353log

主に映画の感想文を書いています

タランティーノを観よう④「キル・ビル Vol.1/Vol.2」

f:id:threefivethree:20190928085512j:plain

かろうじて「パルプ・フィクション」だけは観てるけどあとは「キル・ビル」すら未見だよ、というわたしによるわたしのための「ワンハリ」きっかけなタランティーノ履修コーナー、ようやっと「キル・ビル」へ到達しました。

なぜか全く配信されておらず、かつ近場のリアル店舗も撤退して久しいということで、しばらくぶりにTSUTAYA DISCASを再契約しての物理郵送レンタルでございます。

キル・ビル Vol.1(2003)

なんといってもプロダクションI.Gによるアニメパート! これに尽きます! 最高!

攻殻機動隊」シリーズが大好きなのでI.Gの絵には親しみがあるのですが、これは間違いなくI.Gの絵、だけどこんなに血が噴き出るのは見たことない!(笑) タランティーノがアニメを作ったらこうなるのか……そうだよねこうなるよね……っていう超納得の仕上がりです。

回想シーンだけをアニメで見せるというかなりトリッキーなことをしているのに何の違和感もなく繋がっているのは、全体の作りがそもそもスクラップブック的だからというのもあるんでしょうが、すごいですよね。

映画という媒体を通して毎作品いろいろな「体験」を提供しようとしてくれているタランティーノ。今回は、まあかなりトンチキではあるもののタランティーノなりの「日本文化」を味わわせてくれるその一環としてのジャパニメーションだったのでしょうか。海外だけでなく日本でも、公開当時いきなりあれを数分間見せられて驚きつつ「アニメもいいな」って思った人いっぱいいるはず。

と、そこまではいいねボタン押しまくりでしたが、ユマ・サーマンが沖縄へやって来てからは生暖かい表情で見守ることしかできませんでした。栗山“ゴーゴー”千明様が負けたので星1つです。オリオンTシャツだけは考証が正しいので星2つです。

この「密室の恐怖実験」からの音楽がめっちゃ好きです(星5つ)。「シェイプ・オブ・ウォーター」しかり、口笛をフィーチャーした曲に弱い模様。「デス・プルーフ」でも同じ曲が使われていたらしいけど覚えてないなあ。

本国だと「デス・プルーフ」のほうがB級C級なのかもしれませんが日本だと確実にこっちのほうがグラインドハウス向けでしょうね(笑)

キル・ビル Vol.2(2004)

前作の冒頭、「ビルを殺れ」の発端となった惨劇のプレイバックから始まるVol.2。約15分間のモノクロパートはユマ・サーマンがすごく綺麗に撮れています。(劇中でことあるごとに絶世の金髪美女扱いされてるユマ・サーマンですけど、個人的にはこの人あんまり美女ってイメージではなくてそこんとこ感情移入できない)

前作は主人公の殺しリストからオーレン石井への復讐劇をメインに描いており、肝心の「ビル」は登場せず。今作でようやく対峙するのですが、ビル役デビッド・キャラダインかっこいいですね〜! マフィアのドン的な、非常に深みのあるいい悪役でした。

舞台が(ようやく)日本を離れてくれたこと、これまでの敵とは違い主人公とビルの間には愛憎が渦巻いていたことなどで、今作の雰囲気は前作と一転、しっとり人間ドラマになってます。引き伸ばして引き伸ばして一気にパン!!っていうタランティーノ印は随所に盛り込まれつつ、アホみたいなシーンはかなり控えめ。最後の「a.k.a Mammy」がいいですね。

特典映像に入ってて驚いたのは、印象的な音楽を提供している「チンゴン」というバンドがロバート・ロドリゲス監督率いるものだったこと。

ロドリゲスさん、「グラインドハウス」の片割れの方ですねという知識しかなかったのだけどこんなマフィアの若頭みたいな雰囲気だったのか…。PRSがオモチャみたいに見える…。ていうかね、そう、ギターがお上手でいらっしゃるんですよ、ますます驚き。

タランティーノ作品を観ると必ず何かしら気になる音楽があって、探して聴いてしまいます。そういうDJ的センスもタランティーノ監督の特筆すべきところですね。

というわけで遅ればせながらの「キル・ビル」シリーズでした。でもこれはキャリアのなかでもだいぶ異色作だと思うので、先に観なくて結果オーライだったかも。

(2019年104・105本目)