松竹ブロードウェイシネマ「42ndストリート」雑感
松竹ブロードウェイシネマで「42ndストリート」を観てきました。松竹ブロードウェイシネマとは、特別に撮影・編集された本場ブロードウェイなどのミュージカル公演を映画館で(字幕付きで!)観れる企画。だいたいライブビューイングのようなものです。
この「42nd ストリート」は1933年のミュージカル映画「四十二番街」を舞台化した作品で、舞台版の初演は1980年、今回の収録は1〜2年ほど前のウエストエンド公演とのこと。ブロードウェイでは3,500回近いロングランの記録も持っているそうですよ。
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もとの「四十二番街」という映画は内幕ものミュージカルの名作とされており、万華鏡のように並んだダンサーたちを真上から撮った「バークレイ・ショット」と呼ばれる撮影技法が特に有名です。キルフェボンのタルトみたいなやつです。
見どころ① 豪華な舞台装置
物語の始まりは名作「コーラスライン」を思わせるシンプルな舞台面ですが、稽古と本番が交錯する演出の中で次々と大掛かりな舞台装置が登場します。これがなんとも、舞台作品というよりむしろ1930〜50年代のミュージカル映画そのものを観ているような、不思議な気分にさせられました。
当時のミュージカル映画、特に「MGMミュージカル」と分類されるようなものがどれほど豪華絢爛な世界だったのかということは、「ザッツ・エンタテインメント」というアンソロジー映画を観ていただくと一発で分かります。
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この頃の映画を、古き良き内容はそのままに今の映像技術で撮り直した作品、といった印象を受けたのでした。ちなみにバークレイ・ショットはどうするんだろうと思ったら、鏡。なるほど。
見どころ② 全てが現実でもある
こういった「ミュージカルの内幕ものミュージカル」をナマモノとして上演した場合、舞台上で起きていることは物語であると同時に、現実でもあるんですよね。カーテンコールでようやくそれが堂々と交わったときの打ち震える感じったら。
「コーラスライン」のオーディションに密着したドキュメンタリー作品がとてもこの感じに近いので、そういうの好きな方、おすすめです。
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稽古と本番、物語と現実、いろいろと交錯させる演出が巧みな「42ndストリート」ですが、今回観ていて特にうまいな〜と思ったのは第一幕の締め方。スターの負傷でショウが中断したシーンから、「今日はもう続行できません!入口で返金します!客電点灯!」のアナウンスで客電が点いて休憩入り。シーンとしては谷底なのに、思わず笑顔になっちゃう素敵な演出でした。
見どころ③ ドロドロしてない
ありがちな足の引っ張り合いとかそういうのが一切ないです。みんないい人。観てて楽ちん!
むしろこれ、映画版のほうはもう幾分ビターなんですよ。演出家ジュリアン・マーシュはもっとスパルタだし、そもそも身体も弱ってて、ラストは大成功の裏でひとり寂しく…みたいな感じだったかと。そのへんを全部カットしてるので、ほんと、かなり明るいですこの演出。好きです。
というわけで、明るくて楽しくて疲れなくて、豪華な舞台装置と上品な音楽*1とタップダンスを堪能できて、カーテンコールではホロッとして、とても後味爽やかなミュージカル体験「42ndストリート」、ご興味のある方、上映劇場がお近くにある方、ぜひ!
※通常の映画よりはお高めの価格設定(3,000円)となっていますが、ライブビューイングの相場と比べれば安いですし、何よりこれを本場で観ようと思ったら10倍は下らないでしょうから(笑)お釣りがくる金額だと思います。
(2019年126本目/劇場鑑賞)
*1:しいて言えば、音楽はちょっと印象が薄いかも。劇中に出てくる「この作品に足りないのはアーヴィング・バーリンの音楽よ!」みたいな台詞、的を射てるなと(笑)