジにいつも洗剤の泡残してる奴を暴き出せ」だとか「この印鑑ケースは明らかにダサいが上司からの貰い物なので不用意な発言を慎むように」だとかその程度。

しいていえば、ひとつだけすごい衝撃的なことが起きます。起きますが、なんとまあ日常レベルの衝撃波であろうか。でもこのスケール感のなかだとそこそこショックを受けてしまっている自分がいる。うける。

そんなわけで、ドラマ好きだったよという方には間違いなくおすすめです。スクリーンで見る小峰さまはいつにも増して麗しいですよ。残りの感想は末尾の箇条書きにて。

(2020年39本目/劇場鑑賞) 大手シネコンだと時間帯の選択肢が少なくて、これはできればレイトショーじゃなくて昼間に観たい…と思ったので渋谷のHUMAXシネマさんに行ってきました。こちらの劇場かなり本作を推していて、そうとは知らずに入ってびっくり。

ミニシアターの印象を覆すような明るく清潔な館内も非常に好印象で(シアター自体は非常にレトロなのがまたよし)、お近くの方は大手シネコンよりむしろこちらがおすすめです。

軽微なネタバレ雑感箇条書き

衝撃度日常レベルのネタバレを書きます。

  • 冒頭「週休6日法案」を可決させながら練馬駅前の歩道橋を歩いてくる夏帆バカリズムを見て、のっけから幸せな気持ちになってしまった。この幸せを大画面で見るのはありだわ。

  • わたしの職場、女性率が非常に高いので休憩室はわりと似たような感じになっている。そんなこともあり、観ているうちになんかちょっと「仕事行きたい気持ち」が湧いてきてしまった。日曜の夕方ごろに観ると少し楽になる映画かも。

  • 昼休みの歯磨き雑談シーンが何度も出てくるが、ぎりぎり聞き取れる会話になってるのがすごいなと地味に感心する。

  • 「便座の汚さ」についてのシーン、あのバツの悪さと可笑しさはとても演技とは思えないアンサンブルだった。別のシーンで「今のは面白かった」っていう台詞が出てくるけど、そういう偶発的な笑いがそのまま収められている(ように見える)感じ、すごく心地良い。

  • そのシーン、課長が出てくるところまでセットの笑いであるから偶発的なものでは決してないはずで、その条件下であの偶発的な雰囲気を作り出してるのはかなりすごいと思う。本作(って呼ぶのもなんか恥ずかしいんだけど)で最も映画的にテクニカルなところと言ってよい。もしくは「課長の登場」がサプライズだったとしたら…それはそれでまたテクニカルである。

  • 小峰さまの「発表」をやり直すくだりの、こっちまでぷるぷると笑いをこらえなきゃいけない感じとかもすごい幸せ。「インスタグラム」の違和感からあそこまで引っ張りまくれるバカリズムの手腕よ。

  • 笑いをこらえるといえば、強盗訓練の人質役でぷるぷるしてる夏帆がめちゃくちゃ可愛かった。キャラづけが完璧。

  • で、さて、最大の衝撃「小峰さま、ご成婚」。臼田あさ美さま&小峰さま大ファンのわたしとしてはまず素でショックを受けてしまい、どんだけ日常的スケールなんだよと可笑しくなった。いやしかし、ショックだよ。辞めないでくださいね…。

  • 挙式のシーンひとつとっても、あるあるが詰め込まれているようで面白かった。アラサーくらいになってくると「いつくしみ深き」はそらで歌えるようになるよね。酒木さんみたいな人が真っ先に泣いてるのもあるある。

  • 休日に「私」と友人たちがランチしてるお店は、立川シネマツーの斜向かいあたりにある「Adam's Awesome Pie」っていうお店。映画の合間に何度か行ったことがあります。

  • ラストのオチはドラマ版もそういえばそうだったので別段驚きはしないけれど、いやもういいじゃんそういうの、って思っちゃうところもある。だって寂しいじゃん! みんなで行こうよボラボラ島

  • まあそういうシニカルなところもバカリズム節なのでしょうね。

  • ちなみに偶然見た「あさイチ」情報によればバカリズムはほとんど映画を観ないらしい。

  • バカリズム脚本作品では『黒い十人の女』『住住』などもおすすめです。『住住』は、同じマンションの同じ間取りの部屋に住むバカリズムとオードリー若林と二階堂ふみ(いずれも本人役)が互いの部屋を行き来してだらだらするだけのやはり日常系ドラマ。好きだったなあ。


感想は、尽きない。

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